黙っていた方が丸く収まる話

白夏緑自

第1話

 隠していると罪になる物事はたくさんある。いや、犯罪的な意味ではなくて、なんと言うか人道的な意味の話だ。

 例えば、友達に借りた漫画にジュースをぶちまけて、そのまま返したら怒られるだろう。正直に言えば、新品を要求されるかもしれないが友情にヒビまで入らないかもしれない。

 

 例えば、キャバクラへ行って、あとで香水の匂いや貰った名刺を見られたりでもしたら、恋人や奥さんに怒られるかもしれない。僕たちにしてみれば、キャバクラや風俗に行ったぐらいでお咎めを受ける理屈が理解できないが、世の女性たちのほとんどは他の女性に鼻の下を伸ばすことが気に食わないらしい。

 しかし、いくら恋人か奥さんがあなたをとても愛していても、仕事にもプライベートの付き合いが発生することは理解してくれるだろう。だから、入店する前に電話やLINEの一本でも入れておけば、面倒くさい事態にはなりにくい。あなたがアフターケアもできる、“できた”パートナーなら帰りのコンビニでケーキでも買っていけば完璧かもしれない。

 僕はそうしている。


 とにかく、この世には隠していることで余計な面倒になる事態は多い。正直に言ってしまった方が、一時的には面倒かもしれないが終わるころにはこれ以上ないくらい丸く収まっているはずだ。


 それでは、さて。

 君に貰ったぬいぐるみの中から盗聴器を見つけたなんて、教えてあげるべきだろうか。

 僕は構わない。聞かれてもやましいことなんて一つもないし、聞かれたくない音声は全てイヤホンで聞いているから。

 例えば、君の家のコンセントに仕掛けた盗聴器が録音した音声、とか。

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