第3話 孤児院での祝賀と出発

 その夜、孤児院では俺と彼女の送別会が行われた。そうそう、彼女の名前はサラというらしい。

 

 そしてこの孤児院は主に10年前に終わった戦争による戦争孤児を受け入れてるようだ。しかし孤児院の前には定期的に子供が捨てられる。全く、酷い話だ。と思っていると、ここら一帯は領主からの重税によって、育てたくても育てられないのだ。とサラがどこか寂しそうにに言っていた。彼女も、捨てられた立場らしい。


子供達の中でも、名前が付けられている子もいれば名前のない子供もいる。

視力が全くと言っていいほどない子や腕が片方ない子、どんな子供でも受け入れ

るのがモットーなのだ、と自慢げにサラが言っていた。


そして、俺の疑問点であるスキルとは何か、という質問に関して、サラは至極丁寧に教えてくれた。随分不思議そうな目で見られたが。

 その説明によると、

 スキルとは、人が生まれながらにしてもつ才能のような者であり、スキルは15歳の誕生日に鑑定スキルを所持している神官によって伝えられ、そこでスキルを自覚したことにより初めて使えるようになる。生まれた時から持っている宝箱の、鍵を与えられるように。とサラがドヤ顔で言っていた。

 おそらく誰かの受け売りだろう。ただ稀に、生まれた時からスキルを使える者も、いるとかいないとか。


15歳で伝える理由を聞いてみると、


「えーとね、以前は生まれた時に親に伝えていたらしいんだけど、壊滅のスキルを得た子が、自分の力を制御できずに人をたくさん殺しちゃったんだって。そこからスキルを制御できる年齢が研究されだして、今の15歳で落ち着いたらしい

よ。」


 ママの受け入りだけど!と舌を出して言うサラ。すんごい可愛いねキミ。


 そうしてスキルを得た子供たちは一律に王都にある学園に入学することになる

らしい。そこで五年間様々なことを学び、旅立っていく。卒業後の進路は完全に

自由で、そのまま故郷に帰るのもよし、王都で就職先を見つけるのもよし。冒険

者なんて職業もあるらしい。夢が広がるね。


 ところで、学園で思い出したが、前世の数少ない高校時代からの友達は元気だ

ろうか。


ニートになってから、彼らとは連絡をほとんどとっていなかった。全員就職し家庭を築いていると、風の噂で聞いたことがある。こんなことになるなら、ちょっとでも会っとけばよかったなぁ、、、。


 そして肝心のスキルのことだが、俺のスキルは微動ジョルトらしい。

文字通りものをわずかに振動させたり、揺れてるものを止めたりできるらしい。

しかし、揺らすのも止めるのもヨギボーサイズが限界だ。正直、ハズレの部類。

 

 一方サラは「氷化」と言うスキルらしい。明るい彼女とは正反対だが、これがまた強く、ソファ大の物を凍らせることができる。まぁ孤児院にソファなんてものはないので、完全に俺の目測だが。


そしてここが一番重要で、

使えば使うほど、そして魔物と呼ばれる魔素を吸収した動物を倒せば倒すほど、強くなっていくようだ。王道だね。


 そして送別会も終わり、翌日。ついに旅立つ時がやってきた。


 孤児院にいる子供三十人ほどと、ママがやってきて口々に別れの言葉を告げる。


「ママ゛、ぁあ゛りがとう゛ぅぅわたじがんばどぅから、、、!絶対、叶えて見せるから、、!!!」


 そう言いながら泣くサラ。も本来は感動するんだろうけど、正直


つい先日彼らと出会ったは涙ひとつ湧いてこない。いやでも正直、サラのはおじさんもらい泣きしそうになっちゃった。


 馬車が来て、いざ旅立ちだとなったとき前髪で目が覆われている子が俺の方へ

小走りで近づいてきた。


「、、、これ、忘れてる。書いてた、でしょ。」


 そういってこちらに向けた手には、古ぼけたノートが。

表紙をよく観察してみてみると、どうやらペイン少年の日記帳らしい。


「ありがとな。危うく忘れるところだった。」


そうやってその子の髪をぐしゃぐしゃに撫でると、前髪で隠れた目の部分から涙

が溢れ出てきた。


「俺゛も、来年だから!ずぐおい゛つぐがら!!」


 俺は何も言わず親指をたて、馬車に乗り込んだ。


俺たちの旅はここから始まる。そんななんの根拠もないことを、信じて疑わなかった。



 

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