第6話 言葉




 悩みに悩み抜いた結果、白龍は道士に言った。

 仙人になれば、秘密の世界に連れて行ってやる。


「本当ですか?」

「ああ」

「わかりました。私、修行に励んで、早く仙人になります」

「ああ」

「うわー。楽しみです」

「ああ」


 キラキラキラキラ。

 満天の星空、どしどし弧を描きながら落ちる流星、一直線に落下する火球、波を描く大きな大きな彩り豊かなオーロラさえ発生する目を向けられた白龍は、少し慄いてしまった。


 果たしてこの道士の期待にえる秘密の世界であるのか。

 自信がなくなってしまったのだ。

 けれど、白龍に二言はない。

 楽しみにしておけ。

 白龍は厳かに言った。






「流石は白龍ですね。今一つ修行に身が入っていなかったあの子は今や、やる気満々で励んでいます」

「道士の世話も我の責務ゆえ当然のことだ」


 道士の指導係である仙人と共に、白龍は瞑想に励む道士を見守っていた。

 寝転がる姿勢はそのままだが、眠ってはおらず確かに瞑想していたのだ。

 このまま励み続ければ近い内に仙人になれるだろう。

 微笑を浮かべる白龍が己も菓子作りに励まないとなと考えていると、道士の指導係である仙人に言われたのだ。


「ところで、秘密の世界とは何ですか?」

「なに」


 白龍は不遜に笑ってみせながら言った。


「あの道士のやる気を引き出す言の葉だ」











(2024.1.31)


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道士と白龍と秘密の世界 藤泉都理 @fujitori

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