Vtuberの概要

「『Vtuberのママになって』って頼まれてたんだ!」


「え?」

俺は全く事態について理解が出来なかった。

凛音がVtuberをやりたいという話を知ったのは、凛音が記憶をなくした後だ。それ以前に、咲希と関わっているという話は一切凛音から聞いたことがなかった。


俺の知らない水面下で話が進んでいるのは、全く問題がないのだが、レンタル彼女という関係を咲希が知らないのにも関わらず、何故2人は仲良くいられるのだろうか。


「実は、凛音が涼の彼女だということを知る前からこの話は進んでて、それで良い就職先が決まりそうって話をされた矢先、涼の彼女だって紹介されてさ・・・。結構びっくりしたんだよね」

少し俯きがちな様子で咲希は呟く。

「それでVtuberの話は止まっていたんだけど、実はもうアバターが完成しててさ」


もうアバターが完成している?

俺は全く理解できなかった。咲希が昔から絵を描いていることは知っていたが、Vtuber用の絵を描くことも出来たのかとシンプルに驚いている部分もある。

また、本格的にVtuberに取り組もうとしていたこともわかり、なぜレンタル彼女を行おうとしていたのかすら分からなかった。



記憶をなくした小瀬川 凛音が口を挟む。

「水を差すようで申し訳ないんだけど、Vtuberの話を一度整理してみたら?私も忘れた記憶を取り戻す手がかりになるかもしれないし」


「確かに。私が凛音と話してた内容をまとめるね、えっと」

そういうと、彼女は1台のタブレットを持ってきた。

「この中に、色んな会話の履歴とか、Vtuber用の絵も入ってる」と言い、横に何度かスワイプしていると


「あ、あった。これ見て」

と言って、箇条書きでリスト化されたメモのようなものを見せてきた。

そこには


・夏の空に輝く星が良い

・ゔいのじでデビューする

・登録者数50万人以上を目指す

・歌の練習をするけど、1番最初の歌ってみた動画は涼と出す



と書かれていた。

1つめの「夏の空に輝く星が良い」というのはきっとVtuberのイラストを描いたり、名前を決めたりする段階で重要になってくるところだろう。

夏の空に輝く星というキーワードで俺はあることを想い出す。


そういえば、昔凛音と一緒に星空を見に行ったな。


高校生の頃、天文にハマっていた凛音が「夜の星を見に行きたいけど、1人じゃ心細いからついてきて」と頼まれて、興味もない天体観測に連れて行かれた。

ただ、凛音に星空の魅力を教えてもらっていく内に、星空に魅力を感じて、その後何度か望遠鏡を持って、丘で一緒に天体観測をしたっけ。


俺にとっては大切な凛音との想い出だから、何か彼女も覚えているかもしれない。だから今度連れて行ってみようと決めた。



他にも登録者数が何故50万人なのかなど、どれも気になるが・・・



「ん?この歌ってみた動画を涼と出すって...」


すると咲希は笑顔で、

「言葉の通りだよ!『絶対に最初の歌ってみた動画は涼と出す!』って言い張ってたからね」と凛音の意外な一面があらわになった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る