第11話 で、鰻の謎は?

もなかちゃんが「あーん」とぼくの口にポテトを運ぶと、環琉ちゃんがなんか嫉妬の視線を送り、もなかちゃんが環琉ちゃんの口にもポテトを運ぶと、環琉ちゃんの顔から嫉妬が消え甘えた。


そもそももなかちゃんは、ぼくのことをどお思ってるのだろう?

人の目を気にし過ぎなのは自覚してるけど、気になる。


久しぶりにもなかちゃんに、「あーん」してもらえた。

ポテトサラダを買って来て正解だった♪

と、にやけたいのは山々だが、ぼくは冷静を装った。


半額のシールの張った鰻丼を、環琉ちゃんはお箸で普通に食べた。

もう飽きたのか?


「で、鰻の謎は?」

ぼくは答えを促した。


「めぐるくんが、わたしの分身だったら、言わなくても解るはずでしょう」

「あなたの分身じゃないから解らないです」


環琉ちゃんは、咄嗟にもなかちゃんの腕を掴むと、

「わたしの分身じゃないとすれば、あなたは誰なの?!」

と若干ミステリー劇場ぽい口調で言った。さらにもなかちゃんまで、

「あなたは誰?どうしてここにいるの?ここはわたしたちだけの場所よ!」

と乗ってきた。


いやここは店の軽トラの中だってば!


しかし、この問いの正解はなんだろう?

どーすれば、鰻の謎の答えに持っていくことが出来るのだろう?難問だ。


「ええ、確かにぼくはあなたの分身です。ただ、こちらのもなかちゃんにも、説明した方が良いのでは、と思いまして」

「そう言う事ね、解ったわ。もなかちゃんの為に説明しましょう」


もなかちゃんは不服そうな顔をすると

「えっちょっと待って、それじゃわたしだけ仲間外れって事?」

となんか、ややこしい事を言い始めた。


もう回答編へ進めんじゃん!

ぼくはすかさず、

「もなかちゃんも分身です。えーと、それじゃあみんな回答を知ってるけど、再度確認の為、環琉ちゃんに話してもらうってのは?」

「そう言う事なら、仲間外れじゃなくて良かった」

もなかちゃんも納得したらしい。


一件落着だ。


環琉ちゃんは、ぼくともなかちゃんを見渡すと、

「あの棒の先には泥が着いてた。普通の棒高跳びの場合、着かないよね」


ぼくは、棒高跳びのシーンを思い出したが、定かではない。でも多分そうなのだろう。もなかちゃんが、代わりに答えた。

「そうね。土に着いたらずれちゃうよね」

「多分、あの棒の持ち主は、棒高跳びの棒で、川を跳ぼうとしたんだと思う」

「川を?」


ぼくらはその川を見た。

棒高跳びで、越えられなくもない川幅だ。


「それでいつも深夜に跳ぼうと試みていたのに、昨日は深夜に鰻を獲る人であふれていた。結果、5メートルの棒を持ち帰る事も出来ず、あの場所に隠した」

「なんで川を跳ぼうとしたの?」

「冒険心かな。ほら高層ビルに登ったりする人いるでしょう。きっとそんな感じだよ」



つづく




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