悲願花(ひがんばな)
嵯峨嶋 掌
咲かない花
早く早く
(落ちろ、落ちろ、
と、祈ってきたのだった。
その一方で、
(でも、まだ、花が咲かないから……明日が遅くやってくるほうがいいのかもしれない)などど、まったく真逆のことを考えたりするのだった。
庭に植えた“
秋の訪れとともに、“世之介石竹”は一斉に咲き出したのだが、世之介が島流しになるときに、そっと父から手渡された種を育ててきたちえは、本当に咲いて欲しい新種がまだ
(去年もだめだった、その前の年も……)
三年間、咲かないのは珍しい。
いや、父があえてそういうものを造り出したのかもしれない……と、何度もちえは、そう思い込もうとしてきた。
それは……咲けば、黒い花をつけるはずであった。
それが
黒……は、
この藩にかぎっては、黒は世間一般が忌み嫌う色ではなかった。なぜなら、
古代秦帝国の色は「黒」であった。
鎧も旗も衣服も黒一色。
これは五行説にいう
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