「死ぬ」ということ「生きていく」ということ。

交通事故ということは、前触れもなく突然の死だったということ。
覚悟もできず突然突き付けられただろう彼氏の訃報は、どれだけ衝撃的だったことだろう。

でも彼女は彼氏の後を追うでもなく「生きていくこと」を選択した。
途中で墓までたどり着けないのではと言うくらいだったのに、きちんと歩いて墓所まで生き、帰ってきている。

あの赤い花は、生命力を、彼女を象徴しているのではと思った。
墓石に投げつけられたにも関わらず美しい花。

いつか彼女も彼氏の死に対する歎きが川の流れにさらされる石のように丸くなっていき、そのうち日常を当たり前のように生きていくようになるのだろう。

彼氏は亡くなった。
それはもうこれ以上彼女へなにか影響を与えることがなくなるということ。
死ぬということは、世界に干渉できなくなること。

悲しい。
もう何もできない。
生者が「生きていくため」に存在は薄れていく。

そういうことを説明でなくストーリーで「感じさせてくれる」良い作品だと私は思いました。
これからもご活躍されていくだろう作者様に期待しています。

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