第9話 表の鍛錬と裏の鍛錬

 私は七歳になった。

 最近では姉であるカンケリーヴァと共に魔剣士としての鍛錬を行う日々が恒例となっていた。

 だが、私が本気を出してしまうと色々と問題になってしまうのは明らかなので、手を抜いての鍛錬を行う日々だった。

 だが、この世界のスタンダードな戦い方を知る上では、非常に有用なものであった。

 何故ならば我が姉は非常に優れた素質ありとされている幼き魔剣士で在ったからであった。

 だからこそ、私は落胆してしまっていた。

 この世界の表の世界の水準の低さというものを。

 いや、もしかしたら裏の世界もたいした事が無い可能性も出ていた。

 何故ならば、今まで私は苦戦をした試しが無いからだ。

 これでは、最強へと到る為の実戦経験が積めないと落胆もしようものだ。

 兎にも角にも、今は姉であるカンケリーヴァとの剣の稽古に集中である。

 ちゃんとバレない様に手加減するには色々と細心の注意を払わなければならないからだ。


 ガン!ドカン!と、景気の好い音が鳴り響き幼い少年が吹き飛ばされ周囲に立てられた土壁へと容赦なく叩き付けられた。

「いてて、姉様は相変わらず容赦無しですね。

 幾ら魔力で強化しているとは言っても、痛い事には変わりは無いのですが」

「ゲヴァイト、貴方は魔力制御は上手なのに剣の腕が今一だからそうなるのよ。もっと精進して剣の腕を磨きなさい」

「はい、姉様」

「まったく、その魔力制御の才能も、そんな剣の腕じゃ宝の持ち腐れになってしまうわよ。

 もっと、お父様や騎士の皆様に稽古を付けて貰いなさい」

「解りました、姉様」


 これが、私の貴族としての表の顔としての、普段の剣の稽古の風景である。

 魔力制御はそこそこ上手いが、剣の腕が今一な感じを装っている感じで日々を過ごしている。

 私が七歳、姉が九歳のある日の日常であった。

 そんな日常を送りつつ夜は屋敷を抜け出し、いつもの元開拓村に向かう。

 昼には見せない息切れしない程度には本気を出した魔力強化によって強化した肉体による高速移動を駆使して、短時間で元開拓村へと到着するとそこにはベータの姿があった。

 アルファは居ないのでいつもの情報収集だろう。

「今晩はベータ、早速だけど始めようか」

「はい、主様」

 表の手加減に苦慮する鍛錬から、裏の実践的な訓練の始まりである。


 ベータの素質はアルファ程では無いにしろ、十分に秀才と呼べるべきものがある。

 アルファに比べると時間が掛るだろうが一年もしない内に、一緒に又はアルファの様に一人で諜報活動をしても良いだろう水準に達するだろう。

 そんな日々を過ごしているとアルファから新たな腐肉病患者輸送を企てている一団を発見した報告が入った。

 ベータは未だに訓練中の身ではあるが、普通の野盗程度ならば殲滅できる程度の実力は備わっているため、テトラグラマトン教団だろう集団との戦闘風景を見せて、実戦の空気感を味合わせるために一緒に現地へと赴いて貰った。

 だがまだこの様な危険を伴うであろう作戦には参加させないつもりだ。

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