第四十八話 プロとアマ 

 長崎に着くと決まっていたかのように正ちゃんの部屋に転がり込んだ。彼はいわゆるバンドマンではなかった。しかし独学で覚えたピアノは当時でも異質で、チックかキースみたいだった。正直正ちゃんは彼らみたいになりたくて、演奏より恰好が似るように鏡を見ながら練習したそうだ。マイルスは元々何でも弾ける奴は探していなかった。そんな正ちゃんにマイルスは一緒にできる新しい音楽を期待した。しかしこの時マイルスはサックスを吹いていたのでトランペットの様にはストレートな自分が出せなかった。 

 しかも正ちゃんの仲間にプロのミュージシャンはいなかった。別にマイルスはプロだのアマチュアだのと言うつもりはない。情熱と食らいつきがあれば問題はないと思うが、やっぱりアマだと思うことが多かった。しかしプロは勉強しない。仕事としか思っていない。


 行きつけのジャズ喫茶で演奏は出来るが、みんなの向かう方向がはっきりしてない。あまりの退屈さにマイルスはグランドピアノの中にサックスのマウスピースキャップを投げ入れた。

 メタルのキャップは正ちゃんがピアノを弾くたびにジャンプして勝手な音を出す。正ちゃんは驚いてちゃんと弾こうとするが余計にキャップは飛び跳ねる。そこにハチャメチャなサックスをぶちかます。ピアノを弾く、キャップが踊る、それを聴いてサックスが暴れる。


 マイルス以外は演奏者も観客も何が起こっているのか分からない。今まで居眠りをしていた奴全員把握できない現実が飛び回っていて理解できない。夢の続きかとも思えた。

「目が覚めたかい?」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

魔歌不思議 オレの愛と人生はバラードだった マイルス @littlejohn

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ