第4話 光と【声】

光が目覚めてから、光と【声】は沢山の話をした。

何しろ、光の記憶は、5歳までで病院で目覚める前のものはないのだから、【声】による確認作業のようなものもあった。

どうやら、記憶がないといっても知っていることはあるようで、自分の名前も母親の顔も名前も、自分が5歳ではないこと(だからって、17歳だとは思っていなかった)

言葉の読み書きも年相応にできた。

スマホも持っていたが、初期化されていた。

これも私が以前にやったのだろうか?


今日もまた【声】と話す。

・いじめられてたのは覚えてないの?・

・覚えてないけど……学校て聞くと嫌な気持ちになる・

・いじめた奴らの顔も?・

・覚えてない……何をされたのかもわからないよ。

だから、憎いとか怖いとかもないの。その対象がいない状態・

・忘れて正解なのかもね・

・でも……記憶がないのは気持ち悪い・

・嫌な記憶でも?・

・嫌な記憶でも。だって、どうやって生きてきたのか、どんなことがあったのか……思い出さないといけない気がするんだよ・

・そっか、記憶戻さなきゃね・

・なるべく早く思い出したいよ・

・焦って無理すると、お母さんが心配するよ・

・今でも心配かけてるよ・

・確かに・

・【声】は、なんで私の頭の中にいるの?・

・それは私にもわからないよ・

・幻聴なのかなあ?調べてみたけど、統合失調症とかPTSDとか……当てはまるようで当てはまらないんだよね・

・私のことを症状だと思うの?・

・……わからない・

・メンタルの病気だとしたら、治ったら私はいなくなるんじゃない?・

・それは……なんか寂しいね・

・ひかりは友達がいないからね・

・うるさいな・


ぼんやりと口を開かず一日が過ぎる。

頭の中は、絶えず会話が繰り広げられてるというのに。


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