ここだけの秘密ですが……

くらんく

第1話

「ここだけの秘密ですが、私は先輩の事が好きです」


 卒業式の日、彼女に言われた。


「どうしてもっと早くに言ってくれなかったの?」


 告白の返答が拒絶ではなかったことに安堵して、彼女は微笑んで答える。


「だって、断られたら顔を合わせ辛いじゃないですか」


 それもそうか。同じ部活の彼女とは毎日のように会っていた。


「でも、今日で卒業だよ。学校で会えなくなっちゃう」


 受験を終えて部活に顔を出していたのも今日で終わりだから。


「学校以外でもいいじゃないですか」


 ふむ、確かにそうか。


「じゃあ今度一緒に映画館に行こう」


 見たかったインド映画があるんだ。


「それじゃあデートじゃないですか!」


 どうやらお気に召さないらしい。


「何がご不満で?」


 彼女は恥ずかしそうにごにょごにょと小声で答える。


「私が先輩を好きなのはここだけの秘密なんです」


 ここだけの秘密。つまり他の人には知られたくないという事。


「お忍びデートがご所望?」


 彼女は首をぶんぶんと縦に振る。


「でもそんな事する必要は無いよ思うよ」


 彼女は不思議そうに首を傾げる。


「むしろ忍んでる方が怪しいまである」


 彼女の首の傾きが限界を迎えそうだ。


「女の子同士で映画とか買い物とか、普通によくあるからさ」


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ここだけの秘密ですが…… くらんく @okclank

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