第2話 : 始業 [2]

「学校に来たくなかったんだよね?」彼女は初対面でこういう質問をするのが慎重なだけだ。 本心ではないのに、訳もなく皮肉な言い方で文句を言っているように聞こえるのではないかと心配だ。


「まあ、そういうわけだ。」彼はこういちいち答えるのも面倒では、やはり淡々とした口調で適当にごまかす。 詳しく説明する必要さえない。


「それでこんなに時間が早く流れることを望んでいるのか。」弘の内部事情をきちんと知らないが、ある程度理解がなる。 栞奈も朝寝坊を寝たりした冬休みが懐かしいのは同じだ。 冬休みなら、 今頃夢の国にあるはずだけど、 いざ汗だらだら流れながら学校に来て不便な席に座っていなければならない立場だ。


「まあ…そうだね。」彼は適当にごまかしても彼女が理解しているという。 もしかしたら新入生という同じ状況だからそうかもしれない。


「本を読むのが好き?」彼女は小説を取り出して彼に見せる。


「一度も読んだことがないから分からない。」彼はやはり無関心な口調で答える。


「それなら一度読んでみるのも悪くないと思う。 プレゼントだからもらって。」このように勧誘し続ければ勝てないふりをしながら受け入れると思う。


「特に興味がない。」 彼はただ面倒くさそうに顔をしかめ,断る。


「今時間を過ごすものを探しているのではないか?」小説を読む動機が必要な弘だから、まさに的を射る質問に絶対に違うと答えることはできないだろう。


「そうだね。」実際に彼女がそのようにきっぱり言うと何か反論したいが、どうしても認めざるを得ない。


「一度読み始めると時間がすぐ行くと思うんだけど。一応信じてみて!」


「分かった。特に深く関心があるわけでもないから、実際に面白くなければすぐに投げ捨てればいいんだ。」彼は直ちに退屈な状況で当然することもないので受け入れることにする。


「よし!よし! 読み終えたら、本についての感想を話してほしい!」


「全部読むとは言ってない。 ただ一度試してみると言っただけだ。」強制的にしなければならないことでもないのに責任感を感じる必要がない。


「あ、はい。そういう言葉は読んでから言ったほうがよさそうですね!」


その会話が終わって間もなく、また別の授業の始まりを知らせる鐘が鳴る。


弘は一応その小説を机の引き出しに入れる。 授業には特に関心がなくてまぶただけ重くなる。 机に頭を当てると目がくるっと閉じる。


まさにその瞬間に正面から大きな声が彼の名を呼ぶ。


「弘!」先生が片手にチョークを持ったまま彼を眺めている。


「はい!」その叫びに弘が大きな声で答えて席から立ち上がるが、あっけに取られる。 やっと目を開けているが、依然として眠りに酔った状態だ。


「始業の日からそんなに居眠りばかりしていればいいのか? 席に座って授業に集中するように!」彼は断固とした声で弘に注意を与える。


彼は首を回して授業を続ける。


「はい。」 彼は眠い目で吐き捨てるように答えてからは再び席に座る。 恥ずかしくても授業時間に笑い者になってあまり気分がよくない。 眠りでも低めるためには、何かしなければならないが、実際に授業を聞きたくはない。 まさにその瞬間に彼女が渡した小説が頭の中を通り過ぎている。


「あ… そうだ! どうせ寝ることもできないから一度読んでみないと。」 教科書に重なって小説を隠せば先生が気づかないだろう。 その小説にだんだんはまるほど先生の声も小さくなる。 本棚をめくる音しか聞こえない。


時間が経って授業が終わって鐘の音が大きく鳴ると、生徒たちが一斉に席を立つ。


弘もやはりその騒ぎに気がついて頭をさっと上げる。


「どう?本当にタイムマシンみたいでしょ?」栞奈がこっそり弘に近づく。 直接経験したのだから、どうしても納得せずにはいられないだろう」断言する。


「そうだね。本当にそうだね。」彼は時計をちらりと見た。


「最後まで見ても大丈夫?」彼は最初の部分を読んだだけなのに、どんな内容が続くのか気になって我慢できない。


「そうだ!そうなると思ったよ! 代わりに約束を守らなければならない!」彼女は彼に拍手をしながら叫ぶ。


「何の約束?」彼はどういう意味なのか分からず首をかしげる。


「さっき言った約束。」彼女は有意義な表情をする。


「あ、思い出した。 この本を読んで感想を言ってほしいということ?」


「そう!忘れたらダメだと言った! 本をあげる大家だよ!」


「ああ…そうだ。」


短い休み時間が終わると、他の先生が入ってきて新しい授業が始まる。


そのように短い休み時間が終わると、他の先生が教室に入ってきて授業が始まる。 また、教科書で小説を隠して夢中になる。


昼休みを知らせる鐘が鳴ってから気がつく。 もう半分くらい読んだ。 どんな内容が続くか知りたくてたまらない。 早く昼食を解決し、残りを読み終えることにする。


一方、祐希は桃香と朝交わした会話が気になって授業に集中できなかった。 ランチ弁当を取り出すと、紗耶香が身近に近づいてくる。 彼は気配を感じて首をかしげる。


「ヤッホ~」彼女はにこっと笑いながら彼に自分の弁当を取り出して見せてくれる。


「どうしたの?」彼は眉をひそめて尋ねる。


「ただ一人で昼食を食べそうなので。 とても可哀想で一緒に食べてあげようと思ったんだけど、やっぱり私の予想は外れることがないね。」 彼女は彼が片手に持っている弁当を見てにやりと笑う。 彼が何も言わなくても明らかだ。


「ああ、これは。」彼は言い訳を思いつこうと頭を転がしているが、何も思い浮かばない。


「あ! 言い訳はいらない。 その事実を認めながら一人で苦しいだけだよ。」 彼女も彼がそのように口をもぐもぐさせることが何を意味するのか気づく。


「昼休みは短い! こんなに無駄にする時間はないんだよ! 早く行こう。」彼女は彼がためらっているのを見つけ,彼の手首をつかんで強く引き寄せる。


「ああ,わかった。」彼女が催促すると,彼は勝てないふりをして席を立つ。


彼は彼女の手につかまったまま学校の芝生に到着する。


紗耶香と二人で昼食を食べるのだと思ったが、予期せぬ客が待っている。 桃海だ。彼女もやはり彼と目が合う。 二人ともびっくりして、決してそんなことがないかのように平気なふりをする。 心が通じ合ったかのように同じように行動する。


彼らは何も言わずに彼女を見つめる。 暗黙のうちに紗耶香に釈明を求めるのだ。 紗耶香もやはりこれがどういう意味なのか気づく。 このように追及するだろうと予想した。 結局、意図したことだから慌てる必要はない。 疑いを晴らすためには落ち着いていなければならない。


「あ!こんな素晴らしい偶然が! あなたもここで昼食を食べようとしているの?」紗耶香は中途半端な雰囲気を少しでも和らげようとびっくりしたふりをする。 全く通用しない演技だと知っているが、だからといって素直に本音を告白するわけにはいかない。 このようなぎこちない演技で不便な状況を笑い飛ばせるなら、ずっと硬直したままでいるよりははるかに良い。


祐希は呆然としてボーッとした表情をしているし、桃香は紗耶香の返事があきれるだけだ。


「今、これは何? 何を考えているの?」桃香が我慢できないかのようにすぐ問い詰める。


「何の考えというのはどういうこと? ただ偶然会っただけなのに。」 紗耶香はやはり何も知らないかのように平然とした表情をしながら、とぼけた口調で一貫するだけだ。


「偶然? そんな変な演技はやめた方がいいと思うけど? ばかのように遊ぶつもりはないんだ。 一緒に昼食を食べようと私をここに呼んだのがまさにあなたじゃない? 私にはここで待てという言葉だけ言って、急に消えて心配したけど、結局この子をここに呼び出そうとしたの? こんなに粗雑な秀作で私を騙そうとするの?」 何か下心があるのは明らかなのに、いざ紗耶香が知らないふりばかりしているので、イライラせざるを得ない。


「あ!本当にただ部員同士で一緒に昼食を食べようということだ。 どうしてそんなに執拗に掘り下げて雰囲気を険悪にするの?」 紗耶香はざっと危機を乗り越えようとしている。 顔をしかめるが、ずうずうしい声には相変わらず変わりがない。


「え?今この状況で私にその言葉を信じろと言うの? 私をバカだと思う?」 明らかな嘘は桃香の疑いを高めるだけだ。


「あ! こんな些細なことは知らないふりをすればいいよ。」紗耶香はずっと茶目っ気が混じった声で笑いながらとぼける。


「同じ質問を二度させないで。 下心って何?」 桃香は紗耶香が祐希をここに連れてきた理由を大まかに推測しようとする。 数週間前に起こった小さな争いを再び解決する場を設けるためだと彼女自身は確信している。 余計な妄想かもしれないが、最も有力な理由だ。


「あ!とりあえず君から席に座って。 そこに中途半端に立ってないで!」紗耶香は桃香がしつこく問い詰めることに特に言うことがなく、ただ祐希の腕をつかんで強く引き寄せる。 彼女はただ彼らがけんかをうまく解決するように導くだけだ。 彼女にできることはただこういうことだけだ。


「うん。」 祐希は紗耶香の手に引かれて弁当を下ろして席に座る。 今からでも決心さえすればこの場を抜け出すことができるが、やはりその葛藤をまともに解消することを望んでいるのでどうしても蹴って立ち上がることができない。 勝てないふりをしながらこの状況を受け入れるだけだ。


桃香もやはりこの場が負担ではあるが、やはり祐希と仲直りをしたい気持ちがある。 紗耶香が気を使って作ってくれた良い機会だという事実にはやはり変わりがない。 慌てて攻撃的な反応が出たが、やはりこのように助けてくれるのが内心ありがたいだけだ。


「時間がない、昼休みは本当に短い。」 桃香は勝てないふりをしながらこの状況を受け入れる。


「それで? 今日始業して初日なんだけど、どう? 実感がわいてくる?」紗耶香は彼らがどんな表情をしているのかちらっと見ながら尋ねる。 素直に応じるとは思えないが、自分でなければいざこの状況で対話を主導する人がいないとよく知っている。

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