第4話 昇降口にて

全員で階段を駆け下りる。

駆け下りながら花子が後ろを振り向いた。

「ねぇ、後ろに誰もいないよ?」花子が不安そうな声を上げる。

「とにかく走ろう!確か一番下に行ったら昇降口がある!そこから出られるはずだ!」走る足を止めず、僕は叫ぶ。

「…でもそれって、危険なんじゃ、下で待ち伏せされていたら…」花子の声は段々小さくなり、最後はかすれるような声になった。たしかにその危険はあったが、僕は脱出を優先して考えた。


だが、それがいけなかった。


昇降口のあるフロアにつき、出ようとするも、鍵がかかっている。

「…くそ。また鍵がかかっているなんて!」徹也が珍しく声を荒げる。

「ねえ、ドアの下に何か挟まっているよ!」と花子が気づく。

僕はすぐにそれを拾い、読み上げる。「………誰か一人の犠牲がないと、鍵が開かない?」

自然と柑奈に視線が集まる。

「わ、私は嫌よ」

「…私、階段の様子見てくるね。」そう言って花子は階段の方へと走って行った。

「この間に、どうするか考えよう。」僕はそう言ったが、正直誰も犠牲にしたくない。何かいい方法はないのか。


すぐに花子が戻ってきた。

だが、花子がエレベーターの前を通り過ぎた瞬間、エレベーターの扉が開いた。中から力也とコジロウを倒した男が降りてくる。

花子が叫び声を上げる間もなく、背後から刺された。

「…そんな!」ひなたが叫ぶ。

「ど、ドアは開いた?」

徹也が「ダメだ、まだ開いてない!」と叫ぶ。

この間にも男が近づいてくる。

「タイムラグがあるのか!?くそ…!」考えろ。なにか策は無いか…?

その瞬間、徹也が前に出る。

「…僕が囮になる。そのすきにドアを開けろ!」

「なぜだ!まだ他に方法が…」何で徹也が囮なんか…

「だめだ、時間がない!それに僕はまだ役に立っていない!」ナイフを躱しながら徹也が叫ぶ。

ひなたが必死にドアを押して開けようとするが、まだ開かない。

「…どうだ、開いたか!」徹也の顔に焦りが見えてきた。

「空いたよ!早く!」ひなたがドアを開ける。柑奈は一目散に走り出す。


僕も出ようとしたが、「…っ!」後ろでうめき声が聞こえた。徹也が刺されたんだ。

「徹也!しっかりしろ!」

「僕はもう手遅れだ!先にいけ!」徹也が

男の足を掴み、足止めしている。僕は振り返らず、昇降口を出た。


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