バッシングはお下げいたします。

バッシングはお下げいたします。

　ファミレスは、ピークタイムを過ぎ、いじるスマホの画面には、ラテアートの写真。

　あーあー、イケメンバリスタのいる、おっしゃれなカフェで働きてー。

　そう思った。

　自分の着ている制服を見る。

　可愛くない。

　はーあー。

　来客のチャイムが鳴る。

　スマホを制服のポケットに入れる。

　人間の価値は、第一印象で決まる。

「いらっしゃいませ」

　第一印象とは、見た目である。

　明るい声と、そして、明るい笑顔。

　冴えねー親父だな。

　一人か、匂いがまじ、死んでるんですけど、

　その汚えツラと服洗って出直してこいよ。

　心の中でそう思っていても、

「お席の方ご案内いたします」

「あっあの、」

「何でしょうか？」

「二名です」

　聞いてねーよ、オヤジがピースしてんじゃねーよ、気持ち悪りい、てめえは負けてんだよ、生え際Vサイン。そもそも、連れのいるツラじゃねー、後から来るやつは、どんなツラしてやがんのか。こりゃ楽しみで、見ものだね。

「二名様ですね、かしこまりました、それでは、こちらのお席にどうぞ。ご注文お決まりでしたら、そちらのボタンでお呼びくださいませ」

「注文はもう、決まっているんです」

「はい？」

「お子様ランチと、ハンバーグセットをお願いします」

「お待たせいたしました、ご注文の、お子様ランチと、ハンバーグセットでございます。こちら鉄板の方、お熱くなっていますので、お気をつけください。お子様ランチには、ドリンクバーがついておりますので。それではごゆっくりどうぞ」

　あれ、子供いねーじゃん。よく見りゃ、指輪してねーし。

　会計時に、その親父はスマホを出してきた。

　電子決済のツラじゃねー。

「あっあの、これ、使えますか？」

　クーポン？

「少々お待ちください」

　バーコードを読み込む。

　決済音。

「それではこちら、レシートでございます。

「ありがとうございます」

「またのお越しお待ちしております」

　ちらっと見えたレシート、あれなんか変だなと思った。

　薄い後頭部を見送った後、

　レシートを再印字してみた。

　お会計は、698円。

　あーね、せっこ。

　ハンバーグセット799円

　お子様ランチ399円

　クーポン-500円

　このクーポン、1000円以上でしか、使えないやつだ。

　はーやだやだ。

　食器を下げに行くときに、

　私は気づいた。

　お子様ランチがそのまま残っている。

　いや、違う。

　よく見ると、お子様ランチのプレートには、

　ハンバーグが一切れ乗っていて、にんじんと、

　チキンライスの旗がなくなっていた。