パンク系女子大生 姉川桜

女の人と移動した先は鳥貴族。

安くて美味しい焼き鳥屋。

勿論大好きだ。


「改めて自己紹介しておくな。

あたしの名前は姉川桜。20歳。

大学生だ」


「あ、どうも。

俺は武田康二っていいます。

15歳です」


「15ってことは高1か?

若いなあ」


「そっすね。

日野くんと同い年です」


「日野?だれそれ?

俳優?」


「あ、いえ、なんでもないです」


日野くん。

覚えられてなかった。

イケメン陽キャが嫌いなのだろうか。

そんな人いる?


「さっきの男は大学の飲み会でちょっとだけ話してたやつでさ。音楽の趣味が合ったから友達だと思ってたんだけど、向こうは狙ってたみたいなんだよな」


「あー」


「あたしって隙があるように見えるみたいでさ。

この見た目が原因だってのは分かってるんだけど、好きだから変えたくないんだよ」


「そーなんですねー」


もしゃもしゃと焼き鳥を貪る。

うめー。


「そこで相談なんだけどさっ」


「え?」


この流れ、知ってるぞ!


「彼氏の振りしてくれないか?」


「いやいやいや」


超デジャブ。

しかし今回は前の2件とは全然話が違う。

同じ学校で探せよ。


「流石に年下過ぎません?

説得力ないですよ。

学校も違うし」


「バイトで会ったって言えばいいだけだよ。

それにあたしが年下好きなのは本当だし」


「……いやあの、犯罪」


「ヤったらだろ?

そんなつもりはないから安心しろよ」


なんてこった。

これが女子大生か。

恥じらうポイントが変わるのだろうか?


「……」


いや、照れてるな。

年下の男の前で虚勢を張ってるのか。

そう考えるとちょいかわいい。


「それにさ、振りっていっても相手は選びたいというか……」


髪をいじりながらモジモジしている。

なんだなんだ。

流れが変わったぞ。


「あたし音楽が好きでさ、それでこういう格好してるんだけど……、お、男の人苦手で……、綺麗だねって声かけてくるくせに断ったらブスって言ってくるし、怒ったらつかみかかってくるし、力も強いし……」


音楽好きの純粋な女の子が男性不信になってしまっている。

ナンパ野郎死すべしだな。


「地元では弟が守ってくれてたんだけど、こっちでは信用できる人もいないし」


しかも一人暮らしか。

それは不安だろう。

でもなあ。


「信用って、俺たちほぼ初対面ですよ?」


「でも2回も守ってくれたし、見返り求めないし、強いけど荒っぽくないし、可愛い系の年下好きだし……よ、よく見たらかっこいいかなあって」


めっちゃ照れながら褒めてくれた。

かっわ。


「ありがとうございます。

姉川さんもかわいいですよ」


「かわいい!?

そんなことねーし!

かっこいいだろ!?」


「いや、かわいいっすね」


パンク系の口が悪いお姉さんは、守ってあげたい系女子だった。

5つも歳上なのに。

これは力になってあげなきゃな。

かっこいいって言われたのも嬉しいし。

三股になっちゃうけど、まあ全部偽装だし。

ロケーションも中高大で綺麗に別れてるし、問題ないでしょ。


「そういうことなら大丈夫ですよ。

でも俺結構忙しいから呼ばれても行けないこと多いのでよろしくお願いします」


「マジで助かる!

ありがとな!

でも今夏休みだろ?忙しいって部活とか?」


「格闘技やってるんです。

この間も試合出たんすよ」


「えっ、すごいじゃん!

動画とかある?見せて見せて!」


この後、1時間ほど楽しく過ごして解散した。

思いのほか可愛らしい人だったな。

結構抜けてるし。

でも告白まがいのテンションだったのはびっくりしたなあ。勘違いしそうだった。

あくまで俺は偽装彼氏。

気をつけなきゃな。







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