第2話 変化

ビー

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街全体にブザーが鳴り響く。同時に空から黒煙が降ってくる。敵の襲来だ。街の各所に設置してある巨大モニターに大きく数字が表示された。

(14体か。平均くらいだな。)

どうやら私の管轄である第3区には大型の敵は来なかったらしい。第2区の方ではビルを越えて敵の頭が見えていた。

(アレンなら大丈夫か。)

一瞬2区の守護者のことを考えるが、彼なら心配はいらないだろうと気持ちを切り替え、モニターに表示された敵の位置で1番近い所へ向かった。


(狼と蛇か。)

敵位置へ向かうと敵が2体いた。

モニターに表示されている数は大まかなものであり、確定では無い。敵は見ればすぐわかる。全身黒く、影が白いのだ。それに加え、目も白い。4足型は攻撃的なものが多く、蛇は回復力が高い。最も戦闘力があるのは2足型だ。見たことはないが。


狼が襲いかかってくるが、噛みつかれる前に凍らせて砕く。体の6割を削れば敵は黒煙になり空へ帰ってゆく。

(あとは蛇だけ。)

手をかざし凍らせようとしたその時、

「!!」

死角から狼が襲いかかってきた。

(もう1体いたのか。)

気配は2つだと思ったが3つだったらしい。

(危なかった。成長されるとこだった。)

血を飲まれてしまうと敵は成長して大きくなる。再び、狼を凍らせて砕いた。

(油断しないでいこう。)

一応体には薄く氷を張ってはいるが、割られる可能性もあるため気は抜けない。


もう一度氷を放とうとした時、

(また!?)

狼だ。

(おかしい。気配は4つもなかった。)

敵は近づかない限り移動してくることはほぼない。

(あれ?さっきの狼の氷は?)

周りを見てみるが氷は見当たらない。

蛇が尻尾の氷を溶かしているだけだ。

(気配は…やっぱり2つ。多分あの狼ってさっきのやつだよね。)

気配を探るが、数は変わらない。何か見落としているのだろうか。軽く混乱していると、蛇が驚きの行動を取った。狼に黒い息を吹きかけたのだ。

(え、なにあれ。)

呆然としているうちに、削がれていた狼の毛皮が元に戻った。

(…回復された?)

おかしいのはそこだけじゃない。

(蛇が狼を回復した?)

敵は連携することはない。個々で襲ってくるだけのはずだ。少なくとも今まではそうだった。

(考えたくはないけど…)

血を飲まれていないため、成長したとは考えられない。とすると、進化とでもいうのだろうか。

(今まで瞬殺しすぎて連携してるなんて気づかなかった…。研究院はこのこと知ってるのかな?)

このことを知らなければ非常にまずい事態になりかねない。


守護者も敵同様に連携はほぼ取らない。敵が単純な行動しか取らないと思っていることが理由だ。今後はそこも考え直すべきかもしれない。

(2体でよかった。もし囲まれでもしたら…最悪だった。)


(とりあえず片付けて研究院に行ってみよう。)

連携して戦ってくるとはいえ、2体だ。

やることは簡単。蛇の方から倒せばいい。

(蛇が複数の時の戦い方も考えないと。)

再びターゲットを変え、敵に挑むのだった。


――この些細な変化が災厄の始まりだった。

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