第8話 もっとサプライズ

 車でショッピングモールへ向かう。

 もう三度目だ。

 嬉しい誤算、めちゃくちゃ助かる誤算があった。

 ソノちゃん家の車をプレゼント(利用可能に)した。ソノちゃんには馴染みの車、つまりはソノちゃんが『ゾーン』を楽に使える閉鎖空間、安全地帯の中に居ながら、移動できる手段ができた。

 そして、家の電気や冷蔵庫が送電は無いはずなのに使えるのと同様に、ガス欠にならない車。

 おまけにソノちゃん家の祖父母も乗れるように買ったワゴン車、3列シートで定員7名、広くて快適。

 安全運転かつ、他に車なしの道路、無免許(スミマセン!)のヒナタさん、普通にうまい……車庫入れ以外は。

 毎回、車庫入れで擦り傷を車につけるが、翌日には治っている。毎日リセットされ、現実世界の状態になるようだ。(だから給油も不要なのかな?)

 ショッピングモールの駐車場で降りるまでは、安心安全お出かけ気分。

 この日も魔物と遭遇せず、買い物を満喫(ただし、全部風化しているので、俺が再生する)。

 そんな帰り道、

「止まって!」

 突然、サチちゃんが車内で叫んだ。

「あそこの公園に、誰かいる!」

 これは、俺がこの世界に転移した時と同じ反応らしい。能力『サーチ』を使おうとしていないのに、大きな魔物や転移した人間は、自動で感知するサチちゃん。

「その近くに大きい魔物もいる!」

 どうする?……という目でみんなを見た。

「行きましょう!」

 姉ちゃんの決断は早かった。

 車を公園に近づける。

 団地と団地の間の公園、道路→歩道→花壇→公園となっている。隣接駐車は出来ない。

 道路に止め、そこからは徒歩、姉ちゃんだけが降りようと車のドアを開けたが、

 キィーーーーーーン!!!

 ガラスを引っ掻くよりも何倍も嫌な音、降りて一步でうずくまる姉ちゃん。

「何コレ?!ダメ?!耳が……?!」

 両耳を塞いで苦しそうだ。

 車の中のみんなも、開けたドアから入ってくる怪音波に耳を塞ぐ。

 その時、

 俺には聞こえてしまった。

「行ってみる!」

 耳を塞いでいたみんなに聞こえたかどうか分からないが、俺は車外へ飛び出した。

 魔物が見える。

 公園内の遊具、滑り台とほぼ同じ身長の魔物。

 近づく俺には気づいていない。

長細い脚と普通の胴体にコウモリの顔、耳がピクピク動き、何かを感知しているかのよう。

 目が無い魔物、1人用ブランコの骨組みの上に、普通の胴とコウモリ顔が付いてる魔物だ。

(いけるかも知れない……)

 あまり重量感がないので威圧感もない。そしてまだ俺に気づいてない。

 慎重に、さらに公園に近づく俺。

 男女差があるのか、俺には怪音波はそうでもない。それよりも、

(……どこだ?!)

 花壇に隠れながら、公園を見回す。

 奥側に滑り台とブランコ、そして魔物、遊びのバスケなら出来そうな平地をはさんで、手前にベンチと水飲み場(手洗い水道)。一番奥にトイレの建物もある。

(あのトイレだと無理だ……)

 しかし、トイレの中からの音ではない。

(もっと近い……そうか?!)

 飛び出した。

 5m先のベンチへ走った。

(いた!!)

 花壇からはベンチの背もたれしか見えなかったが、そのベンチの上に、

 泣いている赤ちゃんがいた!!

 抱き上げる。

 布にくるまっているだけの赤ちゃんだ。

 親を探す余裕は無い。

 急いで車に戻ろうとしたが、

 突然、日陰に入ってしまった。

 ……魔物に気づかれた。俺が見つかった。

 想像以上に、魔物の移動が早かった。赤ちゃんの大きさを、人間と認識するように出来てないだけだったようだ。泣き声を感知して探していたが、小さいから見過ごされていただけ。

 鈍い魔物だと思い込んでいた俺のミス、

(殺られる……)

 そこへ銃声!

 連発の銃声!

 正確には「カン!カン!」という玩具の銃声!

 魔物が倒れるまで姉ちゃんが連射し、

 俺も……赤ちゃんも助かった。

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