ネオストーン

紫熊雷

第1話 守護者の日常

着いた時にはもう敵は片付いていた。

(このエリアは私の管轄なのに申し訳ないな。)

そう思いながら目の前の男性に話しかける。

「もう終わったみたいだね。街の被害は?」

男性〈アレン〉は振り返りもせず答える。

「建物が少し壊れたくらいだな。怪我人はー、多分いないだろ。」

雑だ。しかしアレンにとっては管轄外のエリアであるため、被害など気にしない。

「そう。管轄外なのに来てくれてありがとう。」

それでも来てくれただけ有難かった。

「暇だったからな。」

そう言って彼は去って行った。


被害も気にして欲しいが彼がいなければもっと被害が出ていただろう。

(とりあえず、街の片付けやりますか。

それと怪我人がいないか確認しないと。)


アレンの言った通り、街の被害はほとんどなく、怪我人もいないようだ。

(戦闘区で戦ってくれたのはすごい助かる…)

戦闘区は住民や建物がほぼないため、足場が崩れなければ問題ない。最も、私の戦い方だと足場は作れるからどうでもいいのだけれど、今回のように別の守護者が戦う時もあるため整備しておかないといけない。他にやることといえば、街の方で僅かに出た瓦礫の掃除と建物の修理だけでよさそうだ。


瓦礫の片付けは既に始まっていた。

片付けていたのは整備士と守護者見習いたちだった。

「No.3!ご苦労さまです!」

1人の守護者見習いが私を見つけ声をかけてくれた。周りの人達も私の存在に気づき、挨拶をしてくれる。

「皆さんもご苦労さまです。建物、直しちゃいますね。」

挨拶を返しながら建物の方へ向かう。

建物の修理は簡単だ。崩れたところを氷で作り直すだけだ。これは私が氷の属性を持っているからできることだ。整備士のほとんども氷の属性を持っている人が多い。


一通り建物を直したところで瓦礫の片付けも終わっていた。

ゴーン ゴーン

戦闘終了の鐘の音が聞こえた。

敵は決まった時間にやって来るため、ある程度片付けてしまえば次の時刻までは街は安全と言ってもいいくらいだ。

(管轄内に敵はいないみたいだし、合図出さなきゃ。)

手のひらを上に向け、電気で作った黄色いレーザーを放つ。私のもう1つの属性だ。

他のエリアでも様々な色のレーザーが打ち上げられる。全て戦闘終了の合図だ。手を下ろし、整備士と守護者見習い達に声をかけた。

「午前はこれで終わりです。午後にまたよろしくお願いします。」

『はい、お疲れ様です!』

守護者見習いたちの揃った声で返される。

(すごいピッタリ…そんな訓練もされてるのかな?)

守護者になる前のことを思い出しながら自分の部屋へ帰った。

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