Track.5 「新・合法的トビ方ノススメ」

 高校生の頃にバンギャの友達がいた。

 その子は、Yちゃんといって見た目が整っている可愛い子だった。


 身長が小さく、顔立ちが人形のようで可愛らしいのだけれど、その実は極真空手経験者で意外と体育会系なところがある。

 そんな面白い Yちゃんと私は、たまに一緒にお泊りをしたり、カラオケに行ったりしていたのだ。


 音楽ならなんでも聴く~~~!!!のスタンスだった私は、当然バンギャのYちゃんの選曲を否定しなかったし、なんなら積極的に知らない曲を教えてもらっていた。その中の一曲が、「合法的トビ方ノススメ」だった。


 歌詞を見てもらえると分かると思うのだけれど、割と内容がえげつない。

 しかも、お人形さんのように可愛らしい見た目のYちゃんが歌うのだからそれはもうギャップの凄まじいこと、凄まじいこと。

 「潮吹きアクメ スプラッシュマウンテン」言うとりますからね、なんせ。

 歌詞の過激さに面食らいこそしたものの、中毒性のある刺激的な音楽にハマってしまった当時の私は速攻でこの曲を覚えた。


 あの頃から時間は過ぎて、もう十年近くになる(非常に恐ろしいが)。

 西永福のライブで公開されていた予習曲(ライブ当日にこんな曲やりますよという予告された曲のこと)に、よく知っている曲名が紛れていることに気づいた。

 ただし、「新」合法的トビ方ノススメとあったので困惑するも、すぐに正気に戻ってGoogle検索。


 「新・合法的トビ方ノススメ」を検索してみると、ちゃんと「合法的トビ方ノススメ」とは別曲として存在している。

 というか、正確に言うと「合法的トビ方ノススメ」はヒップホップなのだけれど、そのバンドアレンジバージョンが存在していて、それが「新・合法的トビ方ノススメ」。あの思い出の曲と、まさかの十年越しの再会である。しかも、洒落たバンドアレンジ。垢抜けたねえ、君。


 この「新・合法的トビ方ノススメ」、聴いてみるとめちゃくちゃいい。

 それもバンドライブで実際に演奏されると分かっている状態で聴いているから、なおのことアガる。

 バンドのメロディーがつくことで曲の緩急がハッキリしてるし、ドラムの失踪感が盛り上がりを加速させる。ダンスビートとBPMの速さでトべそう。

 これは「合法的トビ方ノススメ」にも言えることだけれど、メロがころころ変わるからそれも飽きさせなくていいんだよな…ライブ向きすぎる。


 案の定、西永福のライブでこの曲は最高の盛り上がり方だった。

 選曲したボーカルの方は終始にっこにこで歌ってたし、楽器の奏者達も飛び跳ねながら弾いてたし。当然、観客も沸いたしね。


 思わぬ形で、昔知った音楽と再会する。

 これも音楽が自分の血肉になってるから起こることだよなあ........。

 


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イヤホン忘れたら生きてけない 空峯千代 @niconico_chiyo1125

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