第12話 男爵家の真実

 アルファトとガンマはテトラグラマトン教団の情報を集め、私はベータとガンマの訓練を行いつつ、男爵領内で野盗や魔物を倒す日々を送っていた中の出来事であった。

 その日も私はベータとガンマに合流すべく屋敷を抜け出そうとしていた、だが、そんな時に私の魔力探知に見知らぬ魔力反応が屋敷を訪れるのだ。

 気になった私はその反応を追いかけるのだった。


「これはこれは、アプシャウム上級騎士殿、本日はどの様なご用件でしょうか?」

「単刀直入に言おう。

 最近男爵領内を通過する悪魔憑きの輸送計画が悉く失敗に終わっている。

 これはどういう事か?」

「どういう事かと申されましても、私共は何もしておりませんとしか…」

「まー、良い。

 その方がこれを妨害する事には何も益が無い事位は私も理解している。

 それよりもだ。喜べ、貴様の娘の聖堂騎士団入りが決まった」

「え…

 私の娘がですか…」

「そうだ、聞いたところによると相当に優秀な娘という話しでは無いか。

 そんな娘をみすみす表の世界で活躍させるだけというのはもったない話しであろう?」

「はっはい、その通りで御座いますね」

「では、後日迎えに来る。

 それまでに別れを済ませておくのだな」


 まさかうちが聖堂騎士団と関わりがあったというのは驚きだ。

 今後は家との付き合い方も考えないといけないか…

 それにしても我が父親ながら情けない、言われたい放題で禄に言い返せないとは。

 しかも、姉さんの聖堂騎士団入りだって?

 そんなもの断固阻止だ。

 と、言う分けでまずはあのアプシャウム上級騎士の尾行をする事にしよう。


 アプシャウム上級騎士を尾行する事しばし、拠点となっているだろう洞窟に彼が入るところを確認した。

 驚いた事に男爵領内に拠点があった。

 恐らくは前哨基地的な役割を担っている場所だろうけど、私達が普段拠点にしている元開拓村からすると、領内の反対側に位置しており、意外にも近い場所に騎士団の存在があったことに驚きを隠せない。

 今回、慢心しているであろうアプシャウム上級騎士という存在が居なければ、見つけられなかった事を思えば、今回の件は寧ろプラスに捉える事が出来るかも知れない。

 私は早速アルファ・ベータ・ガンマ・デルタを招集しに一路拠点へと戻るのだった。


「と言うことなんだ」

 私はアルファ・ベータ・ガンマ・デルタを招集し事のあらましを説明した。

「まさか、貴方の家が既に聖堂騎士団の手の上だったとわね」

 とアルファ。

「あぁ、これには私も驚いたよ。

 今後は家と適度に距離を置く必要があるが、それを悟られるわけにはいかない」

「それにしても、まさか男爵領内に騎士団の拠点が存在していたなんて、私達の調査で見つけられなかったのが悔やまれるわ」

「それに関しては仕様がないところもある。

 実際、今回の件を私が発見していなければ、拠点は普通の洞窟にしか見え無かったしね。

 幾ら男爵領の領地がそれ程大きくないとは言え、これだけ自然豊だとたった二人で領内全てをカヴァーするのは不可能な話しだし」

「それでも悔しいです」

 と、デルタ。

「さて、この話はここまでにしよう。

 折角得たこの好機、私は無駄にするつもりはない。

 勿論敵の拠点へと仕掛けるつもりだ。

 だが、それは相当に危険の伴う行為でもあるだろう。

 現状では敵拠点にどれだけの騎士が存在しているのかも、敵拠点の構造がどの様なものになっているのかも不明だからね。

 だけれど、私は姉さんを見捨てるつもりはない。

 悪いんだけれども、私の我儘に付き合って貰えるかい?」

「ええ勿論協力させて貰うわ、そんなの当たり前でしょ」

「主様の姉君が得体の知れない組織に連れ去られるぐらいなら、多少の危険は飲み込みましょう」

「今までの訓練の成果をやっと主様にお見せする機会が訪れたのです。

 そう畏まらないでください」

「ご主人様の敵は私の敵!」

 四人の力強い声に後押しされた私は、この無謀とも言える作戦を決行するする事にした。

 だが、そんな決意とは裏腹に作戦は実に順調に推移することになるのだった。

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