物理防御魔法が完璧に普及した世界で物理最強のスキルなんか与えんなよ?!え?抜け道があるってマジですか?~美少女達と挑む大冒険大戦争記~

@miyu_lasp

第一章

王国散花編

第1話:神様の祝福ってなんだろうね

 神様って何を考えているんだろうね。


 神様が管理してるっていう他所の世界のことは知らないけど、少なくともこの世界では10歳になると、神様から固有スキルツリーをもらえるんだ。


 スキルっていうのはみんなが持ってる魔力っていう力を使って、いろんなことが出来る様になるんだ。生まれた時から基礎スキルツリーっていうのを持ってて、何かを成し遂げたりいろんな努力をしたりすると手に入るスキルポイントを使ってスキルを開放していくんだ。


 固有スキルツリーにはいろんな種類があるんだけど、どんな風に神様が決めているのかはわからない。


 みんなが噂している限りだと、10歳までの基礎スキルツリーを見て決めているとか。どんな人柄なのかを見て決めているとか。そもそも生まれた時から人生をお決めになっていたとか。


 神様と話せる人なんて神殿で一番偉い人くらいしかいないから、神様が何を考えて選んでいるかなんて僕たちにはわからないけど。


 でも問題は、その固有スキルツリーにすっごい大きな格差があることなんだ。


 一つは生産系。鍛冶とか、農業とかがこれに当たる。これを持っているだけで生きていく分には困ることはないから基本的に当たりの部類だ。


 一つは魔法系。炎とか雷を、魔力を使って放つことができるようになる。特化系とか汎用系とか色々と種類はある様だけど、魔法というだけで重宝される。


 さて残った一つ、物理系。長槍術とか、短剣術とか。これがまた酷いんだ。


【物理無効結界】


 これは基礎スキルツリーのかなり始めの方にあるスキル。名前の通り、魔力を使って物理的な攻撃を無効にするバリアを展開するスキルだ。みんなこのスキルのことを知っているから、浮浪児でもない限りこのスキルを開放していないなんてことはない。


 だから、物理系のスキルツリーをいくら伸ばして強力なスキルを得ようと。どれだけ肉体を鍛えて大きな木を一撃で切れるようになったとしても。ほとんど無駄になるんだ。


 物理系のスキルツリーを与えられた人間には、生産系のスキルツリーを持った人の下でこき使われるか、スキルの充実していない下位の魔物と戦う冒険者になるかしかない。


 ─────────

 ファルザ(10)

 ▽基礎スキル

 ▽隷属剣スキル

 ─────────


 神官様が法典を掲げて神言を唱えている。その背後にある神様を模したステンドグラスから刺す色とりどりの光が目に入ってくる。光が強くなった瞬間があって、その後に目の前のステータスに文字列が追加された。


「れい…ぞくけん?」


 剣。すなわち物理系。息が荒くなるのを実感する。つい口から出てしまったスキルツリーの名前を聞かれてしまった様だ。背後から事情を察していろいろな声が聞こえる。


「剣だってよ。あいつ終わったな。」

「あいつ騎士様になるとか息巻いてたやつじゃねえか。哀れすぎるだろ。よかった、俺は爆発魔法で。」


 この神殿に集められた延べ100人程の同じ年に生まれた集団に、波打つように情報が伝播していく。中身は概ね嘲笑に思える。


「大丈夫?ファルザ。」


 隣から声を掛けられる。透き通る様な銀の髪を腰まで伸ばした彼女は、未だに固まったままの僕とは対照的に、体の前で組んでいた両の手を解いて楽にしていた。


 生まれた時からの付き合いである彼女のステータスを表示してみる。


 ─────────

 ミサ(10)

 ▽基礎スキル

 ▽召喚魔法スキル

 ─────────


 魔法、魔法、魔法、と頭の中で繰り返し鳴り響く単語。半透明な背景を持ったその文字列で、この先の人生の格差を見せつけられたことを理解する。


「ああああああああああああああああああああああああああああ」


 頭を抱えて倒れ伏す。そばで控えていた神官様が、慣れた様に僕を抱えて元いた席へと運んでいき、教壇の前には次の少年二人が並ぶ。


 席で泣きじゃくったこと以外、あとのことはよく覚えていない。幼馴染である彼女が心配してくれていた気はしたが、よく理解できなかった。


 ただ、一つ。終わり際の神官様の言葉だけはとてもよく頭に入ってきた。


「これから巣立つあなた達に神の祝福があらんことを。」



 神様は本当に僕を祝福してくれているのかな。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る