ノーラブノーライフ。しかしこれはラブコメであってラブコメではない。では何だというのか?題名のない恋物語

ALC

最終話 ノーラブノーライフ

瞑想中。

心は凪いでいた。

自分の気持ちのすべてを落ち着かせるために…。

僕はただ精神統一に時間を割いていたのであった。



僕は本当の両親を知らない。

今でも生きているのか、それとも何処かで野垂れ死んだのか。

そんなことすら知りもしないのだ。

それは引き取ってくれた今の両親がひた隠しにしている影響も少なくない。

僕はこれと言って本当の両親に再会したいなどと思ったこともない。

一度もないとは言い切れない。

しかしながら僕は赤子の内にこの家の前に捨てられたのだ。

にのまえ家は代々お寺の住職を営んでいる。

神仏が宿っている場所に赤子を捨てるなど…

僕の産みの親は世間知らずなのかもしれない。

もしくは今の両親に頼み込んだのかもしれないし、それは僕には知り得ない範疇の話だった。

つなしと言うのが僕に与えられた名前である。

いちじく。またゲームか?」

血は繋がっていない姉である九の部屋を訪れると僕は父親に仰せつかった任務を遂行しようとしていた。

「またパパのお使い?あんたも大変ね」

九は嫌味を言うような呆れたような表情を浮かべて座椅子から立ち上がるとベッドに腰掛けた。

「床に落ちているものは全て捨てて良いと判断するぞ?」

「待って!待って!大事なものもあるってば!都度都度確認して!」

「姉なのに本当に我儘だな。いい加減自立しろ」

「生意気!働いていないならももにも説教してよ!妹でしょ!?」

「百はまだ学生だぞ?それなのに休日は修行に励んでいる。ぐうたらしているのは九ぐらいなものだ」

「はいはい。わかりましたよ。本当に昔から嫌味なぐらいに良い子なんだね」

九は呆れたように首を左右に振ると床に散らばっている大事なものをベッドの上に置き始めた。

それが全て完了したのか九は部屋の外へと歩を進める。

「お風呂入ってくるから。ベッドの上のものは捨てないでね?」

「おい。ベッド周りも掃除するんだが?」

「掃除する時はきれいになった机の上にでも置いておいて」

九はそれだけ告げると部屋を出ていくのであった。

「本当に我儘な姉だな…」

再三言うようで申し訳ないが。

僕はこの家の人間の誰とも血が繋がっていない。

本当に少しも繋がっていないのだ。

九の部屋を掃除すること数十分。

本日は月曜日で妹の百も学校へと向かっている。

腕時計で時間を確認すると十五時を数分過ぎた辺りだった。

「百も帰ってくる頃だな…この後は夕飯の支度に…」

次の予定を頭の中で考えながら独り言のように口にした。

「ただいま。お兄ちゃん…またお姉ちゃんのお世話?」

引き戸を開けて姿を現したのは妹の百だった。

「おかえり。うん。父さんに任されてね」

「全く。お姉ちゃんもだけど…お父さんもだよ…」

百は呆れるように嘆息すると鞄を廊下に置いて中へと入ってくる。

Yシャツの袖のボタンを外すと腕まくりをしてこちらに向かってきた。

「手伝わないで良いよ。部屋で勉強でもしたら?」

優しい口調で妹に接するのだが彼女は少しだけ険しい顔つきで首を左右に振った。

「面倒事はお兄ちゃんに任せるの…お父さんの悪い癖だよ」

「そうじゃないと思うけどな。父さんは九とそりが合わないだろ?顔を合わせたらすぐに喧嘩が始まる。だから僕を通して近況なんかを知りたいんだよ。大事な娘のことだしさ」

「それなら喧嘩しないように接すれば良いだけなんじゃないの?見てるこっちがイライラするよ」

「まぁまぁ。本当に合わない親子だって居るだろ?でも大事に思っているだけマシさ」

「そうだけど…お兄ちゃん…毎日大変でしょ?」

「そんなこと無いさ。拾ってもらってここまで大きく育ててもらったんだ。何の文句もない。もちろんこれからも」

「良い子でいないといけないわけじゃないんだよ?」

「僕の性格は元からこんなものだよ。それに修行の身だしね。どんな事を指示されても嫌な顔せずにやり遂げるよ」

「修行ね…」

百がポツリと言葉を漏らした所で九の部屋の掃除は完了する。

大袋のゴミ袋をいくつか手にすると僕らは庭を抜けた先にある畑へと向かった。

「燃やすついでに焼き芋でもしようか?」

大分田舎な土地であるため近所に家は殆ど存在しない。

何よりも寺なわけで…。

近くには墓地が存在している。

畑は一家が昔から持て余していた土地を僕が畑へと耕したのだ。

もちろん父親の許可は取ってある。

「焼き芋!私が準備してくる!お兄ちゃんは火を付けておいてね!」

百は嬉しそうに家の方へと走り出す。

僕はドラム缶にゴミ袋を入れるとマッチを擦る。

そのままドラム缶の中に火の付いたマッチを入れた。

ボッと火が燃え移るとドラム缶の中から火が立ち込めていた。

乾燥した薪をいくつか投入して焚き火を継続させた。

秋から冬にかけて寒い日は続いていたが、夕方の焼き芋の時間ほど優雅な時は無いだろう。

燃えていくゴミを眺めながらゆらゆらと踊っているようなオレンジ色の火をただじっと眺めていた。

「十。焼き芋の時間か?」

僕には総勢十人の姉妹が存在している。

沢山いすぎて覚えるのも困難だったが全員が漢数字を冠した名前を付けられているため慣れたら簡単に覚えられたのだ。

「八っちゃん。仕事は終わったの?」

「うん。気分が悪いから帰るって言ってきた」

「え?気分悪いの?」

「あぁ。もう収まったけどね」

「なんだ。仮病?」

「そんなところ」

はちは社会人の姉である。

言い忘れていたが僕以外の姉弟は全員女性だ。

はじめが産まれて九までずっと女の子が続いたらしい。

そんな中で僕を拾った両親は男の子の跡継ぎが出来たので、もう子供を作ることもないだろうと思っていたようだ。

しかしながら僕を拾ったその日には既にお腹の中に百が宿っていた。

それに気付いたのは数週間後のことだったらしい。

結局百も女の子で両親は少しだけ複雑な気持ちだったらしい。

女系家族と言って差し支えないだろう。

僕と父だけが男性であるが父親が一番の権力を持っていると言っていいだろう。

しかしながら妹である百や姉である九は、ここのところ反抗的であるように思える。

僕は今年で十九歳となり来年で二十歳の年の頃だった。

正確な誕生日は知らない。

拾われた日を誕生日だと言われているが特に文句など無かった。

年の近い姉や年の離れた姉に散々可愛がられて生きてきた為、僕が不幸だったことは一度もない。

「七ちゃんは?一緒じゃないの?」

「七は最近できた男友達とデートだって」

「そっか。今回は上手くいくといいね」

「どうせ失敗する。あいつメンヘラだから」

「メンヘラ好きの男性も居るよ」

「居るだろうけど。あいつはモテない。面が良いだけだから」

「ははっ。そこは高評価なんだ?」

「まぁね。身近な存在だから。高校の時のあいつのモテようを目の当たりにしてきたし」

「八っちゃんだってモテたでしょ?」

「まぁまぁじゃないかな?七は無理だって思って…私で妥協みたいな連中ばかりだったよ」

「そっか。それは…なんとも言えないね」

「でしょ?」

八と焚き火に当たりながら話をしていると家の方から百が芋を大量に持ってやってくる。

どうやら制服から部屋着に着替えたようでラフな格好でこちらに駆け寄ってきた。

「八っちゃん。おかえり。早いね?」

「ん。そのやり取りは終わったよ」

八は百に適当に返事をすると芋を新聞紙に包むのを手伝うようだった。

「ホース引いてくるね」

「ありがとう」

僕は水道からホースを引いてバケツを手に持つともう一度畑へ戻る。

二人は新聞紙を濡らして芋を包むとその上にアルミホイルを巻いた。

出来上がったものをドラム缶の下の口から投入すると後は時間を待つだけだった。

「夕飯の支度もしないといけないから…」

そうして時計を確認した僕に百は首を左右に振って応えた。

「今日はお寿司取るって。お父さんが言っていたよ」

「そうなの?じゃあ焼き芋やめたほうが良いんじゃない?」

「別腹でしょ」

百の意見に八も同意見とばかりに頷いて応えた。

焚き火に当たること数分で顔が熱くなってくる。

家の方から畑に向けて歩いてくる影がいくつか見えてきて僕らはそちらに目を向ける。

「やっぱり焼き芋やってる」

「私達も混ぜて〜」

ろくがこちらに向かってきて焚き火に当たりだした。

「今日も寒かったよね〜。職員全員ブランケット無しじゃあ耐えられなかったぐらいだし」

「お手洗いの時は最悪だった。寒すぎて凍えるかと思ったよ」

二人は同じ職場で働いている。

市の職員で課は別だが同じ建物で仕事をしている。

「お疲れ様。帰っていたんだ?」

二人に視線を向けると彼女らは数回頷いた。

「六が昨日録画した怖い映画一緒に観てってうるさくて。定時帰宅したのに映画に時間を割かれた」

「五だって観たいって言ったじゃん」

「言ったよ?でも全然怖くないし。六がうるさくて内容入らないし。一人で観たかったわ」

「だって!私が一人で観れないでしょうが!」

「どんな逆ギレだよ…」

二人は阿吽の呼吸とでも言うようなやり取りを広げて僕らの笑いを誘った。

は?」

八が姉たちに尋ねると二人は首を左右に振って応える。

「絶賛締切に追われている最中らしいよ」

四は小説家であり一日の殆どを執筆作業に時間を費やしていた。

「それは…地獄だね。キレてなかった?」

八は身震いするような仕草を取ると姉たちに尋ねていた。

「今のところは…さんちゃん達が帰ってこなかったら…十が対応してね?」

「頼むからね!?」

「私も嫌だからね…」

「お姉ちゃん達…お兄ちゃんに任せ過ぎだよ…でも四の対応は私にも無理…」

「分かった。キレだしたらすぐに対応するから」

「「「「助かる」」」」

彼女らの声が重なって僕らはどっと笑いに包まれた。

スマホでタイマーを設定していたのか八のスマホが鳴り響く。

「そろそろ良いでしょ」

焼き芋が出来上がったようで火鉢でアルミホイルに包まれたそれをドラム缶の中から取り出す。

軍手を手に二重に装着するとアルミホイルと新聞紙を剥がしていく。

「出来てるみたい」

中身を彼女らに見せると一斉に歓声のようなものが巻き起こった。

包んでいた新聞紙とアルミホイルと全て剥がすと最初に百に渡した。

「熱いから気をつけて」

「ありがとう。お兄ちゃん」

笑みを向けてくる妹に微笑みで返すと他の女性陣は勝手に包みを剥がして食事を始めていた。

「うまっ…!」

「あつっ…!」

「ふまいっ…!」

「美味しいよ?お兄ちゃんも食べたら?」

「うん。そうするよ」

そうして僕らは夕飯が始まる前に少しだけ腹を満たして焚き火に当たっていた。

日も落ちかけた頃にもう一人の姉が帰宅してくる。

「ただいま〜焼き芋?屁が出るぞ」

ビシッとした制服に身を包んだ高身長の姉は顔に似合いすぎるタバコを咥えてこちらにやってくる。

「三ちゃん!良かった!帰ってきてくれて!」

五が嬉しそうに姉に飛びつく勢いで近づいていく。

「おいおい。何だよ。珍しく歓迎してくれるじゃない」

「四が締切に追われているみたいで…」

僕が姉たちの代わりに答えると三は呆れる様な表情を浮かべる。

「なんだよ。怖いだけかよ。そんな時だけ頼りにしやがって…」

三は大学まで柔道をしていた。

このままいけば代表入り間違いないと言われていた選手だったのだが…。

ある日、とてつもなく大きな怪我を追ってしまい大手術をした。

選手生命が断ち切れるほどの怪我だったのか。

僕らには詳しく話さない三だったが姉はキッパリと柔道を諦めて、そのまま銀行職員へとなったのだ。

家族内の面倒事は大抵が三が解決することになっていた。

もちろん幼い頃から僕は三に柔道を教わっていたので大抵の男性よりは強い自信がある。

けれどいたずらに暴力や技を繰り出すほど僕の性格は捻じ曲がっていない。

「十が居るんだから。恐怖する必要ないだろ?」

三は妹達を眺めてそんな言葉を口にしていた。

「でも…十に四の対応をさせたことがバレると…大姉の二人が…」

八は再び身震いするような仕草を取って最上位に君臨する二人の姉を想像しているようだった。

は帰ってくることもあるだろけど…はじめ姉さんは帰ってこないだろ。忙しい人だし」

「わかんないじゃん。いきなり帰ってくることあるし。しかもそういう時に限って四が締切に追われてて…まさに十に任せている時に帰ってきたりするんだよ?妹のことだから分かる。とか意味分かんないこと言って帰ってくるの。それで私達全員怒られる…十は皆に贔屓されているから」

六は姉に言い訳するように口を開いて縋るような視線を送っていた。

「私の話?」

暗闇からスーツ姿の女性が姿を現して姉たちは全員驚いているようだった。

「大姉…おかえり。仕事は?」

大姉とは一と二の事を示すのだが。

現在眼の前に居るのは二だけだった。

「うん。今日は一の祝だって言うから。早く帰ってきた」

「一姉さんの祝?結婚?」

僕は代表して口を開くと二はニッコリと微笑んで僕の頭を軽く撫でた。

「テレビも観られないほどに働かされているのか?」

二は僕の目を見据えると少しだけ悲しそうな表情を浮かべた。

「テレビを観る習慣が無いだけだよ。働かされているなんて自覚はないよ」

「ワーカホリックになるなよ?休みたい時はしっかりと言うんだぞ?」

「うん。ありがとう。それで…一姉さんの祝って何?」

「あぁ〜。お前らも知らないのか?」

二は妹達を見下すような視線を送っていた。

「私はもちろん知ってるけど」

三は何でも無いように返答して居た。

他の姉たちは首を左右に振るだけの人形のようだった。

「ちゃんとニュースは観なさい。一日中ニュース番組はやっているでしょ?朝でも昼でも夜でも。その内、どれか一番組で良いからしっかりと観なさい。世間の情勢も知らないで平然と生きるんじゃないよ」

大姉と言うだけあって三以外は恐怖政治にでも敷かれているのかというほどに言うことを聞いていた。

「二。あんまりキツくしてやるんじゃない。怯えている妹が居るだろ?」

家の方から父親であるよろずが顔を出すと僕らは少しだけ背筋を伸ばした。

「十。一が帰ってくる。出迎えの準備をしなさい」

「かしこまりました」

そうして僕は家の方へと急いで向かうと最上位の姉を迎える準備をしていた。

だが祝とは何のことだろう。

二と三は理解していたようだが他の姉妹はまるで理解していなかった。

言い忘れていたが二は市議会議員を勤めており、一も同じだったはずだが…。

そんな事を軽く想像していると庭先に高級車が数台現れる。

お抱えの運転手や秘書などを引き連れて一は帰宅する。

運転手や秘書に適当に挨拶をした一は玄関へと向けて歩いてくる。

僕は膝をついて姉の帰りを歓迎する。

「おかえりなさいませ」

「あぁ。ただいま帰った。面を上げな」

「はい。本日もお疲れ様でした」

「疲れてなどいない」

「左様ですか。上着を預かります」

「良い。今日は無礼講で構わない」

「ですが…」

「良い。祝の日だ。堅苦しいのはやめよう。昔のように呼んでくれ」

「………」

一は僕に強くも美しい笑みを向けるとそのまま凛とした立ち姿で廊下を進んでいく。

大広間の引き戸を開けた一を待っていたのは家族だった。

一人の欠員はあるが…。

それに気付いているものは果たしてどれぐらい居るのだろう。

「一ちゃん。国会議員当選おめでとう。頑張ったわね」

母親であるせんが最初に口を開いて父親である萬は煌びやかな花束を渡した。

「これも全て支えてくれる家族のおかげです。ありがとうございます」

一は深く頭を下げるので僕らは恐縮してしまい鸚鵡返しするように頭を下げた。

「十にも言ったが無礼講で頼む」

一は妹たちにそう告げて上座の席にどかっと腰掛けた。

「じゃあ飲める子はお酒を手にして」

母親の音頭で姉たちはお酒を手にした。

僕と百はジュースを持つとそのまま乾杯の音頭を待っていた。

「一ちゃん。お願いして良い?」

「はい。じゃあ今日は集まってくれて感謝する。私の晴れの舞台を祝ってくれてありがとう。四はきっと締切に追われているのだろう。九は未だに反抗期か?十は毎日ご苦労さま。百は十を支えてやってくれ。一人居ないようだがまた恋愛にうつつを抜かしているのだろう。後の妹たちは日々精進すること。乾杯!」

そうして僕らは乾杯をすると一人ずつ一の元へと向かってコップを合わせた。

食事は豪勢なお寿司だった。

僕らはそれらを食べながら少しだけ居心地悪そうにしていたことだろう。

「二はちょっとこの後話がある。来てくれるか?」

「はい」

一は気を利かせたのか席を離れる。

「私は四と部屋に籠もってるから」

三と四はそう言うと部屋へと戻っていく。

「十は今日はもう休んで良いよ。百も一緒に行きな。後は私達がやるから」

五と六が率先して片付けを買って出ていた。

「私は七を迎えに行ってくる」

「そう言えば…七ちゃんは何処行ったの?一ちゃんの祝の日だって言うのに…」

「今まで居なかったのも気付かれないって…あいつは本当に不憫だな」

八はそれだけ言い残すとタクシーを呼んでいるようだった。

「十。九の様子はどうだ?」

「はい。今日もゲームをして過ごしていたようです」

「全く…」

「いえ。お言葉ですが…どうやら九はプロのライセンスを持っているプロゲーマーのようです」

「なんだ…それは?」

「はい。ゲームをして大会で活躍するプレイヤーらしく。スポンサーもついていて協会にプロだと認定されている選手のようです」

「そうなのか…何故奴は黙っている?」

「わかりません。衝突するのを避けているのかと」

「そうか。いつも済まないな。ありがとう」

「いえ。これも修行ですから」

「そう言ってくれるか。じゃあ今日はもう休みなさい」

「はい。失礼します」

自室へと戻る途中に百は僕に問いかける。

「お兄ちゃんは恋愛とかしないの?ずっと修行で辛くない?」

「ん?僕には…」

そんな意味深な言葉を口にしたが頭を振った。

「何でも無い。百は明日も学校だろ?早く寝なさい」

「うん。分かった」

そうして一人の部屋で僕は…。


僕の複雑に絡み合った感情に名前をつけることは一生出来ない。

胸の中で宙ぶらりんになっている気持ちを恋や愛と言ってしまうのは簡単なことだろう。

しかしながらそんな単純なものではない。

僕は一生、胸に秘めた想いを晒すこともなく生き続けるのだ。


僕らの人生に恋愛は必至。

恋愛がなければ生きていけない。

だがこれは恋愛ラブコメであって恋愛ラブコメじゃない。

名もなき感情の正体を見つける題名のない恋物語。


先はわからないが…

きっと僕はずっと無言を貫くのだろう。


心に浮かんでいる気持ちに目を向けながら…

目を背けながら…


名前のない気持ちに蓋をして。

僕の題名のない恋物語はいずれ幕を閉じるのであった。


                完

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ノーラブノーライフ。しかしこれはラブコメであってラブコメではない。では何だというのか?題名のない恋物語 ALC @AliceCarp

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ