第3話
ピンクや白い花を咲かせているコスモス
赤紫色の萩
白いススキ野原
赤く色づいている山々
どこか懐かしさを思い起こさせる風景だと思いながら、私達は付近に住んでいる人を捜していました。
今の私達がいる場所は車で片道何時間も掛かりそうな秘境なのでしょうか?
駅から歩いて一時間くらい経っているのですが、民家はおろか歩いている人の姿すら目にしないのです。
「もしかしたら・・・私達は店や家がある場所とは反対の方を歩いていたのかも知れないわね」
「今から駅まで引き返して今度は右に向かって歩くって訳!?」
「もし誰も見かけなかったらどうするの?!」
「こんな訳の分からない場所(ところ)で野宿なんて冗談じゃないわ!」
堀川さんの言葉を藤堂さんと竹本さんが真っ向から否定します。
私とて堀川さんが言うように一度駅まで引き返し右に進んだら人に会えるかも知れないし、或いはこのまま進んで行ったら誰かに会えるのかも知れないという二つのパターンを考えていました。
こういう場合はどっちを選べばいいのでしょうか?
お~い・・・
そんな私達の耳に男の声が聞こえてきました。
お~い・・・
「お嬢さん達、こんな所で何してんだ?」
目の前に現れたのは五十代半ばくらいの男性でした。
「実は私達──・・・」
自分達が乗っていた電車から何時の間にか乗客が消えていた事
全く知らない駅に着いた事
家に電話しようとしているのに繋がらない事
電話を使わせて貰いたいので人を捜している事
堀川さんが、おじさんに自分達が置かれている状況と事情を話していきます。
「お嬢さん達には気の毒な話で申し訳ないが、ここ・・・きさらぎ村には電話の回線が通っていないから村の住人は皆電話なんてものを持っておらん」
村の方針なのかどうか分かりませんが、このご時世に電話が使えないなんて夢にも思っていなかった私達は言葉が出ませんでした。
「その代わりと言っては何だが、もうすぐしたら外が暗くなる。明日になれば駅まで送るから今日は儂の家に泊まっていきなさい」
私の胸に一抹の不安が過ったのですが、宛てもなく彷徨うよりおじさんの提案に従った方がいいと思ってしまったのでしょう。
今夜一晩おじさんの家に今晩泊めて貰う事にしました。
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