愛しのあなたに俺の声は届いていますか?

オリスケ

これからもずっと…

俺には妻がいる。今は亡き妻だけれど、これから先もずっと俺の妻であることに変わりはない。愛しているからだ。さよならなんか言っていないし。

妻は事故で亡くなった。それから葬式をして、

色々環境を整えて気持ちの整理をしてやっと今冷静でいることが出来ている。

お義母さんお義父さんに京華と一生そばにいる許可を貰ったのに、俺は守りきれなかった。

仕事でいなかったからだ。俺がいない時に買い物に行って俺を喜ばせようとして事故にあったのだ。完全に俺のせいである。

俺と出会っていなければこんなことにはなっていなかった。

そんなことを思っても仕方がない。

仏壇はいつも俺の家にある。大丈夫。

ずっと京華は俺の家にいる。もう安心だ。

姿は見えないけどきっと俺の隣にいつも居てくれている。例え側にいなくても、俺と京華は心から繋がれている気がするからだ。だからいつまでも悲しんでたらいけない。京華だって俺がずっと悲しんでいるのを見たくないと思う。京華のためにも俺は死を受け入れ、幸せになるしかないんだ。

ある日の休日。俺は高校時代の友達と久しぶりに会い、飲むことになった。そいつは入学してからすぐに仲良くなったやつだ。仕事上の関係でなかなか会うことができないが、今でもたまに会って飲むようにしている。

「そういえば稲神、奥さんとはどうなの?」

友達が唐突に聞いてきた。そういえばこいつに亡くなったこと言ってなかったっけ…

「この前の事故でね…」

「あ…そうなんだ…悪い…嫌なこと聞いてしまった…」

「気にしなくて大丈夫。いなくなってもずっと一緒だから。」

「かっこいいこと言うねぇ?」

「普通だろ?w」

「まぁまぁ、無理するなよ〜」

「ありがとう。」

こいつは高校時代とあまり変わっていない。ノリが良くて、気があって、頭がおかしくてぶっ飛んでるけちゃんと筋が通っている。

「そういうお前は彼女できたのかよ?」

少し疑問に思ったので聞いてみた。

「いるわけねぇだろ〜俺なんかに〜」

笑いながらそいつは言った

「まだいないのかよ、結婚願望とかないの?」

「ないね。俺は2次元派なんだ。」

そこそこのドヤ顔で言えるセリフじゃねぇだろ。

「変わんねぇな…ほんと…w」

人は変わる。変わってしまう。それが笑いのネタになったりする場合が多い。逆に変わっていないと安心するものだが、不安になる場合もある。それも引っくるめて人は面白いんだ。

ただ…良くないほうに変わってしまうこともある。犯罪者になってしまったり、はたまた亡くなってしまったり…妻の死で俺はある事に気づいた。人間はきっかけがあればすぐに変わってしまうということだ。妻が亡くなったとわかったのも、たった一本の電話だった。その数秒の間で俺の感情は最悪の悲しみに暮れた。それでも俺は今でも生きれている。俺が変われたからだ。例えそれが良くなかった結果になったとしても、そこからまた良い方向へ進んで行けるようになればいいんだ。そうだよね…京華。

「なんで泣きそうなんだ…?」

友達が少し慌てたような顔で言ってきた。

「いやぁ…帰りたいなって思って☺️」

「は?w嘘やろ?w」

「うん…wちょっと思い出しちゃっただけよ。」

「新しく彼女も作らなさそうだな。」

「当たり前だ。俺は一生、妻しか愛さん。」

「お前そう言って浮気すんなよ?w」

「しねぇよw」

そうやってくだらない会話をして、笑い合っている。今こうしていられるのも京華のおかげだ。

京華のおかけで変われた。当たり前のような大切なものを思い出させてくれたからだ。1つでも失ったらいけない。死ぬまで守りきろう。もう二度とあの惨めな俺には戻らない。そう決意した。この思いが、いつか京華に届いてほしい。1番愛している京華に、俺の声が聞こえているかわからないけど、どうしても伝えたい。

「京華。ありがとう。ずっと大好きだよ。」

飲み終わって友達と別れた後、1人呟いた。

「…私も大好き。」

「…?」

声が聞こえた気がした。気のせいかもしれないが、京華が俺に…大好きって…

「…聞こえてたみたいだね。よかった…」

安心した俺は1人夜の道を歩いて帰った。

いや…違うな。京華とだから。2人だ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

愛しのあなたに俺の声は届いていますか? オリスケ @Orisuke666

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ