第17話 未来へと進む今 (下)


「どうして、復活してるのかな?」


怒りが沸々と、彼女の中で蠢いていた。

一触即発の危機。


「知るか。お前に教える義理はない」


手に構えるは、凶々しく魔力の蠢く両手剣。

間合いは数メートル。


「へぇ、言いたくないんだぁ」


「……」


アルグリアと呼ばれたは、ニィと笑い、チラッとシグレの方を見た。


(真紅の門を開かせるには、な)


「と言うか、何となく予想はついているのでは?」


「……まあね」


肩をすくめ、地面を蹴り飛ばす。

甲高い金属音が鳴り響き、力を押し付け合っていた。

ボコっと地面が抉れ、2人は間合いを取り直す。

アルグリアは戦闘中だと言うのに、両手をぱっと広げて、空を見上げていた。


「あぁ、あぁ、良いぞ。数100年のブランクを感じさせないその力。流石は不老と言ったところ……か」


言い終える前に、彼女の手元から飛び出たナイフが、アルグリアを襲う。

だが、ナイフは目標に届かず、虚しく地に落ちた。


「無駄だと、数100年前言ったはずだが?記憶力落ちたのか?」


「かもね!」


即座に間合いを消し飛ばしたハルリが剣を振るう。

バックステップで剣の間合いを外し、切先がアルグリアの髪に触れた。


「──


ただ、『無音』は再現されることない。

殺意に塗れた、ブラックホールよりもドス黒い瞳は謳う。


「!」


踏みとどまったハルリに、閃光の拳が突き刺さった。

吹き飛ばされ、村外の木に激突する。


「ッ!」


「油断すんなよぉ!」


嘲笑いながら、剣を虚空へ放り投げた。


「……なんだ?」


間合いを詰めようとした彼だったが、小さな違和感に気づく。

左手の小指が、制御できない。

自身の意思とは関係なく動いていた。


「……!?」


瞬く間に小さな違和感は、左腕を飲み込み、制御ができなくなる。


「……潮時、か」


なんとなく予想していたのか、彼はその場に立ち止まり、目を瞑って大きく息を吸った。


「……アルグリア!」


戻ってきたハルリは切先を彼に向けて、彼が直面している違和感に気づく。


「決着は、今度つけよう。今は……まぁ、しょうがない」


痺れは左半身にまで至った。

自我を持った左手は、行動を起こさせないように、右手を掴んでいる。


「じゃあな」


笑いながら、白昼へと身を浸していく。

次に目を開ければ、辺りを見渡す少年がそこにいた。

殺気を剥き出しにしない辺り、


「アークさん!」


アルグリアは、彼の内側に戻ったのだろう。

ただ、死した訳ではない。

ただ、戻っただけ。

いずれ、彼はまた現れる。


「……なにが、起こっていたんだ?」


アークにとって、彼が表に出ていた間の記憶は存在しない。

彼からしたら、気絶した間に大亀が真っ二つに切り裂かれ、ハルリまで負傷していた。


──けははは!!


頭痛が、彼を嘲笑う。


──そいつに伝えろ!オレの意志を!


言葉にして、誰かに伝える。


──因果は、終わっていない。

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