転生氷魔法使いと願いの果て

28話 騎士部ー後編ー

〜前回のあらすじ〜

　【ウィザード・セクト】の候補者が集う騎士（ナイト）部の部室を訪れた私たち。だが、部室は編入試験の際に使用した森の奥底にある教会が、なんと部室だったということを知り、中に入るとルーン寮の監督生『レオン・ケイン』に何故か気に入られたりと色々あって、部長の『ルーカス・グレイナ』から活動内容や部員の紹介をされることとなったのであった。

＊

　私ルナは、今騎士（ナイト）部の部室で、部員の紹介を受けていた。アノールとセドの間に座り、出された紅茶を静かにゆっくりと飲みながら。

「まず、僕とレオンの紹介は終えていますので次はユノ。お願いします」

「……うん。は、初めまして。私はユノ。ユノ・カトレア、です。ネオと同じ学年。り、リオール寮二年生」

　ユノ・カトレアと名乗った紫色のボブヘアの小柄な女子生徒が椅子から立ち上がり、ぽつぽつと自己紹介をし始めた。カトレアってもしかしてと思った私はユノ先輩の問いかけた。

「もしかして、エレノア先輩の妹様でしょうか？」

　エレノアと先輩の名前を呼ぶと、ユノ先輩は肩をビクッと震わせた。聞いちゃダメだったのかもしれないと悟った私は、すぐさま頭を下げて謝った。

「申し訳ございませんでした！！」

「い、いえ大丈夫……」

「ユノはエレノアの妹。あまりエレノアの話を彼女の前で話すのは禁句ですので、分かってくださいますか？」

　ルーカス部長にダメ出しをされた私は素直に頷くと『ありがとうございます』と微笑まれた。

「こ、固有魔法は【風魔法（ウィンド）】です」

　ユノ先輩は俯きながら自分の固有魔法を話し終えると、静かに椅子に座った。

「ユノ、紹介ありがとうございます。それではセド・レナードとルナ・マーティンもお願いしますね」

　ルーカス部長は私たちの方を向き、ティーカップに口をつけた。私とセドは互いに顔を見合わせ、椅子から立ち上がった。

「セド・レナードだ。固有魔法は【砂魔法（サンディ）】」

「もう少しなんか言ったらどうなのよ……。初めまして、私はルナ・マーティンと申します。固有魔法は【氷魔法（アイス）】です！　よろしくお願いします！」

　お辞儀をすると、ルーカス部長が『うん、ありがとう。もう座って大丈夫ですよ二人とも』と言ってくれたため、再び椅子に座った。

「さて、皆の紹介が終わったところで、今日の活動内容と今後の予定についてお知らせするね。この騎士（ナイト）部は、一ヶ月に二回だけの活動となっている。今月はもうこれで二回目だから次の活動日は来月となる。活動内容としては、自由に話したり、こうして休める場としての役割を行うというところかな？　【ウィザード・セクト】になるためには、試験を受けなければならない。試験を受けるという精神面のダメージなどを受けると体調を崩したり、夢をあきらめたくなる場面も出てくると思うんだ。だから、敢えて試験を受ける候補者はこの部活の時だけ、自由に気を休めてほしい。そんな校長の願いをかなえた部活なんだ」

　校長……。そこまで考えて。

「互いを知っておけば、試験の時に何かしら攻略ヒントになると僕は思っている。だから、部活の時には手合わせをしてもいいルールにしたんだ。校長はもちろん許可を出してくれた。手合わせの時は僕が出席しているときだけど」

「そうなんですね。それで今日は？」

「自由にして構わないですよ。僕がいるので手合わせをしてもいい」

　ルーカス部長はまたティーカップに口をつけた。部長の前の席にいるレオン先輩は真っ先に私の顔を見てきた。

「手合わせしようぜ！　ルナ・マーティン！！」

「えぇー。今日はゆっくりしたいです！」

　レオン先輩の誘いを断ると、両腕を頭の後ろに組んで『つまんねぇ～』と呟いた。すると、私の右横にいたセドが椅子から立ち上がり、砂で出来た杖を構えた。

「ケイン先輩。俺と手合わせしないか？」

　セドに誘われたレオン先輩は最初目を見開いて驚いていたが、雷で出来た杖を取り出し、ニヤッと口元を緩めた。

「いいぜ！　そんなら、始めようぜ！！」

　レオン先輩がそう言うと、椅子とテーブルが消えた。

「こちらには魔法が飛んでこないように結界が張られていますから安心してください。手合わせの際は教会ごとフィールドになるんです。結界を貼れるのは僕か校長だけなので」

「だから部長がいないときは手合わせできないのはその理由なんですね！」

「えぇ」

　フィールドになるなんて意外と物騒なのかもしれないなこの部活は。とそんなことを思いながら、セドとレオン先輩の手合わせと名のバトルが始まったのであった。