第十二話 構えないで歌う

「人は構えると力が入ってしまいます。日ごろ練習した歌が上手くいかなくなります」「これはタイミングを考えるからです。音の頭をいつも意識してピンポイントに身をおくことになります」「瞬間をつかむことは誰にも出来ません」


「この時役に立つのがアクセントです。アクセントは無音の状態から始まるので、タイミングとして考えることは出来ません」「音符より先に、発音より前から歌っている意識が役に立つのです」「すでに歌っている気持ちから声を出すのと、構えてタイミングを計るのとは大きく歌が違ってきます」


「また構えないことはリラックスにもつながり、リラックスした歌は何者にも優ります。お風呂で歌う歌が良く聞こえるのはリラックスしているからです」

「なるほど…」とナベさん。


「構えないために、上手く歌おう、失敗したらどうしよう、上手く聞かせたいなどはやってはいけない事だと思いましょう」とマイルスは言った。


「上手くいくかなあ」と考えてすごく上手くいくことはないだろう。自分を信じてとか思い切ってやって「ああ、上手く言った」という事はあるだろう。


 自信のないセールスとか売れる訳がない。音楽でもスポーツでも自信の無いプレイが光るとは思えない。


 自信を持ってリラックスしてはじめて開けるものがある。


 そう教えながらマイルスは生徒の自信のなさは「自分から来てないか?」と思った。そんなことはないと思っているし「オレに任せろ」とも思っているのだが?


 レッスンは内容が斬新で、みんなにとって聞いたことの無い内容だ。だから恐れるのか?そうじゃないだろ!だから変われるだろう!


 激しい恋をしたい、でも傷つきたくない。それは無理な相談だ。リスクなしにお金儲けがしたい。何にもしないで有名になりたい。文字を書かない小説家になりたい。立っているだけで俳優になりたい。そんな訳ないだろう!

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