第3話「お腹を消毒」

 ん? ここは、またレコか。


 俺は見慣れた天井を目にすると、ごくごく普通の感想を抱く。


 手には手錠がはめられ、ベッドに寝かされている状況。どうやら監禁ってやつをされているようだ。


 冷静に観察していると、


「あれ、みぃ君。もう起きた?」


 すごく聞きなれた声が頭上から聞えてくる。


「その声は、レコか?」


「酷いよ! みぃ君!! あの女から手作りのチョコを貰ってたでしょ!!」


 本日はバレンタインデー。確かに、俺は只野友子さんから手作りチョコを貰っていたが。


「いや、ゼミの全員に配っていただろ。というかお前も貰っただろうが」


「そうだけど、それがみぃ君のお腹に入るのが嫌なの! あの女のものなんて!! 大丈夫今から、みぃ君の体を消毒してあげるから」


 レコの手にはエタノールのボトル。

 確実にそんなものを飲まされたら死んでしまう。


「いや、ちょっと待とう。俺はそのチョコは食べていない。誰にも見られないとこに捨てたぞ。そもそも手作りのチョコは食中毒の危険があるからな。特に今回の只野さんのチョコは生チョコだっただろ。2023年の統計では、生チョコで発生するぶどう球菌での食中毒は19件、249人が倒れている」


「え? じゃあ、食べてない?」


 俺は頷く。


「わたしのはいらない?」


「レコのチョコで食中毒になるなら本望だ」


「ありがとう!!」


 輝くような笑顔を見せながら、レコは手錠を外した。

 その瞬間、俺はレコを押し倒す。


「毎回毎回、監禁しやがって。今度は俺の番だ」


 俺はレコの左手の薬指に――。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ヤンデレ彼女に監禁されたから冷静に諭してみた件 タカナシ @takanashi30

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画