秘密

ぬまちゃん

所詮はそんなもんです、よね?

 最終下校のテーマが校内を流れている中、教室に二人だけで残っている男子と女子。


「A子ちゃん、大好きだ。付き合って欲しい」

「う、うん。K君、ちょっとだけ待ってください、お返事は」


 そんな男子と女子の密やか会話を廊下から心配そうにそっと覗き込む影が。


 * * *


 次の日の朝、ホームルームが始まる前のクラスにて。


 昨日の告白現場を覗いていた、K君の幼馴染であり、A子の友人でもあるB美は、昨日の結果が心配で夜も眠れなかった。そう、このモヤモヤを一人で抱えるほどB美の心は強くなかった。


 どうしよう、誰かにこの悶々とした気持ちを打ち明けないと心が持たないよ。A子もK君のこと嫌いじゃないはずだから、さっさと付き合っちゃえばいいのに、返事を保留しちゃうんだもの、もー。


「おはようー、どうしたの元気ないじゃん」


 B美が、心ここにあらずな状態でうんうん悩んでいると、それを目ざとく見つけたC恵が、もみ手をしながらするすると寄ってきた。


「どうしたの? 悩みごとがあるならお姉さんが相談に乗るよ」

「あー、おはよう。ちょっと人には言えない悩みなんだけどさ……」


 B美は、C恵の声掛けに心が少し軽くなる気がした。


 そうだよなー、秘密だよって言えば私の悩みしゃべっちゃっても良いよね。よし、C恵だけに話しちゃおう。


 そうして、B美は昨日の告白をC恵に話してしまう。

 C恵は真面目な顔で、秘密にしておくよ、了解! と言って親指を立てる。


 * * *


 ──この話、絶対に秘密だからね、誰にも言わないでね──

 ──大丈夫、口はかたいから。誰にも言わないから──


 C恵から、D子へ。

 D子から、E枝に。

 そんな風に、お互いに信頼している、信頼できる友人だけに秘密を伝えていく。


 その結果、クラスの女子の大半がその告白の秘密を知るのに一週間もかからなかった。


 * * *


「そーいえば、お前A子さんに告白したんだって? で、どうなった。振られたの?」

 昼休みの喧騒の中、K君の友達が雑談の流れでそんな話を投げる。


「あー、ちょっとだけ返事を待たされたけど。でも、オッケーもらったぜ」


 K君の返答に聞き耳をたてていたクラスの女子の大半は、胸に手を当てて、秘密の告白の結果にホットした。


(了)

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秘密 ぬまちゃん @numachan

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