第33話 夢、幻想に浸れ
ホテルの一室。
アーク一行が集合し、話をしていた。
「さて、こっからは4人だ。といってと、やる事は変わらないけどな」
「ルーラリアまで、約半月といったところですか」
「遠いな」
「予言者ってワープできなかったっけ?」
思い出したかのような問いに、シキが答える。
「無理だろう。ここに居るのは俺の独断だし、誓約もある」
「そっかぁ。残念だ。交渉の余地は?」
「100%無い。断言できる」
「……ま、仕方がないか」
無駄な議論を続け、時間だけが過ぎて行く。
結局、結論の出ないまま終わってしまった。
といっても、初めから答えは決まっている。本当に、意味があったのか。
数時間歩いた。
体力だけは無駄に多いせいか、どれぐらい歩いたのか曖昧になっている。
いまだに寒さは抜けない。
中世西洋の鎧を纏ったシグレに、薄着のシキ。
育った環境が違うとしても、ここまでの差があるのか。
「なぁ」
「ん?」
ふと、シキが口を開いた。
足を止め、柄に手を当てながら。
「あれも、お前の仲間か?」
「なわけ」
遠く、吹雪の間を潜り抜けた先に佇む化け物。数百メートルはある筈の距離から、その大きさが測り取れた。
それは、10メートルの巨大のゴーレム。
ただ、全身には黒い触手の様なモノが無数に蠢き、纏わりついていた。
黒い触手には無数の眼。
それが、いっぺんにこちらを見つめた。
「バカ言うな。あんなのに手を出すなら、俺1人でやってる」
「はは。確かに」
冗談を言いつつ、アークもナイフを構える。
「グォォォォォォォ!!!!」
ゴーレムの咆哮。
言の葉は通じないだろう。
紅瞳が2人を睨み、蠢く触手を向ける。
「!!」
刹那、触手は宿主の元を離れ、2人を過ぎ去った。
触手が向かったのは、町。
刹那に悟ったアークが叫ぶ。
「ハルリ!」
「解ってる!」
掛け声と同時に、ハルリとシグレは走り出した。
「さて、改めて殺すか」
「一応、聞いてあげよう。お前は誰だ?」
返事は無い。
もとより、言語を認識するだけの知能があるかも怪しい。
「グォォォォォォォ!!」
「ッ!」
2度目の咆哮。
同時に2方向から走り出した。
ゴーレムはどちらにも向かず、ただ拳を突き出す。
両手に纏わりついていた触手は、
「はぁ!?」
鉱石の腕を千切り、リーチを伸ばした。
予想外の事に、2人とも間一髪で刃を滑り込ませる。
襲いかかる触手は刃に絡みつき、瞳で喰らい尽くす。
「この!離せよ!」
「ッ、デカブツが!『鍵鎖』!」
武器を離したアーク。
刹那に魔術を発動させる。
無数の鎖が武器ごと縛り上げた。
「だぁ!」
動きが鈍くなった刹那に、シキは思いっきり巨大な胴を蹴り飛ばした。
空中でバックステップをし、間合いを図る。
(なんだ……この違和感)
思考を巡らせるが、答えには至らない。
寒さが走る。
──拙いな。奴が、動き出したか
アルグリアはアークには伝えず、事実を整理する。
それが、彼にとって最高であり、最悪である結果である事に気づくまで、数秒も掛からなかった。
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