幼少期編

鍛錬の日々と歪な世界

第3話 この世界の常識

 私がこの世界に転生してから一年の月日が経った。

 まだ身体が未発達の為に発語は難しいが、周囲で交わされる言語の解読は済んでいる為、周りの大人達が交わす言葉は何不自由なく理解する事が出来る様になっていた。

 それと同時に私が生まれた環境というものも見えてきた。

 私は人族国家であるメンシリヒ王国の地方を治める貴族家の一つ、ヴァクストゥム男爵家の長男として生を受けたようである。

 もし、このまま問題がなければ跡取りとしての教育がその内始まるだろう。

 だが、この成長著しい時期に何もせずに過ごす事等と言う無為な時間の過ごし方をする気にはもうとうなれなかった私は、私の目に映った不可思議な光の正体を突き止める事にしたのだった。

 この私の目に映る不可思議な光の正体は早々に判明した。

 これはどうやらこの世界で魔力と呼ばれる存在らしい。

 この世界の人々はこの魔力を使用して様々な現象を引き起こして日々の生活を営んでいる様だった。

 魔力を肉体に作用させるのが得意な者、逆に魔力を放出する事に長けた者など、個人差がかなり大きくあり、その才能に違いに応じて仕事が決まるとも言われている程だ。

 特に貴族ともなれば、有事の際には戦闘に赴く事もある為に、この辺りの把握は急務と行った所だろう。

 その為私は自分がどの様な適正があるのかというのを早々に確かめてみることにした。

 するとどうだろう。

 私は魔力を肉体に作用する素質も、放出する素質もある様だ。

 これが、この世界の基準でどの様なものなのかは解らないが、肉体の強化と魔法の使用が可能という現実に心が躍ったのも確かである。

 何故ならば、私の心には未だに最強へと到りたいと言う思いが燻って…いや、メラメラと燃え滾り始めていたのだから。

 それを理解した日から私の日常は変化した。

 魔力の放出は悪目立ちしてしまう為控えるとしても、魔力を使用した肉体の改造を初める事にしたのだ。

 この成長著しい時期から初めた結果として、この身体が何処まで強化されるのか今から楽しみであった。


 時間はさらに過ぎ去り私が三歳の頃。

 魔力による肉体強化は上手く行き、日々研鑽の毎日を送っていた。

 しかし、弊害も出てきてしまっていた。

 明らかに肉体の能力が三歳児のそれを遙かに凌駕してしまっていたのだ。

 私の今世での姉の三歳の頃と比較しても異常なものであった。

 その為、それを隠すのに苦労する事になったのである。

 そんな苦労をし日々を過ごしながらも、日々の研鑽は怠らずに時間は進んでいく。


 私が五歳になるといよいよ本格的に貴族としての勉強が始まる事になった。

 この頃になると、一人部屋を与えられる様になり、ある程度自由に動ける環境が整うことになる。

 私は長年の研鑽の末に獲得した強靱な肉体を駆使して夜の深い時間帯にも活動する様になっていった。

 昼は貴族としての勉強。

 夜は屋敷を抜け出しての自己研鑽。

 強靱な肉体は削れてしまった睡眠時間等無いかの様に活動を可能にしていた。


 さて、ここで唐突ではあるが我が姉リーヴァことカンケリーヴァの事について少々触れようと思う。

 我が姉は何というかかなりのお転婆である。

 様々な物に興味を持ち、それに手を出す事を厭わない精神性の持ち主であった。

 それ故に私としては、我が姉ながらハラハラドキドキさせられる場面が多々あり、その都度手を出して助けるような場面があった。

 そして、我が姉は結構目聡くこれに気付くのである。

 その結果として我が姉リーヴァは着々とブラコンになっていくのを感じるのだった。

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