26話 ネオ・フィーネとの邂逅

 次の日の放課後、私は【ウィザード・セクト】の候補者が集まった騎士ナイト部の部室に行こうと、廊下を歩いているとクラスメイトのセド・レナードと鉢合わせになり、思わず『セド!?』と声をかけた。するとセドは鋭い目つきで『よぉ』と返事を返した。


「相変わらず目つきが悪い」

「ありがとよ」

「褒めてないよ? それよりも珍しく一人だね」


 毎日のようにレオナと歩いているのに。いや、レオナが勝手にセドにくっついているだけか?


「あぁ。レオナは今日マリアンヌとお菓子作りするって。俺は用事があるからレオナを置いてきたところだ」

「用事?」


 首を傾げると、セドは『部活を見にな』と答えてえくれた。私も部活を見に行くところだと伝えると、『そうか、なんなら一緒に行くか』と誘われてしまった。


「いいけど、セドはどの部活を見に行く予定だったの?」

騎士ナイト部」


 私は耳を疑った。セドも同じ部活を見に行くのかと。もう一度セドに問い詰めると、私の背後からぺしっと厚みのあるもので叩かれた。頭を擦りながら後ろを振り向くと、そこにはアノールとオレンジ色のニュアンスパーマ(くせ毛)が特徴な男子生徒がいた。黒いローブに白いワイシャツにズボン……ということはアデル寮の生徒? 


「あ、アノール」

「アノー」

「ア」


 こいつ、先輩をつけろという謎の圧力をかけてきやがる。私の方が先輩なのに年上なのに!!(←キャラクター設定①を参考)


「はぁ……アノール

「なんだ」


 先輩と呼ぶと張り詰めた空気が一瞬にてふんわりと和らいだ。しかも、周りに花を咲かせているようにも見える。嬉しいのか?


「アノールさん! この子があのルナ・マーティンですか?」

「そうだが。紹介するこいつは『ネオ・フィーネ』だ」

「初めましてだね? 俺はネオ! アノールさんの後輩だよ!」


 ネオと名乗ったオレンジの人は私の目線を合わせるように腰を少し下げ、ニコッと純粋な笑顔を向けた。すると、セドは何故か私の左肩をグイッと引っ張り、隠すようにセドが前に出た。鋭い目つきで、腰を下げていたネオ先輩を見下ろし、自分の名前を名乗った。


「俺はセド・レナードだ。フィーネ先輩とマーティン先輩は何の御用だ」

「セド、敬語になってないよ? 警戒心強すぎない? アノール……先輩は私の親戚だし、そんなに警戒しなくたって」


 セドを落ち着かせようとした瞬間、セドに両肩をグッと鷲掴まれ、顔を近づけてきた。


「近かっ!?」

「親戚だろうが先輩だろうが関係ない。貴様は女性なのだと少しは気づけ。馬鹿が」

「馬鹿っていうな!!」


 セドにキレると、そこから私とセドの口喧嘩が始まろうとした。すると、ネオ先輩が私たちの間に入り、両手を腰に当てて『喧嘩はメッだぞ!』と言って喧嘩を未遂で止めた。


「ッチ」

「ご、ごめんなさい」

「謝れて偉いねルナちゃんは」


 ネオ先輩はそう言うと、私の頭を撫でようと手を伸ばした瞬間、先輩はアノールに丸めたノートで頭を叩かれた。


「イテッ」

に触るな。後輩でもなそれは許せん」


 いや、妹じゃないし……。ツッコむのめんどくさいから放っておこ。


「はーい。それで、ルナちゃんとセド君はどこに行くつもりだったのかな?」

騎士ナイト部だが」

「僕たちの部活を見学かい!?」


 ネオ先輩は嬉しそうに目を輝かせた。もしかして、ネオ先輩は騎士ナイト部だったりする?


「先輩もなのか?」


 セドはネオ先輩に問うと、上下に首を動かし頷いた。


「俺も【ウィザード・セクト】の候補者なんだ! そういえばルナちゃんの資料見させてもらったけど、氷使いなんだね! セド君は砂使い。面白い組み合わせだね!」

「ほぉ? 先輩たちの固有魔法はなんだ」

「俺はその部活には入っていないが、答えよう。俺の固有魔法は【毒魔法ポイズン】だ」


 そういえばそうだったな~。敵に回すと厄介かも。


「ネオ先輩は?」


 先輩に問いかけると、私の顔を見て答えた。


「俺はね~音魔法ノーツ騎士ナイト部の副部長でもあるから、分からないことがあれば、いつでも聞いて!」


 ネオ先輩の言葉に耳を疑った私とセドは、互いに顔を見合わせてしまった。


「だってよ」

「しかも副部長かよ」

「何か言ったかな?」


 黒いオーラが見えるのを遮断し、私はアノールのもとに駆け寄り後ろに隠れた。セドは冷や汗をかきながらそっぽを向いた。


「なんでもねぇです」

「そうかいそうかい! 部活に顔を出すんだったら俺も付いていこう! 丁度行くつもりだったし」

「あ、あの。ネオ先輩」


 アノールの後ろから顔を出し、ネオ先輩に声をかけた。すると、先ほどの黒いオーラは消え、微笑まれた。


「何かな?」

「アノール……先輩も連れて行っても?」


 私はアノールをちらっと見ると、眼鏡レンズの奥にある瞳と交わった。暫く互いに見つめ合うと、アノールは上を向いて眼鏡の位置を直しながら深いため息をついた。


「はぁぁぁぁぁぁ……部活は入っているからな。まぁ、お前の初めてのお願い事だ。いいだろうネオ」

「先輩のためならば!!」

「やった!!」


 ネオ先輩から了承を貰い、アノールも連れて行けるようになった。


「いい加減行くぞ」


 セドは謎の苛立ちのある背中を私たちに向け、部室へと向かって歩き出してしまった。私たちも、セドを追いかけるように歩き始めたのであった。

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