雪の涙

明鏡止水

第1話

〈窓を開けたら、涙よりも先に雪が降った〉


〈あのこがいなくなってから、ずっとこの眼からは雪の涙が降っている……〉


〈側溝で発見された子、川で発見された子、トイレで発見された子、公園で発見された子、押し入れで発見された子、コインロッカーで発見された子〉


〈私の元にみんな来いなんて言えない。私がみんな産むから、とは言えない。私が生きているうちに全てを見つけるとは言えない。ただ辛いニュースを見ただけ〉


なぜ、赤ちゃんにひどいこと、するの?

動画に撮るの?


私がどのニュースの何の見出しを見たとしても。辛くて薬の副作用なのか、昔レジでバーコードスキャナーをフリフリしていた職業病なのか、右手が震える。


私は小説を書かなくなりました。


明日は近くの県が雪が降るかもしれないらしいです。


むかし。

雪を見ようとして、窓を開けた時。

粉雪が眼に入って、冷たくて痛くて辛かったことがあります。


世界の痛みはこんな物じゃ無い。


それでも、幸福な私は、その時。

きつねが出てくる童話。

「てぶくろをかいに」を思い出すのです。

巣穴から出た小狐が一面の雪の銀世界の光に目をやられるのです。


去年。

嫌いな人から新しい言葉を教えてもらいました。

「生み捨て」です。

初めて付き合って別れた男は最低な男だった、と思うと気が楽になります。

情事やディープキスやその他の記憶を思い出して、触られたことが嫌になり、自分を嫌いになりそうな時は。

あいつは、妖怪あかなめ、だったのだ。


と思うと。自然と自分の股を汚いと思わなくなりました。

妖怪あかなめ自体は良い印象を持っているので、中和されるのです。妖怪は好きです。

でもあいつは嫌いです。

それでいい。


どうして、こんなお話を書いているんでしょう。


この間、今年初めての雪を見ました。

とても好きです。

電車の到着時刻や発車時刻が乱れました。


早めにいつも出ているので問題ありません。


温かい、停車した車内から、車窓から、私が見たものはなんだったのか。


一年です。


去年、雪を見た記憶がない。だから、これは、私にとっての久しぶりの初雪。


一年も、二年も尊い、眺めることが叶った景色。


雪の涙を流す明鏡止水。


あれはいつのことだったか。


世の中、望まぬ妊娠をする女の子がいます。


子供で心は大人なのに、そのまま成長していくと、いつのまにか幼い、拙いオトナとして蔑視される。


肉親に襲われる方もいます。

昔ニュースで見ました。


今もどこかで女の子が泣いている。

性的な暴力に怯えている誰かがいる。


戦争の蹂躙の歴史なんて辛くて読めません。

ましてや、赤子にまで危険が迫る。


本当なら辛い。


本当なんだろうか?


私は……。


いつの頃からか、婦女暴行という言葉は使われなくなってきました。


男の子だって被害に遭います。


フラッシュバックさせてしまうのでしょうか。

テレビでもこれは本当に私は思うのですが。ドラマや映画に映像で出てこなくなった。


年齢指定のある物や昔の作品は別ですが。


それが心からテレビ局の人の「心」に、あるいは視聴者の「声」に悲しみと辛さと虚しさと、怒りと、恐怖と狂気の事実の表れなのだと思います。


私は取り立てて美人でも可愛くも、愛嬌のある女でも、金持ちでもありません。


しかし、夜道を歩く時は緊張します。


世の中、好きで愛し合う。ゾッコンだから推してるホストと、ネットで出会った人と生でやる。


そんな女の子もいるかもしれません。危ない目に遭った子、被災地や昼間の道でも怪しい人につけられた人もいるかもしれません。


透明なゆりかごという漫画や、心霊探偵八雲シリーズを一時期読んでいました。読んでいた時は、辛さがわかりませんでした。


世の中、こんな悲しいことがあるのか。

愛する誰かが他者に虐げられる。

これから、なんといって、育てていけば良い。

赤子でも、子供でも、大人でも。


心と体を虐待されることは耐えられないから心が折れて曲がって死ぬ。


時には魂が、殺されるから。


今を生きる人は正義の人だ。

これを読んだ人は生きているだけで世界の巡視ができる。

助けを呼べる。

戦わなくていい。

死ぬなとは言わない。

何が正しいかわからなくても、自分を亡くすな。

失くすな。

消えたくてもいい。

消してしまえ。

明日が来るまで、一緒に深夜0時をむかえよう。


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雪の涙 明鏡止水 @miuraharuma30

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