ゾンビ&パニック



「はぁなぁれぇろぉぉ……!オラァッ……!」


「あ”ぁ”ーーー…………」



渾身の力を振り絞り真弘は自身に取り付いていた人ならざる人型を蹴り飛ばした。勢いよく蹴り飛ばされた人型は棚にぶつかり、衝撃を受けた棚は大きな音と共にその人型を下敷きにして倒れた。棚の下敷きとなった人型だが、まだ動けるようで棚の下から這い出そうともがいている。とりあえず偶然ではあるが、これで暫くは動きを封じることが出来た。



「はぁ……はぁ……。噛まれた……と、思ったけど……アレ?無事?」



人型に取り付かれた際に真弘は左肩を噛まれた。そのはずだったのだが真弘の肩は特になんの怪我もなかった。不思議に思いつつもその肩を抑えながら真弘は棚の下で藻掻く人型を観察する。



「これってやっぱりアレですよねー……」



恐らくは女子だとは思うが、とても女子とは形容したくないソレ。


青紫色に変色した肌、白目の部分は黒く染まり、瞳孔は赤いバッキバキの瞳、歯茎を剥き出しにして大口を開いて「あ”ぁー」とか「う”ぅー」とか呻き声を出しながら盛大にヨダレを垂らしている。


ソレはどこからどう見ても、世間一般でゾンビと呼ばれるであろう姿をしていた。



「どうしてこうなった……」



真弘は意味わかんないとばかりに呟いた。





異世界から無事に元世界に帰還した真弘ではあったが、元世界の方はまったく無事ではなかった。


帰還した真弘を待ち受けていたのは荒廃した元世界だったのである。


真弘が異世界ヒモ生活をおくっている間に、元世界の某所にある怪しい研究施設で事故が起きた。


その結果、そこで研究開発が行われていた人をゾンビに変えるゾンビウィルスが施設外に漏れだし、爆発的な感染力でもって瞬く間にゾンビウィルスが全世界に広がってしまったのである。


人類の99%がゾンビ化し、文明社会は完全に崩壊。残されたひと握りの人類が生き残りをかけて奮闘する終末世界になっていた。


そんなことを知るはずもない異世界帰りの呑気な真弘くん。


自宅の自室に帰還。とりあえず両親を探すが見つからず。なんか家の中が荒れてる気がするとか思っていたら玄関の方で物音がするのに気がつく。


幼なじみが晩飯作りにでもやってきてくれたのかな?なんて見当違いのことを思いながら玄関を開けた。


そうしたらお外はゾンビパニックしてて、ゾンビとコンニチワしてしまった。


生者と見れば襲いかかってくるのがゾンビ。生ものの真弘は当然ゾンビに襲われ、紆余曲折の末に冒頭に行き着いたのだった。



「どうしたもんですかな」



棚の下で身動きが取れずに藻掻くゾンビを前にして真弘は途方に暮れた。


やっぱりゾンビだよなー。襲われたし意思疎通出来そうにないしゾンビだよなー。とりあえず頭潰しとけばいいかな?また襲われたくないしなー。でも女の子っぽいんだよなー。それにゾンビとはいえ人っぽいのを殺したくないなー。いやもう死んでるんだろうけどもゾンビだし。抵抗あるよなー。


そんなこんなの脳内会議を経て、真弘は女の子ゾンビを殺さずに紐で縛って拘束、無力化することに決めた。やはりゾンビとは言え、人間の頭をかち割るのがキツかったからである。


暴れるゾンビに悪戦苦闘しながらも真弘はなんとか女の子ゾンビを拘束することに成功する。


改めて女の子ゾンビを観察してみる。


変色してゾンビカラーではあるが、なかなか容姿は整っていることに気がつく。おそらく生前は相当な美女だったと思われる。


スタイルはかなり良い。ムチムチしてる。縛ってあるからそのムチムチに縄がくい込んでとってもエッチだ。ゾンビカラーだけど。


なかなかのオッパイにケツ。おっぱいが強調されるように縄で縛ったので見応えがある。辛抱たまらずちょっとおっぱい揉んでみた。柔らかそうなのに思いのほか硬かった。これもしかして死後硬直的なヤツ?やはりゾンビか……。



「これ……下はどうなってんのかな……」



俄然興味が沸いた。というか硬いがおっぱいはおっぱい。おっぱい揉んでたらムラムラしてきた真弘。



ゴクリッ……!



異世界では長らく禁欲生活を送ってきた真弘である。ルーリスリアは世話を焼いてくれたがえっちなことはまったく無かった。真弘としても相手は王女だし、あとあと面倒臭そうなのでルーリスリア相手にえっちなことをしようとは思わなかった。真弘が狙うのはいつもぼっち系の女子である。真弘はそこら辺の打算とずる賢さがあるクズである。


ともあれ真弘の抑え込まれていた性欲が、おそらくなにをしても多分大丈夫な女の子(ゾンビ)を前にしてコンニチワしてきた。



「相手はゾンビだし……ちょっとだけ……ちょっとだけ……」








  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る