紫のタヌキを背負って

くさぶえ 舞子

第1話紫のタヌキを背負って

 私の幼少期は、空前のパンダブーム。連日どこへ行っても、パンダのぬいぐるみは、売り切れていた。当然、私は、毎日親に、ダダをこねる。でもいつも、

「どこ行っても、なかとよ~」

 申し訳なさそうに、母が毎回、なだめる。

そんなとき、団地に住んでいた私は、隣のとなりの岡田さん(仮名)の家がパンダのぬいぐるみが買えたことを知った。すぐさま、ベランダからお邪魔した。そこには、確かに、パンダがあった。私は、感動した。そして、岡田さんのお姉ちゃん達の物だったので、とても羨ましかったが、遊びに来ている間だけは、幼かった私に貸してくれた。そして、パンダを背をわせる振りをして、巧妙に、紫のタヌキを私の背中にくくりつけて、帰らせるのだった。背中にいると思っていた…パ、パンダが、家に帰ると、紫色のタヌキに代わっていた、私は、わんわん泣いた。

 この姿に、さすがに母も困惑したのか、関東に住む、叔母さんにパンダのぬいぐるみを探してくれと、頼んでいた。それが来るまでは、毎日、岡田さんの家に通っていた。

 叔母さんから、パンダが届いた。やっと、みつかった、とても小さなパンダだった。私は、正直、ガッカリした。これじゃ、背負えない。

あれから、約三十年、UFOキャッチャーを暇潰しにのぞいていた。そこにあの時、自分の物として、背負いたかった六十センチの理想のパンダがいた!一回二百円。何度か挑戦して、その日は、諦めて帰った。大人げない、と、自分を納得させていた。

しかし、毎日、毎日、気が気じゃなかった。日曜日、夫の休みに一緒にまた見に行った。もう、三体しか残っていなかった。私は、焦って、十回以上チャレンジした。惜しいところで、転がる、を、繰り返していた。

見かねた夫がなんとか、ゲットしてくれた!

「ありがとう!これでもう、パンダを探さなくてよくなったよ。」

と、私は、大喜びでパンダを抱きしめた。

 次は、ぜひ本物のパンダを和歌山県でみたいと計画中。

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