第15話 せがれいじり(後)
「あぁ? 騒がしいと思ったら間も来てたのかよ」
「俺は群れないオタクだ~とか言っておいて。私達と遊びたくなったんでしょう?」
こちらに気づいた海璃がニヤニヤしながら言ってくる。
「寝言は寝て言え。お前らが部室に来いって鬼ラインするから来てやったんだろうが」
「そうだっけ?」
「こまけー事気にすんなよ!」
「まぁ、今回はそういう事にしておいてあげるわ」
「……帰る」
太々しい態度に啓二はクルっと背を向ける。
「嘘々待って! 間君とゲーム語りしたいの! 二人はこんなゲームの話してたら頭が狂うって相手してくれなくて!」
「オレと対戦してくれよ! コンピューター強すぎだし! 二人は自分のゲームで忙しいって相手してくんねぇんだよ!」
「このゲーム難しすぎよ! すぐ死ぬし全然強くならないしお金も貯まらないし! どうしたらいいのか教えなさいよ!」
あっと言う間に囲まれて三方向から引っ張られる。
「だぁ!? 一斉に喋るな! てか、なんで俺がお前らの相手なんか――あぁもう!? わかった、わかったよ! 相手してやるから一人ずつだ! ジャンケンでもして順番決めろ!」
啓二にもちょっとくらいは三人をオタク沼に落した負い目はある。
三色ケーブルの変換器は都合してやったが、その後どうなっているのかちょっと気になっていた。だからわざわざ来てやったのだ。
それがまさか、ここまでハマっているとは思わなかったが。
そんなわけでまずは海璃の相手をする事になる。
「このゲームは知識ゲーだ。攻略サイトを教えてやるから参考にしろ」
「イヤよそんなの! 先が分かったら面白くないじゃない!」
「初心者用のQ&Aだけ見ればいいだろ!」
「そんな事言われたって攻略情報載ってたら見ちゃうでしょ!?」
「ならどうすりゃいいんだよ……」
「困ってる所だけ助けてくれればいいのよ!」
「それが人に物を頼む態度か?」
「……ゲームが上手くてカッコいい人気者で隠れイケメンの間様。どうか愚かな私めに攻略情報を教えてください。お礼にお菓子もつけるので……。これで満足!?」
屈辱に顔を真っ赤にしながら海璃が叫ぶ。
「いやだから、そこまでしろとは言ってないんだって……」
極端な女である。
ともあれ啓二は生贄の洞窟の攻略情報を教えてやった。
「閉じ込められた後に一回ボス戦をして退却するんだ。そうすれば洞窟から出られるようになる。その後村の特定キャラに話しかけるとボス用の攻略アイテムを貰える。こいつを使うとボスの本体が分かるからそこを集中攻撃だ」
「なによそれ!? そんなの初見でわかるわけないでしょ!?」
「だから知識ゲーなんだよ」
それでも海璃は苦戦したが、なんとかネズミの群れに紛れたボスを倒す事が出来た。
「おっしゃあぁあああああ! ざまぁ見やがれたくあんポリポリよ! 早速あのクソ村長に報告してドヤ顔してやるわ! やーやー我こそはこの村を救った英雄様よ! 土下座してご褒美を寄こしなさい!」
ハイテンションで村長の元に行くのだが。
『私が村長です』
「……は? それだけ? 嘘でしょう!?」
「ところがどっこい現実だ。このクソイベはこれで終了。お礼も褒美も存在しない。なんど話しかけてもシラを切られるだけだ」
「人の事騙して生贄にしといてそんな事が許されていいわけ!? あぁぁぁあぁぁあ! ムカつくぅうううう! なんでこいつと戦えないのよ!? ありったけの最強技叩きこんで抹殺してやるのにぃいいいい!」
「気持ちは分かるぞ。俺も初見の時はブチ切れてカセットをぶん投げた。そんなお前に朗報だ。最新ハードや携帯でプレイできるリマスター版だと『報酬をよこせ』と『一発なぐらせろ』の選択肢が追加されてる」
「それを早く言いなさいよ! 携帯で出来るんならそこだけでもやり直して絶対こいつをぶん殴ってやるわ!」
「おう。頑張れ」
まぁ、選択肢があるだけで実際は殴る前に逃げられてしまうのだが。
その悔しさも含めてこのゲームの魅力だろう。
次はテトラだ。
「はっ! オレと同じ機体を選ぶとは良い度胸だな! テトラ砲で塵にしてやるぜ! くらえ、必殺の開幕ブッパ!」
「当たるかアホ」
あっさり避けて懐に潜り込みカウンターのゼロ距離レーザーを叩きこむ。
「ぐぁああ!? こんにゃろう! まぐれで避けたくらいでいい気になるなよ! 吹っ飛べテトラ砲! テトラ砲! テトラ砲ぉおおお! なんでだよぉおお(泣)!? 一発も当たんねぇぞ!?」
「そんな見え見えのブッパに当たるわけないだろ」
「おかしいだろ!? 同じ機体使ってるのにそっちの方がぜってぇ動き早いし! さてはてめぇズルしてんだろ! チート使いの卑怯者め!」
「ただのジャンプキャンセルだ。言っとくがこれは基本技だからな。ついでに言っておくと俺はカオスゲートのオラタン大会では上位入賞常連のランカーだ」
「はぁ!? 聞いてねぇし!? ずりーずりー! そんなん勝てるわけねぇだろうが!?」
「そう言うな。折角だからライデンの動かし方を教えてやる。ハンデもやろう。パージ!」
閃光と共に啓二の操るライデンの装甲が吹き飛び、内部構造が剥き出しになる。
その光景にテトラはポカンと口を開き。
「……なにそれ!? 超かっけぇええええ!? どうやんだよ!?」
「ジャンプ中にスタートボタンだ。残り体力の9割と弾きアーマーを全て失う代わりに全機体中最速になれる諸刃の剣だな」
「パージ! うっひょぉおおお! かっけぇえええ! くっそはえええし! やべぇぇええ! ――うぼぁああ!? なにしやがる!?」
「ピクニックにでも来てるつもりか? ここは戦場だぞ。お前にパージはまだ早い。まずは基本からだ」
「うるせぇな! そんなもん必要ねぇよ!」
「そう思うならこの状態で十戦やるか? 一度でも俺を倒せたらお前の実力を認めてやる」
「舐めんなよ? 一発当てりゃいいんだ! それくらい出来るに決まってる!」
自信満々のテトラだが、結果は無残なストレート負けだ。
「そんな……。一発も当たらねぇなんて……」
「これがライデンの真の実力だ。お前もこれくらい動かせるようになりたいだろう?」
「……なりてぇ。オレも強くなりてぇ! どうすりゃいいんだ!?」
「よろしい。ならば練習だ!」
という事で基礎からみっちり稽古をつける。
最後は雛子だ。
正直これが一番気が重い。
「語るって、こんな奇ゲーのなにを語るって言うんだよ……」
「そんな事言わないでよ! このゲーム、結構奥が深いんだから! ほら見て! 間君の為に面白いイベントムービー撮っておいたの!」
『むけみ』
ウンコ座りをした全裸のモヒカン男がパカッと剥けて中からピカピカのウンコ座りをした全裸のモヒカン男が現れる。
『ちんぽこたまらん』
矢印少年が股間を押さえてトイレにダッシュ。
『ママのう*こ』
矢印少年が自分のママはキリンである事を説明し、キリン柄のウンコを紹介する。
『ラブラブのう*こ』
ラブラブのうんこ。
『あらじんと49人のはんそく』
アラジンがランプを擦ったら49個のウンコが飛び出した。
『うんこ、について』
巻きグソが出来る過程の映像。
『うんこ、だんめんず』
うんこの断面図。中は全裸モヒカン達の憩いの場になっている。
一階多目的ホール、床下収納あり。
二階体育館。
屋根裏には見張りがいる。
「ね! 結構面白いでしょ?」
満面の笑みで雛子が聞く。
「……悪い事は言わん。一度頭の医者に診てもらえ」
啓示としては真面目に心配したつもりだったのだが。
どうやら選択肢を間違えたらしい。
その後見回りの先生に帰宅を促されるまでせがれいじりの面白さを解説される羽目になった。
その夜啓二は酷い悪夢にうなされた。
【悲報】俺のせいでクラスのS級美少女共がオタクになっちまった件 斜偲泳(ななしの えい) @74NOA
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。【悲報】俺のせいでクラスのS級美少女共がオタクになっちまった件の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。