カテロリアへ

あれからちょっとした話をしたり、この世界で初の食事をしたり(そこそこの大きさのパン)して、私たちはその場で野宿することになった。


――再び目を覚ますと私は元の世界の私の部屋に居た――


なんてことは無く、朝になった廃屋の中で目が覚めた。


既にみんな起きていたようで、軽く荷物の整理をしているみたいだった。


私もその作業を手伝った後、朝食(昨日と同じパン)を食べて、ついに私たちはこの場所から旅立つことになった。


「ところでこれからどこに行くんですか?」


「あれ?言ってなかったっけ、私たちが向かうのはこの大陸最大の都、カテロリアよ」


「カテロリア……?」


「国の名前兼王都の名前よ。 この大陸の中心にあってかなり発展している都市になるわね」


「人口も多くて大陸の中心にあることから交易とかも盛んに行われているんですよ」


「へえ…… そのカテロリアにはどのくらいで着くんですか?」


「んーまあ大体半日もあれば着くんじゃないかしら」


「うう……私半日も歩けるかな……」


「その点は問題ないわよ、だって向かい方は徒歩じゃないもの」


フェルミはそう言うと身体全体が光り始め、形が変わっていき、昨日の夜に見たあの大きな鳥の姿に変化した。


「さあ乗って」と鳥からフェルミの声で聞こえてくる。


昨日一度は見ていたものの、明るい場所で見ると格段と迫力がある。


それにこの鳥はどういう種類の鳥なんだろう?


ハト……いや、絶対に違う、タカ……いやまずタカの見た目を覚えていない……


「ほら有希ちゃんも早く!」


その声にはっとして前を見てみると既に二人は鳥(フェルミ)の上に乗っていて、マナが手を差し伸べていた。


変なところを踏まないように気をつけながら空いてる場所に座る。


いつもよりも視点が高くてなんだか楽しいなんてことを考えていると、「行くわよ」と言うフェルミの声と共に羽が動き出した。


みるみるうちに宙に浮いていき、一分もかからないうちにさっきまでいたあの建物が豆粒ほどに見えるところまで来ていた。


マナは初めて飛行機に乗った子供みたいに元気よくはしゃいでいる。


有希自身も怖さはあったもののまだ楽しさの方が上回っていた。


そう、まだこの時は――


「振り落とされないように何かに捕まっててね!」


フェルミのその声を聞いてからたった数秒後、さっきまで感じていた楽しさが一変、恐怖のどん底へと変わっていった――


有希が予想していたよりも5〜6倍は早いほぼジェットコースターみたいな速度で飛んでいく。


正直あと少し手で鳥の体を掴むのが遅れていたら今頃あの森の木にグサグサ刺されていただろう――


「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」

「ひゃっはーーーーーーー!!!!」


悲鳴を上げながら乗っている私とは反対にマナはこの状況をものすごく楽しんでいるようだった。


恐る恐るちょっと下を見てみるとものすごい速さで風景が変化している。


まだ数分しか経っていないのにもうあの森を抜けて今は草原の真上を飛行中のようだった。


およそ一時間後、有希は気力が底を尽き、マナに支えられながらこの世界二度目の気絶をした――





飛び始めてからそろそろ半日が経とうとし、かなり早めに気絶してしまった有希をマナは抱えながら気持ちのいい風に吹かれて空中からの光景に心躍らせていた。


「マナさん、そろそろカテロリアが見えてきますよ! ……ほらっ!」


イキシアの元気な声と共に地平線から様々な建物が見え始める。


「おお〜!あれがカテロリアか〜! 一体どんな街なのかな〜」


ルンルン気分で肩を左右に揺らしていると、街はもう目と鼻の先まで来ていた。


そして外と街を区切っている壁を越えると、その先は奥の奥まで続く大きな都市だった。


上からでも聞こえる程に賑わっていて、人が密集しているのもよく見える。


「えっ!? なにあれ列車!? あんなのもあるの!?」


「はい! カテロリアは広いですから。 ああやって各地に鉄道が敷かれていて、どこにでも移動できるようになっているんですよ!」


笑顔で説明するイキシアを見てマナはイキシアのこの街に対する愛情のようなものを感じた。


それほどまでに今のイキシアは嬉しそうだった。


辺りを見渡してみると、同じように空を飛んでいる同じ種類の鳥と、その鳥に乗っている人達を見つけた。


マナの考えていることがわかってるかのようにイキシアは再び説明をし始めた。


「この鳥の正式名称はライドグリフォンって言って、速いのでああやって馬車の代わりとして使う行商人とかもいるんですよ。 ただその代わりにあまり多くの荷物は運べなかったり操作が難しかったり、懐かせるのも一苦労だってことで実際に使ってる人は少ないんですが……」


「へえ……。 その点こっちはフェルミさんが勝手に動くから楽できてるんだな〜」


「……なんだかその言い方ちょっとバカにしていない……?」


「い、いえいえ!そんなこと無いです無いです!」


今まで黙っていたから忘れてたけどそういえばこの状態でも喋れるんだった――!


「そう…… それより、そろそろ降りるから準備しておきなさいね」


それからすぐに近くにあるこの辺りで一番大きな建物の屋上にある飛行場のような場所にゆっくり入っていく。


他に入ってくるのもライドグリフォンばかりだからおそらくライドグリフォン、またはそういう飛行動物用の駐車場?みたいなものなんだろう。


着陸後、マナは有希を背に抱えながら降りるとフェルミは再び元の人の姿に戻った。


「今からある人に会いに行くわ。着いてきて」


「ある人? ある人って誰なんです?」


「ああ……それはね。 あなた達を連れてこさせた張本人よ」

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