第3話DAY5:出会いと消えたトランプ



 教習生活から五日が経った。

大体の教習生は顔見知りになっていて、その中でも仲が良くなったメンバー六人でグループができていた。


私、沙耶香。そして同じグループとなった翔君、礼央君、二人は大学の同級生だそうだ。

それから個人で参加していた優菜ちゃん、真衣ちゃんの六人。


最初はよそよそしかった私達だが、今ではすっかり仲間となっていた。

夜になり、部屋でテレビを見ていると、ノックの音がした。ドアを開けると沙耶香が立っていた。

「礼央君の部屋で飲もうって」

沙耶香は嬉しそうに言った。


私と沙耶香は部屋を出て、礼央君の部屋に向かった。

礼央君の部屋に入るとふわりと良い香りがした。男の子の部屋って散らかっていると思っていたけど結構きれい。

「意外ときれいじゃん」

優樹菜ちゃんが言った。

「意外とってなんだよ」

礼央君はそう言いながらトランプを出してきた。


「お、いいねー」翔君が言った。

翔君がトランプきりはじめる。

「あ、ちょっと待って。俺手品していい?」

そう言って礼央君は翔君からトランプの束を受け取った。

「じゃあ、一番上のトランプをめくって」

一番近くに座っていた翔君が指示通りトランプの最初の一枚をめくった。

「それを俺に見えないように皆に見せて」

礼央君が翔君に指示をする。


翔君はその言葉通りに礼央君には見えないように私たちにトランプを見せた。

ハートのエースだった。


あぁ、よくあるやつね、きっと印的なやつがついているやつだ、と思っていると、突然礼央君が沙耶香の方を向いた。

「沙耶香ちゃん後ろ見て」

いきなり指名され、きょとんとした沙耶香は後ろを振り向いた。


トランプが落ちていた。そのトランプを沙耶香が拾う。

見るとそれはハートのエースだった。

「わーいつのまに」

「すげえ」

真衣ちゃんと翔君が言った。

「すごーい」私達も驚いた。

大体の手品はタネがなんとなくわかってしまうけど、さっきの礼央君の手品はどうやったか全くわからない。すごい。礼央君、手品上手。なんか意外だな。


「以上、俺の手品でした」

満足そうに礼央君はそう言ってトランプを並べ始めた。


 今日は神経衰弱をするようだ。

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