第4話 Repeat

ゾンビが徘徊する街を車で走る。

運転は職場の先輩がしていて、自分は助手席に座っている。


割と呑気に、自分たちがゾンビになったらどんな感じだろうとか、雑談していた。


交差点に差し掛かった時、右から大型トラックが現れ、通り過ぎると思いきや急停車して道をふさいだ。


先輩は減速していなかった。

トラックの横っ腹が目の前に迫る。

ぶつかる。

二人とも声も出なかった。


気がつくと車は止まっていた。

痛みはないが、動けない。

とても静かだ。

目の前の景色がノイズのようにちらついている。


左側から先輩が歩いてくる。

車の外に出ていたらしい。


先輩が見えたと思ったら視界にノイズが走り、誰もいなくなる。

また先輩が左側から出てくる。

脳がやられたのか、壊れたデータのような光景が繰り返された。


先輩はぎくしゃくと歩いてきて、フロントガラスに張り付いた。

うう、ううぅ、と泣きそうな顔で呻く。

また先輩が消えて、左側から出てくる。


自分はもうゾンビになったのだろうか。

それともこれからなるのだろうか。


先輩が左側から出てくる。

フロントガラスに張り付く。


土気色に変色した先輩の顔、こびりついた血、濁った目、泣いているような声。


ノイズが走り何度も繰り返される光景を、ただ悲しい気持ちで眺めていた。


【完】

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る