第11話「新しい能力?」

俺はアンの視線を…睨んでくるその瞳は

悲しく濡れていた。

俺はアンとの別れ際を思い出そうとした。

思い出さないといけない気がしたから

するとアンともう一人の一年生が前に出てきた。


「先輩!こんにちわっす!」

「あ、うん、こんにちわ」

「自分は「雷晃 奈々香(らいこう ななか)」って言うっす!」

「うん、よろしくってぇ近い近い、顔が近いって!」


元気ッ娘がグイグイ寄ってくる

目をキラキラさせてまるでヒーローにでも

会ったかのように頭1つ分近く背の差がある雷晃は背伸びまでしてもぶつかる勢いだ


「落ち着いて、雷晃」

「奈々香っす!」

「えっと?」

「奈々香っす!!」

「な、奈々香落ち着いてくれ」

「はいっす!」


いったん離れたが今度はくるくると俺の周りをまわりはじめた。

なんだろう?この既視感は?えー、あれだ

散歩に連れていって欲しい犬、それに似てる


「奈々香、その場で待て」

「はいっす!」

「よし、奈々香、お手」

「はいっす!」

「よしよし、良いぞ奈々香、えらいぞぉ」


言うことをちゃんと聞けたので褒めておく

頭をなでなでしておこう。


「はわっ・・・いひひ、良い気持ちっす」

「ねえ、お母さん、この子育てても良い?」

「誰がお母さんだ、・・・河原にでも捨ててこい」

「ひどいっす!万場先輩!鬼っす!」

「うるせえ、つーか雷晃、お前もっと他の奴らに牙むいてなかったか?」

「はいっす?あれ?言われて見ればそうっすね」

「他の奴らもだけどな、輪道、お前の近くにいる奴は何かしら問題点があった奴らだ

クラスの奴らもな」


それを言われたクラスメイトの3人も顔を見合わせて不思議そうな顔をする。


「そう言えばあーし、もっと余裕なかったし」

「あたしも能力を嫌いすぎてギスギスしてた」

「・・・(こくり)」


自己紹介をしたもの達が首をかしげていると動飼が言った


「あのね、今、あたしの中にさPSY値が凄く上がってるの輪道君の手を取ってから」

「説明出来るか?」

「あたし自分の能力が嫌いで無くなればいいのにとか思うくらいだったんだけど

輪道君にすごいって言われたあとで

なんだか心が軽くなった気がしたの

能力は嫌いだったけど猫や犬は嫌いじゃなかったから考えると良かったんだなって

そしたらPSYパワーが輪道君から沸き出るようにあたしの中に流れ込んできたの」

「どんな感じだ?」

「温かくて、ほっとする」


動飼は胸に手を当ててほんのりと頬を染める


「輪道君があたしの中にいるみたい」


それを聞いた凛と麗香先輩の首がもげそうな勢いで俺を見た。

怖いから、お二人とも、俺、知らないから

なんか勝手に出ていっただけだから

だからジリジリと俺を応接室の端に追いやらないでくださいませんか?


「あのー、凛と麗香先輩?近いです。

あの、お二人して何を、あっ、ちょっ、

やめてっなんで制服を脱がそうと?!」

「泥棒猫達に奪われないうちに既成事実をと」

「ご安心下さいませ、わたくしと生徒会長とで貰って差し上げますの」

「アウト!アウトだからぁ!助けてぇ!」


アリスと番長の手に寄って救助された俺は

二人の後ろに隠れつつこのPSY値が上がったと言う現象について番長が考えを言った


「まあ、オレの予想にしか過ぎないんだが

《シンクロナイズ》だろうな」

「それって《同調現象》って言われてる物だよね?万場君」

「そうだ、伏義野、委員長が輪道のPSYパワーを内側に感じ取っている事が何よりだが

ずっとこの一週間何かおかしいと感じなかったか?」

「・・・・・輪道君と出会ってから能力に

ムラがあったのがなくなってる?」

「そうだ、斉狐の奴にオレのここ数日のPSY値をこの間測らせたんだが少なからず倍近くPSY値が増してやがった」

「ええ!?それじゃあ僕も?」

「増えてるだろうな、つーかクラスの連中も

輪道の近くに居る奴は増えてるはずだ」

「うーん、確かにそうかも、皆落ち着いてきてたもんね」

「ああ、それに学舎が一緒とはいえ上級生と下級生にまで落ち着いてきてやがる」

「輪道君が居てくれるだけで学園全体が

影響を与えてくれているって事?」

「そうだな、これだけの影響を与えているからな輪道の能力は予知だけじゃなかったって事だ」

「多重能力者?」

「ああ、少なくとも同調して能力値を引き上げる、《シンクロナイズ》《同調能力》と

周りに影響を与えてPSY値の上昇させる

《バッファー》《強化能力》

あとは精神的沈静化と言えば良いのか?」

「と、言うよりは精神調和?かな?」

「確かにな、つーことは

《ハーモナイザー》《調和能力者》って訳だ」

「希少能力のオンパレードだね」


番長とアリスが何かヤバい話をしているのだけど、何?俺は居るだけで皆に何か影響を与えてるの?

俺が不安そうにしているとそれに気が付いた番長はなんて事無さげに言う


「不安そうにすんな、輪道が与える影響は

むしろ俺達にとっても良い事だ

能力の不安定さが無くなるなら周りに被害が出なくなる

気性が荒い奴らが落ち着いていけば

そいつらは今まで能力に引っ張られて

そう言う性格になっていたって事だ

本来の性格になるんだ、こいつはすげー助かるんだよ、救われるんだよ

オレだって能力が凶悪だからな理性的に

行動するのが難しい時だってある

能力を使ったあとは特にだ

それが輪道、お前のお陰でそれが無くなる

人間で居られるんだ、サンキュな。」

「番長・・・俺こそ、ありがとう」


俺と番長は向かい合い笑いあった。

変な影響を与えてなくて良かったと思った。


何かボソリと「輪道君カケル万場君尊くて萌え、推せる」と言う声が符覽先輩が言っていたが無視だ。




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