エピローグ

 王都は賑やかでいいね。

 僕は今、城塞都市への旅の準備を満喫…じゃないよ。淡々と準備を進めているんだよ。

「ベイカー兄さん、自分このマジックバッグがいいです。値段も手頃ですし、兄さんのよりは容量が少ないですが、自分の運ぶ荷物だったら充分です」

 獣人のプロトを連れて魔装具店で、お買い物の真っ最中。

「そうかそうか、じゃあそれを購入しよう」

「ホントですか!ありがとうございます兄さん。マジックバッグを持ってるだけで、荷物運ポーターびの扱いって全然変わるんですよ」

 最初は固かったプロトの態度も、何度か買い物に付き合っているうちに打ち解けて、今じゃ兄さん呼び…癒される。


 別に会計はロデール王持ちだからって、たかってる訳じゃないよ!装備を整えるのは当然の事だからね。

 ライオット姫のいるロイヤルワラントについては、盗賊シーフのタムタムに任せておけば大丈夫だろうしね。

 あれ?僕が魔王様に直談判しなくても何とかなるんじゃね。

「兄さん…バックレはダメですよ」

「まさか~そんな事思ってもないよ」

「それならいいです」

「それじゃあマジックバッグの使用者登録をしてもらったら、何か食べに行こう。プロトもお腹空いたろ?」

「はい、ペコペコです。露店の串焼き肉が食べたいです」

「いいね~タレもいいけど、岩塩焼きも捨てがたいんだよな」

「自分はタレ焼き一択です」

「口の回りタレだらけにして食べてるもんな」

「テヘです」

 あ~ホント癒される。まだまだ王都でのんびり…じゃなくって、しっかり準備を整えて行かないとな!


 王国騎士団所属のタムリンは、出向という形でパーティーに参加してもらう事にした。

 立ち合いの時に使用していた赤いフルアーマーとバスターソードは、貴重な魔装具で様々な防具と武器に姿を変えられるらしい。

 なにそれ羨ましいと思ったが、軽装備に変化した時の目のやり場に困ってしまう。

 バスターソードが2本のショートソードは全然いいんだけど、胸と腰しか隠してない装備って防御力あるの?

 ブーツとガントレットもあるけど、色々出ちゃってる気がする…僕がタムリンのお父さんだったら即却下です。

 ずっとフルアーマーで過ごして欲しい。

 タムタムのお姉さんのハズなのに、ナニこの発育の差。

 魔装具がはち切れんばかりのボリューム。お姉ちゃん、出るとこ出過ぎじゃね。

 なんなら僕も出るとこ出す覚悟はあるよ。覚悟だけだけどね。

 なんて事を僕がノンビリと考えられているのも、タムリンの冒険者訓練として王都近くの中級ダンジョンに潜っているんだけど、何もする事がないからなんだよね。

 王国騎士団所属だから強いのはわかっていたけど、ナニこの順応性の高さ。

 タムリンのジョブ重騎士ヘヴィナイトだったよね。

 なんで嬉々として、ダンジョン内を縦横無尽に走り回っているのさ…罠も全部回避してるし。

 聞いたら『野性の勘?』とか言ってるし、素材や魔石の回収も狩人ハンター並みに手際いいし、教えたの最初だけだよ…僕、用なし。

 ちなみにダンジョン内には、プロトは連れて来てないよ。

 プロトはダンジョンの入口でお留守番です。

 あん?誰が過保護なお兄ちゃんだって!否定はしないよお兄ちゃんだもん。

 

 そんなこんなで未だに、王都を出ようとしてない僕達でした。

「王都にいるなんて知れたら、ロイヤルワラントのメンバーが血相変えて追って来そうだしね」

「兄さん、そうやって不吉な事を言うと本当になってしまうことを獣人の間では、尻尾が立つって言うんですよ」

(マジか!それよりプロトの尻尾、もふもふさせてくれないだろうか)

「変なこと考えてないで仕事しろよ斥候スカウト

 タムリンお姉さまに叱られました。

 これも僕的には有りです。



 

 


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

斥候ベイカー2何満喫してるんすか リトルアームサークル @little-arm-circle

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ