第10話 姉御!え?稽古ですか⁉

 あの後、トラマ姉ぇに街の中を案内してもらった。

 まあ、街とは名ばかりの、ほとんど村のようなところだったけど。

 トラマ姉ぇというのは俺を拾ってくれた獣人ビーストの女性のことだ。

 家族のいない俺の姉代わりということで、そう呼ばされた。じゃあ母ちゃんと呼んだら殴られたな。


 なんとなく名前の字面で予想がつくが、トラマ姉ぇは虎の獣人だ。それもかなり珍しい白虎の獣人で、この町のリーダー的存在らしい。

 なんでそんなえらい奴が町の外まで来ていたのかというと、どうやら邪悪な魔力を感じたかららしい。……俺のせいだな。まだ言うつもりはないが。

 ここではどう振る舞おうか……「人間にも天使にも絶望した子供が、今度は獣人に心を開いた」的なのが良いか?そうしようかな。じゃあ、出来るだけ無邪気に振る舞おうかな


「そういえば、あんたの名前って何さ?」


 そうだ!名前がない。どうしよ、なんかかっこいい悪役っぽい名前を……

 悪役っぽい名前ってなんだ?

 DI〇?ジョ〇カー?Dr.オクト○ス?なんだろ?どんなのが良いんだ?

 そうだな……J・R・R・トールキン氏に敬意を表して、サウロンにしよう

 サウロン……我ながらいいネーミングセンスでは?


「サウロン……俺の名前は、サウロンだ」


「サウロン……良い名前さね」


「なあ、サウロン。何故か分らんが、天使や人間に狙われている以上、戦うすべを学ばなきゃいけないいさね。」


「そこであんたが良ければだが、稽古を付けてやろうと思っt……」


「いいのか!トラマ姉ぇ!!」


 これは良いぞ!獣人の中でも実力者であろうトラマ姉ぇに稽古をつけてもらえて、その上この世界のことも学べる!一石二鳥!一挙両得!渡りに船だ!

 丁度こちらから提案しようとしていた所だ!最高じゃないか!


「ちょ、やめ……やめな!急に肩をつかむなぁっ!揺らすな!」


「うぐぐ……力ッ!こんな細っこいのに強い!」


「はぁ…はぁ……とんでもない目に遭ったさね」


 おっと、高ぶりすぎてしまったな。

 失敬失敬。ごめんねトラマ姉ぇ。


「落ち着きな。明日から稽古を付けてやるから」


「本当⁉約束だからね!」


「分かった分かった……全く、何が嬉しいんだか」


 さあ、理想の悪役に向けて頑張っていこう!


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