第17話 救出成功!え?大丈夫!?

俺は体に魔力を纏い、マトラ姉ぇを抱えてスライムの眼前から逃げ出した。


「大丈夫?マトラ姉ぇ。スライムに《縛り付けろバインド》が効いてるうちに、皆を助け——」


「おいあんた……なんだよ、何なんだよ!その悍ましい魔力は!」


「え?マトラ姉ぇ?どう——」


「五月蠅い五月蠅い五月蠅い!その口でぇ!あたいの名前を呼ぶなぁ!」


「なんで?そんなこと言うの?信じてたのに!期待したのに!貴方達なら悪役のこと、受け入れてくれるって……」


ああ、分かっていたさ。口ではいくら「悪役が好き」って言ったって、悪役が好きなだけの一般人の私が、自分を受け入れてくれる、居場所が欲しいことくらい。それがないと、耐えられないことも。でも、悪役なんだから、そんなものがないことも。だから、諦めてたからこそ、皆の優しさが、ただただうれしかったんだ。


そうさ、分かっていたんだ。この平穏が、長くは続かないことくらい。


「ひぃっ……やめろ、やめろよ……いやぁッ!止めて下さい来ないでくださいお願いします……」


でも……さすがにこれは、きついなァ……


もしかしたら、獣人ビーストなら、私を受け入れてくれるかもしれないと思ったんだ。

もしかしたら、誰かが「呪いの子」である私でも、受け入れてくれるかもしれないと思ったんだ。


甘かった。私はその世界のすべてに対しての絶対悪で、私がやった行動すべてが悪事なんだ。

最近、獣人ビースト優しさ偽善に当てられて、意思が鈍ってきていたらしい。駄目だな、芯がぶれている悪役は格好良くない。

私…いや俺は、「この世の不条理に嘆く系悪役」なんだ。


呪いの子サウロンが命ずる。《獣人束縛せよバインド》」


「さようなら、獣人偽善者の皆」


「待て!サウロン!……クソッ!動けん!」


「ス、スライムが!うわあああああ!」


さようなら。そしてありがとう。貴方達のおかげで、俺は真の意味で悪役に成れた気がする。

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