【閲覧注意】第3話 事件の「画」


【注意!!】

俺の共感覚をフルに活かしたグロテスクな描写があります。

彼女の見ている世界の「画」です。

本当に気分が悪くなるかもしれません。

身の周りで近いことがあった方は、フラッシュバックが起こる可能性があるため、絶対閲覧はしないでください。


繊細な方も閲覧はおすすめできません。


そうでない方は、メンタルが万全なときに見てください。


因みに、作者はこれを書いた後、吐きました。


閲覧は自己責任でお願いいたします。 

閲覧は自己責任でお願いいたします。(大事なことなので2回……)


閲覧によって生じたいかなる損害について、当方は一切の責任を負いかねますことをあらかじめご了承ください。













※当時の感覚に戻ります。


幼いころの、

僕になります――――――



***


子どものころ、Aさんとは友人関係で、よく話をしてました。

事件があってから、Aさんは引っ越しました。


数年後、Aさんから連絡をもらいました。話したいことがあるようです。

僕は彼女に会いにいきました。

彼女は肩を出した服を着ていました。化粧もしていて、なんだか大人の女性のようでした。


Aさんは自分の近況を一通り話した後、僕にどう見えるかと背伸びした紅い唇で聞いてきました。Aさんは、僕が想像力が豊かなことを知っていました。


「怒らないから正直に言って」と言われたので「カラスに見える」と答えました。

詳しく話してと言われました。


「Aさんはカラスに見える。黒くて頭から真っ逆さまに落下していくカラス。目玉は真下を向いている。カァ、カァって必死に鳴いている。眼から零れ出た涙の玉が凹んだり膨らんだりして変形を繰り返しながら天に昇っていく。カラスは羽をばたつかせてなんとか飛ぼうとしてるんだけど、羽ばたくほど、黒い羽根が抜けて、それが空に上っていく。無数の黒い羽根が空を染めていく。やがて、羽がほとんど散ってスカスカになった翼からは白い骨? 筋?が見えて。ボロボロになった翼をまだバタバタさせている。


でもどんどん落ちていく。すさまじいスピードで。遠くからソレを見ている人は「――――――――」と言ってる。このままだと、真下にある火の海に落ちてしまう。それを期待する目がたくさんある」


(「――――――――」は、あまりにも可哀想で伏せ字にしました)



Aさんは泣きました。

僕は「ごめんね」と言いました。


Aさんは涙を拭いた後、今度はこう言いました。


「あの事件について、どう見えるか知りたい」と。


僕はそれはさすがに怖くなって何回かは断ったんですが、結局、引き受けました。



***



彼女から、事件の詳細を聞かされました。鳥肌が止まらなくて、ゾクゾク寒くて、目と喉の奥がひゅーーーっと下がっていきました。叫びたくなって、胸の奥で声がぐちゃぐちゃに混線して……まあ、この辺にしておきます。

とにかく、私は想像上で彼女と同じ体験をしました(まぁ、全く同じではないですが)


それと、今の彼女の思いなども詳細に聞き取りました。

それらを紙に書いて、落ち着いてから、見直しました。

(落ち着くまでに1ヶ月かかりました)



「事件、どう見える? 正直に答えてほしい」と言われました。


 だから答えました。


【以下、閲覧注意パート、開始】








「私は地上3000メートルくらいのところに浮いています。空はくすんだ灰色の雲に覆われていて、遠くには、ぼやけた灰色の山脈が見えます。下を見ると、皮膚をはがされた、ピンク色の肉の大地が見えます。大地はボコボコしていて、凹んだところに溜まっているのは血? でしょうか。肉には白い筋が通っています。鶏肉みたいに弾力のある肉です。その肉の大地がどこまでも広がっています。


スーッと大地に何十kmもある線が真っ直ぐ入りました。その線がゆっくり割れて巨大な目がねちゃぁっとピンクの糸を引きながら開いていきます。開ききったそれの大きさは、視界に入る大地の4割を占めるほど、巨大です。

 虹彩は三層で色はチャコールグレー。内側にいくに従って、色が濃くなります。黒い瞳孔の奥で、暗く濃い紫色のヘドロが何かの触手のように蠢いているのが微かに見えます。


その瞳が私を見ました。目が合った瞬間、ぞわー!!!!っと酷い悪寒が全身を包み、臓器がこみ上げ、口からビチャビチャと音を立てながら溢れ出しました。

思わず口を手で押さえます。

生臭い鉄の味が口内と鼻腔に貼り付いていきます。


やつのおぞましさのあまり危うく気を失いかけました。

そいつの視線はべろべろ嘗め回すようで気色が悪いです。見られた箇所が本当になめられたようにぞわーっと鳥肌が立って、その唾液がビリビリ痺れてして、気持ち悪さのあまり卒倒しそうです。


基本的に今、浮いてる場所から落下することはなさそうですが、さすがに失神したら落ちると思います。

でも、そいつと目さえ合わせなければ、その恐ろしい感覚は襲って来ないので、そうした方が良いでしょう」


【以下、閲覧注意パート、終了】


Aさんは泣きました。吐きました。他いろいろありました。


しかし、落ち着くと、話せるようになりました。


話しあって出た結論をまとめます。


確かに巨大な目はおぞましかったですが、こちらに手を伸ばして来ることはできないようでした。地面と一体化していて、そこから動くこともできない。


空に浮いてる私に直接手を出すことは無理です。

見つめるだけ。

それでも、滅茶苦茶にきついのですが。


「これが、私に見えてる世界……」とAさんは呟きました。

「これは、たぶん、私の記憶の抽象画。私の記憶が見ている、いや、私の魂が見ている世界」


「こんなのが心の中にいたら、メンタルが良くならないのも当たり前だよ」と彼女は言いました。聞くと、「いつまでも過去のことで悩んでて、どーするんだ」「トラウマなんて幻想だから」「甘えてる」「メンタルクリニック行ってんのに、まだ治んないの?」など酷い言葉をかけられていたそうです。



彼女は「こいつは地面に張り付けられていて、私に手を出せない。私の魂は、こいつから手を出されないことを知っている」と何度も呟きました。

確かに、もう事件から何年もたって、彼女も遠く離れたところに住んでいるので、心の底では大丈夫だと思っていたのかもしれません。少なくとも彼女は、そう解釈したようです。


続けてAさんは「フラッシュバックは、こいつと目が合った時に起こるんだ。こいつと目を合わせなきゃいいんだ」と言いました。

どうしても辛くなると視線が下を向いて目が合ってしまうので、上を向いていかなきゃと自分に言い聞かせるように繰り返しました。


また、彼女は最後に「この絵が見れてよかった。今まで暗くて大きい恐怖がバーッといきなり覆い被さってきて訳も分からず苦しむって感じだったけど、これで敵の姿が見えるようになった。恐ろしいと思ってた敵は、地面から動けず、見つめることしかできないやつだった。そういうやつだって本当は私は気づいてたんだ!」と力強く言いました。


そして彼女は前向きな発言が少し増えました。


厳密にいえば彼女と僕は違う人間なので、どこまでこのが正確か分かりかねます。(でも、僕は彼女の事件を自分に降ろしてから、この画を描きました)


それに、彼女がせっかくちょっと元気になったんだから、これで良かったと納得しました。



トラウマを絵にしたことで、見えなかった敵が見えた。そいつは意外と大したことないやつだった――――


彼女の強がりもあるでしょうが、そう信じることができて、少し気持ちが軽くなったようです。「いつ襲ってくるか分からない恐怖」から、「地面に張り付けられていて、自分から見ようとしなければ、襲ってくることはない相手」に変わりました。


この変化は彼女にとって、凄く大きな一歩になりました。



***


この情報が誰かの助けになれば、幸いです。


少し文章が乱れている気がします、申し訳ありません。


僕は吐きそうですが、皆様は大丈夫でしょうか。

どうかご自愛下さい。

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