一章 始まりの試験

第1話 -2

 目が覚める。

 淡白な、くどい夢だった。

 見たくない、と思えば思うほどではなく毎日これなのが余計にくどい。

 時計を見れば5時半をさしていた。

 布団から身体を起こし頭を整理する。

 今日は5月3日の土曜日

 今日の予定は…云々

 身体を布団から出して立ち上がり部屋の扉を開け階段を降りる。

 台所へ行き冷蔵庫を開け卵と出汁を取り出す

 汁碗に卵を3つ割って出汁を大さじ1と二分の一をいれ小さじ1の水と塩、砂糖をそれぞれひとつまみ。卵焼き用フライパンに油を敷き、卵液を落として薄く焼いて繰り返し。

 最後に卵焼きを包丁で等分に分ける。

 炊飯器のタイマーがピーピーとなったらば、味噌汁を…

 バコォン!

「おっはよーぉ!ごっざまぁーす!」

 そう言って黒髪短髪の少女が扉を蹴飛ばし階段を飛び降りる。

「…うるせぇよ朝方は静かにしろと言ったろ澪」

「言ったっけか」

 …ハァ……

 …つくづく合わねぇコイツとは。

 霊神澪。凄まじい程の複雑な事情で家に住んで、いや、泊まって……ん゙ん゙っ、居候しているヤベェヤツである。

 澪に着替えさせている間に味噌汁を作り、碗に注いで、炊いた白米も碗に盛る。長皿に卵焼きを置いて大根おろし、漬物を添えて貴族が飯を食べるような大きいにも程があるテーブルに置いて…

「澪ー飯だぞ早く降りてこいつーかいつまで着替

 てんだ長すぎるだろ」

 ……。

 ……、

 ………ッ、ハァ…

 階段を上がり澪が閉めた扉を開けるとーー

 そこにはふたたび布団に春巻きになっている澪がいた。

「ーーーー連行する」

 足を掴みそのまま階段を降りる途中でぐふぇ、がぼぉ、たべっ、と聞こえたが無視した。

 起こして椅子に座らせ、朝食を食べる。

「うんぉ卵焼きうめぇ!」

 さっきまでの寝姿は何処いったのか、バクバク食べれば米も味噌汁も卵焼きもなくなっていく。

「そうかい。」

「そーだよ!んで、今日って何すんだっけ」

「流石にくどいぞ、今日は…」

 その時だった。

「えー、本日政府の勇者構成遊撃庁通称勇者庁か

 ら発表がありました。本日から今年度の勇者選

 別試験が開始することにあたって、新人の勇者

 の教育を…」

 つけていたテレビの無言でチャンネルを変える。

「今日行くんだっけかー」

「そうだな。9時には出る。準備しろよ」

ぬうぇ〜いとやる気の無い返事を返した澪に半ば呆れながら朝食を食べ切った。

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