第1話 怪盗は時間を選ばない

 あれから一分後。

 来客用の椅子に依頼人を座らせると、俺は部室に備え付けられている棚から缶入りのお茶っ葉と急須を取り出して、水を入れた電気ケトルのスイッチを押した。

 我が部では依頼人が来た際にはお茶を出すようにしている。実費で購入しているため上等なお茶っ葉ではないけれど、最低限のおもてなしは提供しているはずだ。

 学校机を真ん中に、依頼人と向かい合って座る。

 お湯が沸くのを待つ間、俺はとりあえず初対面の礼儀として名乗った。

「初めまして。俺は明日見恢あすみかいです。クラスは1―B。よろしくお願いします」

「あっ、これはどうもご丁寧に。あたしは飛ケ谷春風ひがやはるかぜっていいます。初めましてよろしくお願いしま……ってちがう! おんなじクラスだよあたしたち! なんなら席も隣だよ!」

「あ、うそ、マジ? それは失礼しました」

 お辞儀をしようとした矢先、飛ケ谷はがばっと顔を上げると怒涛の勢いでノリツッコミを入れた。なかなかのリアクションだった。活発的な性格なのだろう。

 よくよく顔を見てみると、パーツパーツが全て高水準でまとまっている。すっきりとした目鼻立ちに透き通るようなきめ細かい肌。口を開くと時折光る白い八重歯がチャームポイントの女の子。

 ふむ。飛ケ谷春風か。

 活発で明るいうえに可愛いとは……。はっきり言って好印象だ。俺が重度のファミリーコンプレックスを患っていなければ惚れていたかもしれん。

 だというのに、如何せん彼女のことがまったく記憶に残っていなかった。

 さすが家族以外は眼中にないファミコンの権化たる俺だ。我ながら驚異の記憶力である。

 そんな俺の思考など露知らず、見知らぬ自称クラスメートたる飛ケ谷はむむむっと眉間に眉を寄せていた。エネルギッシュなイメージがあるせいか、あまり不機嫌そうには見えない。

「明日見くんってクラスでもそんな感じだよね。孤高っていうか孤独っていうか独りぼっちっていうか。もしかしてアレ? そういうのが格好いいとか思ってるタイプ?」

 ……こいつ、意外と失礼だな。

 ほぼ初会話なのに結構グイグイ踏み込んできやがる。そういう明け透けな態度なのは、見た目通りと言えば見た目通りだけれども。

「そうじゃない。話しかけられないから俺も話さないだけだ。こんなこと言っても負け惜しみにしか聞こえんかもしれんが」

「ふうん。ま、人それぞれだよね。オケオッケー、どんなタイプでもあたしは大丈夫だよ! 教室でも怖がらずに話しかけてね!」

 ……こいつ、本当に失礼だな。

 何ひとつ明言されていないのにナチュラルに見下された気がする。悪気がなさそうな分、余計に攻撃力が高いのもマイナスポイントだ。それと、オケオッケーってなんだよ。どっちか一個でいいだろ。

 まあいい。俺だって礼儀礼節には疎いのだ。気兼ねしない関係を築きやすいのならそれに越したことはない。

 だいたい、依頼人と請負人の関係など刹那的だ。

 飛ケ谷にどんな理由があって謎部を訪れたのかは知らないが、この一件が終われば俺たちの間には何の繋がりもなくなる。彼女曰く俺たちはクラスメートなのでまるっきり無関係とはいかないけれど、これまで通り、それほど会話することもなく互いに不干渉な学校生活が続くだろう。

 やはり、赤の他人との関係に時間を割くのは非効率と言わざるを得ない。

 こんなもの、金でも貰わなければやってられるか。

 そう、金だ。それで思い出した。飛ケ谷は謎部に依頼をしに来たのだ。

 俺が部長を務める謎部の立地は最悪で、学校の敷地内の端っこに置かれている三階建ての部室棟のさらに端、最上階最西端の薄暗い場所でひっそりと運営されている。用もなくふらふらと学校内を歩き回っていても決して足を運ばないような辺境の地だ。だから謎部の部室に誰かが来るときは幸良こうらが遊びに来たか、サボリ魔教師が仕事から逃げてきたか、あるいはこうして依頼人が遥々やって来たかの三択に絞られる。

「今日は何の用でここに?」

 尋ねると、彼女は我が意を得たとばかりにパッと表情を変え、ふんすふんすと鼻息を荒くした。

「そう! それだよ! 聞いてほしいことがあるの! えっと、これは今日の五限目にあった出来事なんだけど――」

「おっと、その前に」

 そのまま依頼に入ろうとした飛ケ谷を制止し、俺は机の中から一枚の紙を取り出して彼女の前に差し出した。ラミネート加工を施した我が部自慢のメニュー表である。

「なにこれ?」

 こてんと首を横に倒す飛ケ谷に俺は事務的な対応をする。

「うちでは依頼を聞く前に料金をもらうシステムになってる。頭脳労働だけなら二千円、肉体労働も入るなら三千円プラス雑費だ。支払い方法は現金のみ。分割払いは五回までなら対応してる。ああ、それと事件が解決しなかったとしても返金はしないからそこは了承しておいてくれ」

 マニュアル通りのセリフを言い終わり、俺はふうっと息を吐いた。

 それから一秒、二秒と時計の針は進む。たっぷり十秒ほど経って、ようやく飛ケ谷は驚きの声を上げた。

「うぇっ⁉ お金取るの⁉ しかも高いっ⁉」

「当たり前だ。慈善活動じゃないんだから」

「で、でもここって謎部でしょ? 学校が取り仕切ってる『部活動』なんでしょ? だったら生徒からお金を取るなんて許されないと思うけど……」

 予想だにしていなかった展開に飛ケ谷の眼が大きく見開かれる。当然と言えば当然の反応だった。

 まあ、だからって俺に料金を下げるつもりは微塵もないんだけど。

「いいんだよ。うちは正式には部活動認可されてない幽霊部活みたいなもんだから。名前がないのも不便だし便宜上そう呼んでるだけで学校の管理下にはない」

「ええ⁉ だったら余計にダメじゃん! 校内で勝手に商売始めちゃってるじゃん! それに認可されてないならこの教室だって正式には謎部の部室じゃないし! なんで勝手に占領しちゃってるの⁉」

「生徒が学校の施設をどう使おうと構わないだろう。もともとここは空教室だったし担任にだって一応の許可は得てる。問題はない」

「問題しかないよ……。それ、明日見くんがお金を取って活動してるのがバレたら黒崎くろさき先生の立場って危ないんじゃないの?」

 黒崎先生というのは俺たちが所属する1―Bの担任だ。クールな顔立ちとすらっと細長い体躯が中性的なイケメン女教師だが、ちゃらんぽらんな性格がたまに瑕だともっぱらの評判である。

「その点も心配ない。黒崎先生は部の存在は知っていても活動内容までは知らないって設定だからな。加えて、生徒間での金のやり取りなんて珍しいことじゃない。いざという時は嘘ついてしらばっくれる」

「やっぱグレーな部活なんじゃん!」

「あ、わかってるとは思うけどこれ秘密な。絶対に口外するなよ。……ほんとマジで」

「急にマジのテンションになるのやめて! 怖い!」

 飛ケ谷は自分の体を抱くように腕を巻きつける。明るめの茶髪に脱色された髪がひらりと揺れ、暗い部室にあってそれだけが異彩を放っていた。

 打てば響くとはまさにこのことだろう。俺も思わず彼女の雰囲気に押されて極秘内部情報まで喋ってしまった。まずい。口外されたら本格的に部が潰される……。

 話題転換だ。早いところ本題に入ってしまおう。

 それに、幸良も練習が始まるからと幼気な嘘をついて先ほど帰ってしまったし、俺に飛ケ谷と長話を続ける理由はない。要件は早く済ませるに限る。

「で、飛ケ谷は何の用でここに?」

 依頼人の秘密を守るため、嘘をついてまで親愛なる兄との時間を犠牲にした幸良の気遣いに涙しながら俺は尋ねる。いやぁ、それにしても幸良もほんっと気の利く子に成長したなぁ。帰る前には俺のためにオレンジジュースも買ってきてくれたし。お兄ちゃん、これさえあればもう他にはなにも要らない。

 と、感慨にふける俺をよそに飛ケ谷は暢気にポンと手を打った。

「そうだったそうだった。そのことなんだけど……って、ちょっと待って。最後にもう一回だけ確認させて。……ほんとにお金取るの?」

 ははは。何を今さら。

「本気だ。謎部は慈善活動をしない」

「そっか~……本気か~……最低だな~……」

 俺の男気ある返答に飛ケ谷はがっくしと肩を落とす。続けて、金欠なんだけど仕方ないか~とぼやき、制服のポケットから財布を取り出して中身を検分し始める。俺の好きな光景だ。

「ひい、ふう、みい………四回払いでお願いします」

 飛ケ谷の白く細い指先に押し出された五百円玉が机の上を滑ってくる。俺はそれをしかと受け取った。

 これで今日の収支はプラマイゼロ。いや、妹に奢ることは実質プラスなので今日の利益は千円と換算することができるだろう。なんと素晴らしい金の錬金術。これだから探偵活動はやめられない。

 飛ケ谷は詳しく知らなかったようだが、俺が部長を務める「謎部」とは、校内で発生する謎や不思議現象を解明する非公式部活だ。学校専門の探偵クラブと言い換えてもいい。

 俺はその唯一の部員として、探偵の真似事じみた活動を日々行っている。

 信じられるのは金と頭脳と家族のみ。それが謎部の流儀。

 俺はこれまた机から取り出した自前の探偵帳簿に『ヒガヤハルカゼ 二千 4』と書き込み、その横にチェックマークを一つつける。これがあと三つ増えたとき、俺と飛ケ谷の関係は終わる。

 当の飛ケ谷はというと、未練がましい表情で俺の懐に入れられていく五百円玉をじいっと眺めていた。俺の大好きな光景だ。

 さて、支払いも済んだことだし、報酬に見合うだけの働きはすることにしよう。ちょうどお湯も湧く頃合いだ。

 俺は棚から湯呑を二人分だけ持ち出し、視線だけで飛ケ谷を促す。そろそろ本題に入れという合図だ。彼女もお金を払ったことで覚悟が決まったのか、無駄話をすることなくすんなりと用件を述べてくれる。

 話の切り出しはこうだった。

なんだけど」

「は?」

 手元が狂ってお湯がこぼれた。

 なんだ? その変な導入は?


×  ×  ×


 ――今日の五限にさ、テストがあったでしょ? そうそう、さっき話にも出てきた黒崎先生がやった数学のテストだよ。試験範囲が二次関数だったやつ。

 ね、ね、明日見くんは手応えどうだった? 今日のって以外と難しかった気がするんだよね。範囲がどうとか閾値がどうとかって。あたし数学苦手だから全然わかんなかったの。解けたのは最初の三問くらい。

 ……あ、そっか。明日見くんって学業特待生なんだっけ。あれでしょ? 学年の成績トップの男女一人ずつしか選ばれない学費免除のやつ。へえ~、やっぱこんな部活やってるくらいだし頭良いんだ。じゃ、今回の事件もばっちり解決してくれるよね。

 それでね、あたしも何とかして問題を解こうって思って色々やったんだけど、時間がなくなってくだけでさ。結局ほとんどの時間は机に倒れてただけになっちゃったんだ。

 えっへへ……なんかこうして話してみると情けないことしてるね。ちょっと恥ずかしいや。

 え? 今度勉強教えてくれるの? やった!

 ……あ、有料なんだ。いや、うん、予想通りではあるんだけど……。明日見くんってがめついんだね。だからいつも独りなんじゃない?

 わかったわかった。ごめんって。非難してるわけじゃないから許してよ。

 ああ、うん。色々やったことっていうのは、窓の外を見たりペンをいじったりしてたの。そうすれば気分転換になって何か思い出すかもって思ったから。

 それでね、ここからが重要なことなんだけど、あたしが窃盗犯だって疑われてるのは、ペンが盗まれちゃったからなんだ。

 それも不思議なことにの!

 ね、ね、不思議でしょ? あたしもほんっとうにビックリしたんだから!

 ……え? 矛盾してるって? う~ん……どのあたりが?

 ……なあんだ、そういうことか。自分のペンが盗まれたのにあたしが窃盗犯だと疑われてるのが変だってことね。たしかに、盗まれた人が盗んだっていうんじゃ笑い話にもなんないかも。

 でもちがうの。盗まれたのはあたしじゃなくて、あたしの席の隣の子なんだ。もちろん明日見くんのことじゃないよ。明日見くんは私の左隣の席だけど、今回盗まれたのは右隣りの女の子のペンだから。

 明日見くんも知ってる通り……って、君のことだからどうせ知らないか。クラスメートなんだけどなぁ。そんなだからボッチなんだよ。

 その子は小栗憂音おぐりゆうねって名前でね、学級委員長をしてる可愛い子なの。優しいし頭も良いしでクラスの男子から人気なんだよ。たぶん、成績も明日見くんとおんなじぐらい良かったはず。あと何点か足りてれば特待生に選ばれたみたいなんだけどね。

 で、肝心の小栗ちゃんのペンがテスト中に盗まれたことなんだけど、実はクラスの誰も盗まれた瞬間は見てないんだ。

 うん。盗まれた本人の小栗ちゃんでさえ見てないんだって。

 小栗ちゃん、テスト中にコンタクトがずれちゃったらしくて付け直すために二分くらいお手洗いに行ってたの。それで教室に帰って机の上を見たらペンが無くなってたってわけ。

 最初は小栗ちゃんも「ペンが落ちたのかな?」って思っていろいろ探したみたい。でも床にはそんなの落ちてなくて、だから盗まれたんだって考えたらしいよ。

 そこからはもう大変だったよ! テストが終わってすぐに小栗ちゃんから「飛ケ谷さんが盗んだんでしょ」って言われちゃってさ。あたしは何のことだかさっぱりだったから適当に返事してたら彼女すっごく怒っちゃって。あんまり大事にしたくないのか先生にもクラスのみんなにも内緒で話し合ったんだけど、あたしが何を言っても聞いてくれないの。「あなたが盗ったんだ」って、そればっかり。席が近いから疑うのも仕方ないんだけどさ。ちょっとは信頼してくれてもいいよね。

 結局、小栗ちゃんもあたしも譲らないから決着がつかなくって話し合いはまた明日ってことになったの。それであたしがどうしようどうしようーって悩んでたら、ホームルームのときに黒崎先生がこの部活のことを教えてくれたんだ。先生、この部のこと詳しいみたいだったから。……依頼料が必要だってことは教えてくれなかったけど。

 とまあ、こんな感じであたしの話は終わり。

 明日見くんには、どうにかしてあたしにかけられてる疑いを晴らしてほしいの。

 どう?

 なにか気になるところ、あった?


×  ×  ×


「テストの最中に起きた盗難事件、ね」

 なるほど。たしかに不可解な事件ではある。およそ盗難が起こらない状況で発生した盗難とは、いかにも面倒そうだ。

 俺はひとまず頭の中で話を整理しつつ、淹れたばかりのお茶が入った湯呑を机に置く。ゆらゆらと一本の湯気が目の前で揺れ、緑茶の良い香りがふわっと部室に広がった。

「わ、ありがと。……おいし」

 軽くお礼を言って、飛ケ谷は湯呑を大事そうに両手で持つ。そのまま口元にまで持っていき、ずずーっと美味しそうにお茶を啜った。

 飛ケ谷のすぼめられた桜色の唇がかすかに潤う。首を上げているせいで彼女の喉がこくんとわずかに動くのが見えた。

「……必要ならお茶菓子もあるぞ」

 その何てことのない一場面が何故かとても尊い光景のように感じられ、自然と俺はそう口にしていた。らしくない振る舞いだった。

「ほんと? なら頂こうか……やっぱり、それも有料?」

「安心しろ、これはサービスだ。客をもてなせないんじゃ、商売なんてやる資格はないからな」

 しっかりと金は取るがその分のサービスは提供する。ギブアンドテイクは俺の信条だ。

「お、お金は取るのに妙なプライドがあるんだね……。でも、ありがと。お菓子も頂くよ」

「わかった」

 飛ケ谷に背を向け、俺は棚に常備されているお菓子入りのケースから手ごろなものを見繕う。クッキーはまだ日持ちがするし、今日は粒あん饅頭にしよう。

 人数分の饅頭を手に取って定位置に戻ると、さっそく饅頭に手を伸ばした飛ケ谷は包装紙を破り、ぱくっと一口で食べきってしまった。どちらかと言えば体型は瘦せ型だが、意外と健啖家なのだろうか。それなりにボリュームのある饅頭だったんだが……。

「ほう? はにかわかった?」

 飛ケ谷がもぐもぐと饅頭を咀嚼しながら言う。

 話の筋道は理解できたものの、まだこれといった確証は得られていない。俺は首を横に振った。

「何点か気になる箇所はあったけどな。……そうだな、ペンが無くなったときの状況は把握できたから、次は小栗さんがどうして飛ケ谷犯人説を提唱したのかを教えてくれないか」

 飛ケ谷は困ったように口の端を曲げた。

「小栗ちゃんがテスト中に席を立ったって話はしたよね」

「ああ。コンタクトがずれたからトイレに行ったんだよな」

「小栗ちゃん、最近メガネからコンタクトに変えたらしくてまだ付け外しに慣れてないみたいなの。だから鏡を見にトイレに行ったんだけど……」

「その二分足らずの間にペンが消えた、と」

「それってさ、どう考えても犯人は小栗ちゃんがトイレに行ってから帰ってくるまでに盗んだってことでしょ? でも盗まれたのはテスト中だから教室は自由に歩けない」

「だから移動する必要がない、最初から自分の席の近くにいた生徒の中に犯人がいるんじゃないかと小栗さんは疑った」

「うん。そうみたい。たぶん、盗まれたのがあたしでもそう思ったんじゃないかな」

 他人の机から物を盗むにはそこまで近づかなければならない。

 だが、テストの最中に自分の席を離れることはできない。

 であれば必然、手を伸ばせばペンを盗れる距離にいた奴らが最も怪しい。

 なんの矛盾もない、きれいな推理だ。

 そこまで思い至って、俺は心の中でひっそりと飛ケ谷に対する認識を改めていた。

 へえ。こいつ、これで意外と頭に脳味噌つまってんだな。

 部室に来てからの言動的に、俺はてっきり飛ケ谷は日頃から何も考えずに本能で生きている頭バーバリアン系女子だと思っていたのだが、どうやらそれは誤りだったらしい。きちんと筋道を立てて論理的に話を進めることもできるようだ。

「それで、脱バーバリアンだけが疑われる理由は判明してるのか?」

 飛ケ谷は記憶を探るように目線を上にやった。

「脱バーバリアン? 誰それ?」

 おっと。うっかり思考が漏れてしまった。

「失礼、飛ケ谷が疑われた理由は」

「あたしのことだったんだ⁉ 明日見くん頭の中であたしになんてあだ名つけてるの!」

「隣の席だから怪しいってんなら容疑者は他にもいるはずだろう? それがどうして飛ケ谷だけ疑われる羽目になる」

 うちのクラスは総勢三十人。生徒の席は五人六列で構成されているから席順によっては四方どころか八方を囲まれている場合だってある。ゆえに容疑者はマックス八人だ。角の席であれば隣席の生徒の数は減るけれど、それにしたって最低三人は容疑者がいる計算である。

 だというのに、小栗さんはどうも飛ケ谷が犯人だと決めつけている。ならばそう考えるだけの根拠がどこかにあるはずだ。

「話を止めないつもりだこの人……」

 俺の的確な指摘を受けてなお、飛ケ谷は納得のいかない様子で先ほどの俺の失態に文句をつける。じーっと細められた目で美人に見つめられるのは居心地が悪い。

「ふんっ。そっちがその気ならあたしにも考えがあるもんね」

 言うが早いか、飛ケ谷は二個目の饅頭に手を伸ばすと目にも止まらぬ速さでそれを平らげてしまった。おい、それだと数が足りねぇだろうが。一人一個の約束じゃねえのかよ。どうすんだよ俺の分。

 意趣返しが上手くいったことに嬉しくなった飛ケ谷はふふんと得意げに頬を緩める。

 ところが急いで食べたせいか饅頭の粉がその頬についていて、何とも緊張感のない表情になっていた。

 ……この女、本当に窃盗犯だと間違われて困ってるのか? 二千円払ってお茶と饅頭を食いに来ただけじゃないのか?

 とはいえ、飛ケ谷が犯人だとすると、わざわざ謎部を訪れて安くない金まで払った挙句に自分の犯行を暴いてほしがっていることになる。それでは整合性が取れない。となるとやはり飛ケ谷は犯人ではないのだろう。

 同様に、盗難事件そのものが小栗さんの狂言だという線もあり得ない。たとえば飛ケ谷を陥れたいがために小栗さんが嘘の騒ぎを起こしたのだと仮定すると、小栗さんが教師にも生徒にも今回の一件を言いふらしていない点が矛盾してしまう。

 要するに、窃盗事件は実際に発生し、かつ、犯人の正体は飛ケ谷と小栗さんどちらでもないということだ。

 俺がそこまで考えを進めたとき、不意に、暖かな風が俺の背中を撫でた。

 首だけで振り返ると、黄緑色のカーテンがひらひらと揺れているのが見えた。開かれた窓からは風のほかにグラウンドにいる運動部の掛け声も飛び込んできて、たまに金属バットがボールをとらえる甲高い音も混じっている。

 かたや部室棟はといえば無音に近く、謎部近辺の人気のなさは相変わらずだった。

 ……ふむ。そういうことか。

「他に犯行が可能そうな生徒はいないのか?」

 飛ケ谷はぺろりと口の周りを舐め、う~んと顎に人差し指を当てた。

「ほら、あたしたちの席ってクラス最後列じゃん? しかも小栗ちゃんの席って廊下側の角っこだから……」

 続きの言葉は俺が継いだ。

「後方に生徒はいないため犯行が可能なのは左横・右横・真正面・左斜め前・右斜め前にいた五名の生徒。さらに小栗さんの席はドア側の角でもあるから右側に座る生徒はいない。よって容疑者は左横・左斜め前・真正面の三名に絞られる」

 飛ケ谷は困り眉をつくって首を縦に振る。少ない容疑者の中に自分が含まれていることを嫌がっているのだ。

「うん。でね、あたし以外の子って全員小栗ちゃんの前にいるでしょ? だから三人の中でも一番距離が近かったあたしが怪しいって考えたそうなの」

 へえ、飛ケ谷犯人説にはそういう根拠があったのか。

 小栗さんの席の前方に座る二人の容疑者が犯行に及ぶには、どうしても

 けれど、テスト中にそんな大胆な行動をしては誰かに見られる危険性が高すぎる。よって消去法的に犯人は飛ケ谷だけになる……。

 悪くはない推理だ。筋も通っているし破綻もない。小栗さんがそう考えるのも無理はないだろう。

 しかし飛ケ谷が謎部を訪れた時点で飛ケ谷犯人説は否定されている。やはり、真犯人は俺の推理通りの人物だということだ。

 これでおおよその全容は把握できた。

 あとは確度を高めるだけだ。

「一応、ほか二人の生徒のことを教えてくれ」

 これは形式だけの、あまり意味のない質問だったが、思い出すそぶりも見せずに飛ケ谷はつらつらと語ってくれた。

「左斜め前に座ってた人は土佐とさくんっていう男の子だよ。勉強大好きな性格で、そんなに口数は多くないけど喋れば面白いよ。博識だし、聞き上手だしさ。小栗ちゃんと話してる姿はあんまり見ない気がする。そんで、真正面に座ってたのは薩摩さつまちゃんって女の子。負けん気が強いっていうか体育会系っていうかさっぱりした性格で、たしか小栗ちゃんとは同じバレー部で仲が良かったはず。……だいたいこんな感じ、かな?」

 土佐と薩摩って……。なんだか不穏な苗字の組み合わせだな。盟約を結んでも二カ月くらいで解消されそう。

 と、俺が場違いな感想を抱くなか、飛ケ谷は目を輝かせて独自の推理を披露した。

「ねえ、犯人がわからないなら動機から推理していけばいいんじゃない? たとえば土佐くんは小栗ちゃんのことが好きで、だから彼はペンを盗んだ。もしくは薩摩ちゃんが小栗ちゃんのペンを気に入っちゃって、だけど限定品でもう買えないから仕方なく盗んだ……みたいなのはどう?」

 俺は腕組みをして黙った。

 良い推理だと思う。他人の物を盗むってことは、目的の物がそれだけ自分にとって価値があるということの証左だ。そして、その価値を決めるモノサシは恋愛感情や金銭、復讐心といったものである場合が多い。だから小栗さんのペンが特別なものであったという飛ケ谷の推理に異論はない。

 でも、今回はそれだけでは足りないのだ。

「それだと犯人がテスト中にペンを盗んだことの説明がつかない。盗んでまで欲しいのなら、犯人にはもっと都合のいい状況があったはずだ」

「あ、そっか! 盗むだけなら別に昼休みとかでもいいわけだもんね。でも犯人はあえてテスト中に盗んでるから、そこには絶対に何か意味があるんだ」

 そう。

 このピースに気づくことができれば、あとはパズルを組み立てるだけだ。

 ――どうやら二千円分の働きはできたようだな。


「というわけで、犯人はこの中にいる」


 と、俺はきわめて唐突に事件の終わりを宣言した。

 謎は解かれ、窃盗犯が見つかり、飛ケ谷への疑いは晴れた。

 もう事件は進むことも戻ることもない。すべて終わったのだ。

 けれど、俺の勝利宣言を聞いても飛ケ谷は嬉しくないのか頭上に「?」を浮かべ、素っ頓狂な顔を曝け出している。口も半開きだ。

 だが、それでもなお可愛いというのだから意味が分からない。美人は得だなあ、と俺はしみじみ思った。

「え? えっ? ど、どういうこと?」

 飛ケ谷の思考は壊れた時計のごとく一ミリも前へ進んでいないらしい。未だ理解が追いつかず、しきりに頭を悩ませている。

 それもそうかと俺はひとり納得する。いきなりこんな推理ドラマのお約束みたいなセリフを言われて「はいそうですか」と納得できる奴はそうそういない。

 結局、飛ケ谷はろくすっぽ理解もできないまま半ば機械的に自分の指を動かした。

 まず、その指が俺に向けられる。

 もちろん答えはノーだ。

 次に、自分自身の顔に向ける。

 もちろん、ノー。

 そして最後に、目を真ん丸にした驚愕の面持ちで部室の隅に指をやる。

 そこにいる――に向けて。

 俺は犯人の名を告げた。

「あなたが犯人ですね――黒崎先生」

「ご名答」

 数学教師、黒崎はるかはにやりと笑った。


×  ×  ×


 時刻はすっかり夕方だった。

 傾いた陽は影を斜めに地に映し、一面を茜色に染め上げられた校舎はその形をおぼろげに見せる。俺のオレンジジュースもさらにオレンジ感を増していた。

 午後六時を告げる市のチャイムはとっくに鳴った。あと十分も経たずに完全下校の放送がなされるだろう。

 こんな時間まで学校に残っているのは教師か運動部くらいで、その運動部もそろそろ練習を切り上げて後片付けに入る頃合いだ。校舎の外に生徒の姿はほとんど見られない。

 五月の西日を背に受けて、黒崎先生は優雅にお茶を飲んでいた。

「うむ。明日見の淹れる茶は美味いな。茶菓子のチョイスも申し分ない」

 今になって話をする気になったのか、先生はぺらぺらと余計なことまで口走りながらぱくぱくと饅頭の形を変えていく。

 そして食べ終わると、

「あー美味しかった。だが先生はもっと味の濃いお茶の方が好みなんだ。次回から覚えておくように」

 知らん。不満があるなら飲むな。

 黒崎先生はいつも自分のことを一人称で「先生」と呼ぶ。その自称先生に向け、俺はがるるるるーっと無い牙を向けた。

 このふざけた教師の名前は黒崎遥と言い、俺たちが通っている高校の数学教師で、俺と飛ケ谷が所属するクラスの担任を務めている。

 ついでに言うと二十六歳女性独身で彼氏なし。彼氏がいないことをネタにすると怒るから本人には言わない方がいいことも明記しておく。

 背まで届く美しい長髪が特徴で、クールビューティーという言葉がぴったりな凛とした顔立ちをしているが性格は全くクールじゃない。むしろその時々の気分で俺を面倒ごとに巻き込む自由奔放な性格の持ち主だ。

 ――そして、今回の事件の犯人でもある。

 教師のくせに何やってんだよ……。

 その教職者らしからぬ言動には飛ケ谷も途方に暮れたようで、ほぼ軽蔑の視線をぶつけていた。

「見損ないましたよ黒崎先生! 普段から不真面目で浮ついてるけど悪いことだけはしない人だって信じてたのに! まさかいよいよ犯罪にまで手を出すなんて!」

 「だけ」の部分にアクセントをおいて黒崎先生を責め立てる飛ケ谷。相変わらずナチュラルに人を傷つけている。これ、もしや飛ケ谷の方が俺より対人スキル低いんじゃ?

 まあいい。事件が優先だ。

 無神経バーバリアンこと飛ケ谷が言うように、事件は一応の解決を見た。

 俺が黒崎先生を犯人だと断定した後、先生はあっさりと自分の犯行を認めた。胸ポケットから小栗の物であろうペンを取り出して自ら犯行の証拠を提示してもいる。

 黒崎先生が犯人であることは揺らぎようのない事実だった。

 黒崎先生はよよよ……と、しおらしく反省するふりをして、飛ケ谷からの叱責を軽く受け流す。

「おおう。生徒からの信頼が厚くて先生泣いちゃいそう」

「ふざけないでください!」

「ふざけてないよ。先生はいつでも真剣そのものだ」

 いいや絶対にふざけてるね。

 飛ケ谷と同じ気持ちだったので、俺もここぞとばかりに文句をぶちまける。

「今日もまた仕事をサボりに来たと思ったら実際はこういうことだったんですね。迷惑です。金輪際、謎部には来ないでください」

 実は、黒崎先生は飛ケ谷どころか幸良が訪れる前から部室に来ていたのだが、飛ケ谷が俺に依頼を持ち込んだと見るや狸寝入りを始め、以来、今に至るまでずうっとダンマリを決め込んでいたのだ。

 先生が狸寝入りをした理由は単純。

 ずばり、俺が飛ケ谷に口を滑らせてしまった「黒崎先生は謎部の存在を認知しつつも活動内容までは知らない」という設定を守るためである。

 つまり先生は「飛ケ谷が明日見に金を渡す光景を私は見てないよ」と、誰のためでもないアピールをするために寝たふりをしたのだ。途中、窓を開けるために一度だけ立ち上がってはいたが、後はずっと知らぬ存ぜぬのスタイルを貫き通していた。

 そんな先生を俺と飛ケ谷が鬱陶しがるのも無理はない。

「おいおい迷惑なんて言ってくれるなよ。泣きたくなるじゃないか」

 先生は涙を拭う素振りをする。それが演技であることは誰の目にも明らかだ。

「せめてそのにやけた顔をやめてから発言してください」

「かかっ。ばれたか」

 先生は快活に笑って猿芝居をやめると、出るところがしっかり出ている起伏の豊かなボディによく似合う黒のパンツスーツを整えた。

 たったそれだけで黒崎先生の放つ雰囲気ががらりと変わる。この怠慢教師、見てくれだけはすこぶる良いのだ。

「どれ、下校時刻も迫っていることだ。早いところ明日見の推理を聞かせてもらおうか」

 背もたれを肘置き代わりに使い、通常とは逆の態勢で椅子に座る。ただでさえ豊かな胸が背もたれに押し当てられることでさらに強調され、夕日に照らされた教室とパンツスーツがいやに似合っていた。

 何とも教師らしくない格好だが、それが返って黒崎先生っぽくもある。無遠慮というか無神経というか、彼女の性格が表れた座り方だ。

 黒崎先生を敵視している飛ケ谷はその座り方に眉をひそめるも、注意したところで態度を改めることはないとわかっているため指摘はしなかった。

 その代わり、飛ケ谷の声はさらに冷たくなる。

「明日見くんじゃなくて先生が責任をとって説明すべきです! 先生が小栗ちゃんの物を盗ったからあたしはここにいるんですよ! 小栗ちゃんと明日見くんとあたしに謝ってください! というか二千円は先生が払ってください‼」

 最後に本音がもれた飛ケ谷の叫びはまさに正論だった。黒崎先生がテスト中にペンを盗んだからこそ飛ケ谷は犯人だと誤解され、辺境の地で胡散臭い探偵業なんかをやっている謎部を訪れる羽目になったのだ。謝罪の一つや二つは当然である。

 けれど、今回の事件に三つ目の謝罪はあり得なかった。

 黒崎先生は、絶対悪ではないから。

 先生は儚げに微笑むと、椅子から立ち上がって飛ケ谷に近づき、その頭をそっと優しく撫でた。

「ああ、飛ケ谷には本当に悪いことをした。今度メシでも奢るよ。だから、できればどうか許してほしいかな」

 それだけ言って、先生は飛ケ谷から離れる。

 ほんの一瞬の出来事だったが、そこにはまるで映画のクライマックスシーンを見ているかのような底知れぬ緊張感があった。

「え、あ、はい……」

 なにやら意味深な先生の行動に飛ケ谷も困惑し、さっきまでの強気な態度は鳴りを潜めている。

「さて」

 呟きと同時に、先生はくるりと俺に向きを変えて薄ら笑いを浮かべた。殊勝な態度は既にない。いつもの飄々とした黒崎先生だった。

「や~、明日見にも悪いことをしたな。テスト後すぐ事情を話せればよかったんだが、公衆の面前で言いふらすような話でもないからな。手間はかかるけど安全な方法を取らせてもらった。君ならわかってくれると信じているよ」

 ほんと他人任せな人だ。任される身にもなってほしい。

「ええ、理解はしてますよ。だから先生がペンを盗んだこと自体を責める気は俺にはありません。その後の対応は看過できないですけどね」

 先生はくくっと喉奥で笑う。

「そこさえわかっていればいい。愛すべき生徒から誤解を受けるのは、何よりもつらいことだからな」

「はいはい、そうかもしれませんね」

 俺は諦めと笑いが交じり合った言葉を返す。投げやりではあるが適当ではない。

 ちゃらんぽらんな黒崎先生の言葉をどれほど信用していいのかは判然としない。でも、先生の生徒を思う気持ちだけは信じられた。

 今回の事件にしたって、先生は小栗を愛したからこそペンを盗んだのだ。

「ってか、どうせなら飛ケ谷がここに来た時点ですぐにネタ晴らししてくださいうよ。わざわざ俺に解かせる意味なんてないでしょうに」

「かかっ、すまんすまん。君らの掛け合いを見るのが面白くてつい、な。それに小栗がしたことを先生の口から言うのも忍びなかった。どうせ明日見なら真相に辿り着けると思っていたから君に丸投げしようとしたんだ。許せ」

「今度俺にも何か奢ってくれたら許します」

「じゃあラーメンだな。男の子はみんな好きだろう?」

「とんこつで」

「当たり前だ。福岡人ならとんこつ以外ありえない。飛ケ谷もそれでいいか?」

 事件のことなどすっかり忘れてしまったような、和やかな雰囲気が部室に漂う。

 この部屋においてその意味を理解できていないのは飛ケ谷ひとりだけ。自然、彼女は納得がいかずに声を荒げた。

「待ってよ! 黒崎先生が小栗ちゃんのペンを盗んだんだよね。それなのにどうして明日見くんは先生を許すの。……あたしはムリ。ぜぇ~~~……ったいにっ! ムリ!」

 飛ケ谷は柄にもなく目を鋭くして黒崎先生を睨みつける。

 柔和なルックスとこれまでの言動のせいで決して怖くはないものの、鬼気迫る迫力を備えていた。

 ここで俺はようやく、ほんの少しだけ彼女の本質を理解できた気がした。

 こいつは、飛ケ谷春風は単純バカだけど、きっと、掛け値なしの善人でもあるのだ。

 俺は飛ケ谷のことを詳しくは知らないが、それでも今の彼女を見ればわかる。飛ケ谷は自分が犯人だと疑われたことにではなく、黒崎先生が小栗に非礼を浴びせたことが許せないのだと。

 たぶん、小栗と飛ケ谷は友達なのだろう。依頼を話すときも、飛ケ谷は一度たりとて小栗を傷つけるような表現は使わなかった。冤罪で糾弾されているにも関わらず、誰を責めることもしなかった。

 彼女は自分ではなく他人のために怒っているのだ。

 自分に降りかかった災難など二の次にして、ただのクラスメートにすぎない小栗の心情を何よりも優先しているのだ。

 俺はそれを、羨ましく思う。その選択は俺には不可能な判断だから。

 家族以外の他人を大事に想うという気持ちが俺にはない。

 俺という人間は、どうしても内と外の境界線を強く感じてしまうようにできている。

 内のみんなは大切で、外はそうじゃない。

 そういう風に育ったから、そういう風に育つしかなかった。

 だから――……。


 続きは考えられなかった。

 突然、ジィーっと壊れたラジオが放つノイズのような音が耳に届いたからだ。

 ノイズから数秒経って、教室に備え付けられているスピーカーからチャイムが流れる。完全下校五分前を告げる予鈴だった。

「……もう時間がありません。飛ケ谷への説明は俺がします。先生もそれでいいですね」

 寮生たる俺には門限があり、特待生を維持するためには自室で勉強しなければならない。小遣い稼ぎの探偵業などにかまけている時間はない。

 余計な感傷はもう消えていた。

「ああ、頼む」

「っ! 待ってよ! あたしはまだ――」

 怒りが収まらない飛ケ谷は口を挟もうと身を乗り出す。

 俺が取りあうことはない。事件は終わったのだ。

「飛ケ谷が巻き込まれたテスト中に起きたという盗難事件ですが――」

 そう前置きして、俺は誰に向けるでもない推理を流暢に語った。

「大前提として、生徒がテスト中に他人の机から直接物を盗むことはできません。なぜなら下手な動きをすればすぐに他生徒の注目を集めるからです。

 いくらテスト中で生徒の視線が下を向いているとしても、視界に入る可能性の大きい『手を伸ばして盗む』という行為は想像以上に難易度が高い。まず不可能と言っていい。

 したがって、小栗さんが推理した『飛ケ谷犯人説』は否定されます」

 手を伸ばして盗むことはできない。

 だが実際にペンは消えている。

 であれば、考えられる可能性は大きくわけて三つだ。

「はじめ、俺は今回の一件は小栗さんの狂言によるものではないかと疑いました。盗まれたペンなど本当は存在せず、ソリの合わない飛ケ谷を貶めようとする小栗さんの策略ではないかと。

 けれどその案はすぐに却下されました。『狂言説』では小栗さんが事件の喧伝を嫌っていることの説明がつかないからです。

 では、どうして小栗さんは事件を大事にしないのか? この点が疑問になってきます。

飛ケ谷の弁明に耳を傾ける余裕がないほど慌てているわりに、彼女はクラスの友達どころかテストを実施した黒崎先生にすら相談していません。自分と飛ケ谷の二人だけで決着をつけようとしています。

 俺にはこの点がどうも気になりました」

 そこで一旦の区切りを入れ、次の可能性に移る。

「次に考えたのはペンがふとしたはずみで床に落ち、それを犯人が拾ったパターンです。

 わかりやすく『拾い盗み説』とでも名付けますが、そうなれば誰であっても机上の物を盗ることができるので、犯人の可能性はクラス三十名から小栗さんを除いた二十九名にまで膨れ上がります。

 ここで一応、さっき潰えたはずの『飛ケ谷犯人説』も一時的に復活しますね。なんなら俺だって容疑者の一人です。まあ、飛ケ谷に関しては謎部を訪れた事実から鑑みて犯人にはなりえないんですけど。

 ところが、そもそもペンが床に落ちたはずはないので『拾い盗み説』も却下です」

「え? なんで? どうしてそんなことが言い切れるの? 風や振動で落ちたかもしんないのに」

 疑念の声を上げたのは飛ケ谷だった。推理を聞いているうちに少しは落ち着きを取り戻したのだろう。いつのまにか表情もわずかに柔らいでいる。

 それに安堵して、俺はぐぐぐっと背筋を伸ばしながら推理を続けた。

だよ。物が落ちれば音がするけど、俺はテスト中にそんな音は聞いてないからな」

「あっ……」

「たぶん、飛ケ谷だって聞いてないんだろ? だからテスト中の様子を話したときも説明するのは『見たこと』ばかりで『聞いたこと』については一切言及しなかった。テストに集中するあまり聞き洩らした可能性もなくはなかったが、どうやら三問程度しか解けてないことを思うと杞憂だろう。

だから飛ケ谷が音の話をしなかったことはペンが落下してない証拠になる。

よって『拾い盗み説』も成り立たないってわけだ」

「はぇ~」

 と、口を半開きにして感心する飛ケ谷はいかにもアホの子という様相で、記念にそのマヌケ面を写真で残しておきたくなるほどだった。

 ほんと、単純な奴だよな。

 ほんの数分前まで本気で怒っていたくせに、ちょっと話が進むとこれだ。

 刹那的というか、その時々のテンションだけで生きているというか……。過去に捕らわれることよりも、現在と未来を楽しむことに全力を注いでいるに違いない。

 そんな彼女に影響されたのか、俺もだんだんと緊張が解れてきた。

 最後の説だが、と俺はぴしっと三本指を立てる。

 体は飛ケ谷のほうを向く。口調もいつの間にかそれに倣っていた。

「最後に、盗んだのはテストを実施した数学教師――『黒崎先生犯人説』が考えられた。

 最終的にはこの説が正解だったわけだが、これの証明は簡単だった。

 なにせ教師ならテスト中だろうが見回りというテイで自由に教室内を行き来できるうえに生徒から注目を集めることもない。加えて、腕を伸ばして小栗の机からペンを盗るところは自分の体で隠してしまえば犯行を目撃されることもない。

 たったのこれだけで完全犯罪のできあがりだ」

「うんうん。たしかにそうだよね」

 飛ケ谷はなおも興奮気味に手をぶんぶんと振る。きちんと説明すれば理解するあたり地頭は良いらしい。

「……」

 だからこそ、果たしてこれ以上の推理を披露してよいものか。

 もう推理も終盤だ。というより、黒崎先生が自白した時点で完結している。

 これ以上俺が何をしても蛇足にしかならない。むしろ、ここから先の暴露は彼女の安寧を壊してしまいさえするだろう。

 自分よりも他人を優先する飛ケ谷にとって、それはひどく辛いものになる。

 だが、ここまできて最後の真相を話さないのは、果たして飛ケ谷からの依頼を完璧に解決できたと言えるのだろうか。俺の信条と照らし合わせて、自らの仕事に満足のいくものだろうか。


 友達思いの優しい女の子。

 他人を疑わない健気な女の子。

 ゆえに誰よりも脆く、傷つきやすい。

 境界線の「外」にいる飛ケ谷への責任を、俺は背負うことができない。

 うだうだと思考を巡らせても答えは決まらない。結局、煮え切らない俺はちらと横目で先生を見る。この先を言ってしまっていいのかと視線で問う。

 視線がかち合い、黒崎先生はただ瞑目した。

 答えはイエスだった。

「……一つだけ、黒崎先生の動機が謎だった」

「動機?」

 窓から吹き込む春の風が彼女の髪を撫でつける。

 西日が部室に降り注ぎ、誰も彼もを乱暴なまでに一色単に染め上げる。

 それでもなお、俺と彼女の境界線は明確で、だから俺は非情な真実を告げられる。

「教師が生徒の物を盗むことは考えにくいが、あり得ない話じゃない。恋愛絡みだとか嫌がらせだとか、そういう動機はいくらでも想像できる。

 ただ、可能性を探るうちに俺は今回の事件に限り、それらの動機は除外できることに気づいた。なぜなら犯行はテスト中に起きたからだ。飛ケ谷が言っていたように、ただ盗むだけなら昼休みでもよかったんだ。

 つまり、黒崎先生はテスト中盗んだ。これこそが事件を解く最大の鍵だったんだ。

 ……思い返せば、小栗さんは事件の拡大を嫌っていたよな」

 ピースは揃った。

 後は芋づる式に解答が姿を現す。

「もしかして……」

 飛ケ谷も真相に気づいたらしい。怒りにも悲しみにも憐みにも遠い感情が彼女の思考をジャックする。

 俺の最後の責任は、黒崎先生が請け負ってくれた。

 それが真相だった。

「………」

 飛ケ谷は俯いて何も言わない。固く引き結ばれた口元だけが見える。

 彼女をよそに、黒崎先生は事件の裏側を話し始める。

「小栗の成績はもともと学年上位で五本の指に入るほどだった。しかし、あと一歩のところで学業特待生には選出されなくてな……。本人にとって、それは何よりも許せなかったらしい」

 うちの高校の学業特待生は男女一名ずつしか選ばれない。

 小栗はその枠から零れ落ち、失意のあまりカンニング行為に及んでしまった。

「特待生の選出は学期ごとで、選出基準は日々の試験結果の合算だ。小栗はどうしても特待生になりたかったんだろう。ペンの中にカンニングペーパーを隠していたよ」

 そして、テスト中にその紙を見ていることが黒崎先生に露見した。

「小栗が成績の伸び悩みで苦しんでいたことは知っていた。だから先生もなんとか穏便に事を済ませようといろいろ考えたんだが、同時に、カンニングは罪だと小栗に反省してほしくもあった。そういうわけで真相を伝えるのは明日にしようと黙っていたんだ」

 黒崎先生は小栗を愛しているからこそ、彼女のためを思って沈黙を選んだ。

 その手段は決して褒められたものではない。どころか、生徒を正しい方向へ導く指導者としては失格だろう。

 けれど、愛はすべての免罪符になる。だから俺に先生の想いを否定する権利はなかった。

 ところが事態は先生の想像よりも深刻で、小栗の動揺はかなりのものだった。大した証拠もないのに飛ケ谷が犯人だと決めつけて本人に直談判さえしてしまった。

 これでは無関係の飛ケ谷にまで被害が及ぶことになる。


「――だからあたしに謎部を紹介したんですね」

 顔を上げた飛ケ谷は黒崎先生をじっと見据える。

 名は体を表すとはよく言ったものだ。

 飛ケ谷の目つきは春風のように柔らかく、声は暖かかった。

「ここなら小栗ちゃんがしたことをみんなに知られることなく、あたしに事件の真相を伝えられる。明日見くんが――探偵がいるから」

 辺鄙な場所に居を構えた、謎解きを生業にする幽霊部活。

 通称――謎部。

 秘密裏に事件を終わらせるには、これ以上ない好物件だ。

「これで先生の話はおしまいだ。飛ケ谷と明日見には迷惑をかけたな。……すまなかった」

 口先だけでなく、黒崎先生は体を四十五度以上に折り曲げてまで俺たちに頭を下げた。

 普段はいい加減で出鱈目でちゃらんぽらんだけれど、いざという時は絶対に揺らがない愛という真摯な気持ちを持って生徒に向き合ってくれる黒崎先生。

 そんな先生だからこそ俺たち生徒は全身で鬱陶しがり、心の底から尊敬する。

飛ケ谷は悔いるように唇を噛んだ。

「あたしこそ、すみませんでした。先生の気持ちなんて、これっぽっちも知らなかったくせに……」

「いいさ。教師の気持ちなんて生徒が気にすることじゃない。君たち子供はすくすくのびのび育って、先生たち大人の上をぽーんと軽く飛び越えてくれればいいんだ」

「でも、あたしは……」

 黒崎先生の言葉を聞いてなお、飛ケ谷の表情は暗い。

 飛ケ谷が自責の念を抱かなければならない道理など微塵もない。だが、どこまでも他人に優しい彼女は、その優しさ故に他人を傷つけられない。すべての罪科を自分に押し付けてしまう。   

 「外」と「内」が完全に逆転してしまっている。

 俺とはまるで真逆の存在。

 誰にでも優しいのに、自分にだけは厳しい女の子。

 だからだろう。

 飛ケ谷春風という存在が、こんなにも俺の気を引いてやまないのは――。

 ノスタルジックな放課後の校舎に重い沈黙が訪れる。春風だけでは吹き飛ばしえない、冷酷な現実が頭をもたげる。



 ……俺はシリアスは嫌いだ。

 この沈黙をぶち壊す策を考える。そして、見つける。

 これだ。これしかない。

「そうですね。先生も早く結婚して自分のお子さんが先生の上をぽーんと軽く飛び越えてくれればいいですね」

 刹那、俺の頬を何かが掠めた。

「……貴様、それは宣戦布告と受け取っていいな」

 グーだった。

 正真正銘マジのグーだった。

 それは一切の手加減と社会的立場と音を置き去りにした、100%中の100%。

 当たれば俺の頬を粉々に砕く、大人のグー。

 …………こっえええええぇぇぇぇ!

 ダメだ! これはダメだ! 洒落にならんやつだ!

「あ、や、その………」

「ああ⁉ テメェ何言ってっかわかんねぇよもっと気張れやゴラァ⁉」

「…………」

 怖い。やけに堂に入った黒崎先生の恫喝に俺は怯えることしかできない。怖い!

 そういえば先生、高校生のときは超グレてた元ヤンって言ってったけ……。よく教師になれたなおい。

 失敗した。アンタッチャブルな話題だと知っていたのに、触れてはいけないタブーだと知っていたのに、空気の重さに負けて先生に結婚の話題をしてしまった。どうやら俺は眠れる獅子を起こしてしまったらしい。

 ああ、愛しの弟、妹たちよ……どうか、先立つ不孝を許してほしい。こんな馬鹿なお兄ちゃんを許してほしい。お兄ちゃんは今日、正式に終わりを迎えました……。

「アアッ⁉ テメェ何シカトこいてんだあッ⁉」

 絶望が俺を包む。混沌が俺を飲み込む。すべてが黒に染まっていく。

 く、苦しい……。誰か俺に光を、光をくれぇ……。

 果たして俺を救ってくれる光は――あった。

「ま、ま~ま~、落ち着いてくださいよ黒崎先生! 先生はまだまだお若いですし! お綺麗ですし! ぜんっぜん結婚の心配することなんてありませんよ。 それにほら! いざってときはあたしがもらってあげます!」

 光……というか光のイケメンがそこにはいた。

「ひ、飛ケ谷!」

 その輝きに当てられた先生は眩しそうに目を細める。俺も細める。だってこいつ西日より輝いてるし。

 もはや直視すらままならない。飛ケ谷の明るい声だけが耳に届く。

「あたしはそこまで成績もよくないし、養ってあげる自信もありませんけど……でも、先生と一緒なら楽しい日々を過ごしていける自信はあります!」

 完璧な告白だった。なんならプロポーズだった。ついでに俺も一緒に婿にもらってほしくなった。

 なんだこいつ性根がイケメンすぎるだろ。黄金の精神すぎてスタンドとか使えそう。

 さすがは飛ケ谷春風。その場のノリで生きている善人単純バカである。刹那主義もここに極まれりといったところだ。

 しかし二十六歳女性独身彼氏なしにはそれが効いたようで、悪鬼の如き形相はゆるゆると緩み、しまいには春まで残った雪のようにでろっでろに溶けてしまった。

「え、えへへぇ。そ、そぉかぁ? そぉ思うかぁ? うぇへ。ま、まあ? 愛する生徒にそう言われたらぁ? 先生もぉ? 吝かではないというかなんというかぁ?」

 ……なんだろう。俺は見てはいけないものを見てしまっているのかもしれない。

 これが二十六歳女性独身彼氏なしのガチデレかぁ……。

 特級呪物とか目の前にあったらこんな気持ちなんだろうなぁ……と、俺は遠い目で黒崎先生を見つめる。同時に、二度とこの封印を解いてはならないと心に誓う。

 俺は口の中で念仏を唱えながらこの世の平穏を祈った。どうか、どうか黒崎先生に運命の出会いを与えてください……。

 俺の祈りが天に届いたのか、黒崎先生はらんらんと目を光らせると、居ても立っても居られない様子で立ち上がった。

「よし! 飛ケ谷のおかげで元気復活だ! このあと用事もあることだし、先生はこれで失礼させてもらう」

「あっ、待ってください先生。最後に一つだけ……」

 すっくと立ちあがった黒崎先生を飛ケ谷は制止するが、

「すまない。それはまた明日にしてくれ。君たちと話をして先生も気が変わった。これから小栗の自宅へ行って彼女と直接ケリをつけてくるよ。今日の礼はまた後日だ」

 そう言うや否や、先生はぱたぱたと足早に部室を去っていってしまった。相変わらず自由気まますぎる。

「あ~……行っちゃった」

 残された飛ケ谷は行き場の失った手を空中に漂わせ、中腰の状態で動きを止める。

 ドンマイ。

 何はともあれ事件は終わった。俺は深いため息を吐く。

「やっと帰れるな」

 飛ケ谷から寄せられた「テスト中の盗難事件」は無事に解決され、謎部の事件簿の一端にその名を載せることだろう。いや、実際はそんな事件簿なんて作ってないんだけど。

 まあ、こんな事件は早く忘れた方がいいので事件簿を作らなくていいのは救いだ。なにせ覚えていても特に得るものがない。作るのは帳簿だけでいい。

 さて、依頼料のうち残りの千五百円はいつ徴収しようか。返済計画を飛ケ谷と立てなければ。

 心機一転、心を入れ替えた俺はスマホを取り出してカレンダー機能をオンにする。さすがに一カ月もあれば千五百円くらいは貯まるだろう。脳内でそろばんを弾く。

「そうだ飛ケ谷、四回払いにおける利子率なんだが――」

 「利息は月一がうちの決まりになっていて」と続けようとしたところ、何とも言えない飛ケ谷の表情が目に飛び込んできた。

「あたし……」

 うつろな視線が虚空を捉える。飛ケ谷の瞳に、ぐちゃぐちゃに絡まる感情が現れる。

 悲しみ、憂い、不安、焦燥。そのどれとも言えない複雑な思い。

 取り返したくても元には戻らない大切な「何か」を失った表情がそこにはあった。

 その「何か」とはなんだろう。

 友情か、希望か、あるいは優しさか。

 一時の感情の高ぶりで忘れていた喪失感が、今になって飛ケ谷を襲ったのだ。

 信じていた友人が、被害者だと思っていた友人が、実は違反行為をしでかしていたのだと知ってしまった。裏切られた。

 やるせない真実と救われない展開を前にして、最終的に飛ケ谷は何を感じるのか。

 俺にはわからない。推理のしようがない。

 飛ケ谷と俺の付き合いは今日の一時間足らずしかない。

 彼女を理解するためにはまだまだ時間が足りていない。

 飛ケ谷春風を理解するためには、これから先の未来に彼女が必要だ。

「あたし……あたし……」

 二の句を告げられない飛ケ谷は壊れたお喋り人形のように同じ言葉を何度も繰り返す。

 ……しかたない。特別サービスだ。安い慰めの言葉くらいはかけてやろう。

「なあ飛ケ谷」

 俺は飛ケ谷に近づく。彼女との距離を少しずつ埋める。

 一歩、二歩、三歩。……いや、いっそ溝を飛び越えてしまうくらい。

 ほどなくして俺は飛ケ谷の横に並び立つ。彼女のため、春に吹く風のように優しい言葉を探す。俺たちの距離は、あまりにも近い。

 不意に飛ケ谷と目が合う。うるんだ瞳がきらきらと輝く。朱に染まるその顔に否が応でも引き寄せられる。彼女の唇がにわかに動く。俺は反射的に口を開いていた。

 そして――


「あたし……あたしの――二千円は⁉」


 飛ケ谷の悲痛な叫び声が学校中に響き渡った。

 ……こいつ、金の心配してやがった⁉

 下校時刻を告げるチャイムが鳴ったのは、それからすぐのことだった。

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