インターミッションー彼女に一目惚れー
永井成海の実姉・永井風花さんに出会ったのは、中学2年生の秋だった。
「成海、お姉さんいるんだ」
「いるよ」
合唱コンクールに向けての練習を終えた帰り道だったと思う。
どう言ったきっかけで家族の話になったのかは忘れてしまったけれど、彼の口から姉の話題が出てきたのだ。
「どんな人なの?」
そう聞いた僕に、成海は眉間にシワを寄せた。
顔がいいから何をさせても絵になる。
「…何で聞きたがるのかよくわからないな」
成海は訳がわからないと言った様子で呟くと息を吐いた。
「そりゃ、聞きたくなるだろ」
お前は女性と見間違えるくらいの美人なんだから気になるのも当然なんだよ…と言おうとしたけれど、やめた。
ヘタに口に出して本人の気を悪くしてしまったら面倒くさい。
「家にくる?」
成海が言った。
「えっ、いいの?」
そう聞いた僕に、
「百聞は一見に如かず」
と、成海は答えた。
今振り返ると質問に答えるのが面倒だったんだろうなと言う感じだけれど、僕はありがたく彼からの誘いを受け取ることにした。
* * *
土曜日、僕は永井家を訪ねた。
チャイムを鳴らすと、
「はーい」
ドアの向こうから声が聞こえた。
ガチャッと玄関のドアが開いたかと思ったら、
「あら」
そこから顔を出したのは、黒髪ボブの美しい女性ーー高校2年生の風花さんだった。
「あっ…」
「もしかして、弟…成海の友達かしら?」
首を傾げて聞いてきた風花さんに、
「そ、そうです…あの、こんにちは…」
と、僕はあいさつをした。
「こんにちは、すぐに成海を呼んでくるから待ってて」
風花さんはニコリと僕に向かって笑いかけると、僕の前から立ち去った。
その後ろ姿を見送ると、
「ーーめちゃくちゃ美人じゃん…」
と、僕は呟いた。
弟も美人ならば姉も美人だった。
心臓がドキドキ…と早鐘を打っている。
両手を頬に当てると…それはそれは熱を持っており、冷えた指先が温まるのを感じた。
どうなっているんだ、永井家のDNAは!?
姉も弟も美人って、どう言うことなんだ!?
ぜひとも親の顔が見てみたい…と言う願いは後にかなうのだが、それはまた別の話である。
「碧流?」
声をかけられたので視線を向けると、
「何だ、成海か…」
成海がそこに立っていたのでガッカリしてしまった。
「嫌な態度だな、おい」
そんな僕の反応に成海はムッとしたようだった…けれど、美人は何をさせてもどんな顔をさせても美人だから不思議である。
「とりあえず、家に入れ。
今、風花がお茶の用意をしているから」
「お、おう…お邪魔します…」
成海に言われて、僕は永井家に足を踏み入れた。
ちょっと待て、弟のくせに自分の姉のことを“風花”って呼び捨てにしていなかったか?
僕は1人っ子で兄弟姉妹がいないからわからないのだが、そう言うものなのだろうか?
そう言った経緯から、僕は風花さんに一目惚れをしたのだった。
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