大学イチと謳われるコとなんやかんやでなぜか仲良くなる鉄板シチュとか普通に考えてワイの股間マジ危機一髪なんですわぁぁ……!!

じっくり

第1話 澤北澪との出会い

 ゴールデンウィークが開けた、5月の初旬。


 現在、大学一年生……ようやく大学に、新しい生活に、少し慣れてきたところ。


 お昼時、オレ……と同期で友人のヤスは、『学生ステーション』という、大学内にある中規模のスーパーマーケットほどの売店にいた。


 パンやお惣菜、菓子などの食品・飲み物をはじめ、ペンやノートのなどの文房具も置いてある。また、洗剤やタオル、食器、スマホやパソコンなどの商品も売られていて、日常の生活に必要なものは大体揃っていた。


 多くの学生達が利用している、学内でもにぎわいのある場所だ。


 「今日はどれにしようかな~」

 「おい、おい……!」


 お昼に食べるパンを選んでいると、ヤスが肩をトントンと叩いた。


 「んっ、どうした?」

 「あれ、見てみろよ」


 ヤスが指差すほうを、俺も見た。


 ……えっ、な、なんだ?目線が集まってるぞ?


 オレとヤスだけではない。学生ステーションにいた他の者たちの視線も、その方向に向いている。


 ……あの人か。


 背中まであるストレートの、ほんの少し茶色がかった黒髪が見えた。


 「みお!いこう!」


 友達であろう女子らに声をかけられ、視線を一身に集める人がこちらへ振り向いた。


 「うん!」

 少し霞みのある、麗しさのある声が響く。


 黒髪がふわっと揺れた。


 大きな目、黒く輝く瞳。細い眉毛に長いまつ毛。


 全体的に細身でいながら、白い服から垣間見える白いピンクの肌からは、気のない男でさえ、そわそわさせてしまうくらいの美女特有の柔い肉感の魅力で溢れている。


 そして、みおと呼ばれたその人は、声をかけた女友達と一緒に売店を出ていった。


 「キレイな人だったな。みんな、ガン見してたぞ」

 「そらそうだ。今年の俺たち新入生の中で、ダントツのかわいさだって、もっぱらの噂だからな」

 「あっ、そうなの?えっ、なに?芸能人?」


 オレが問うと、ヤスは首を振った。


 「知らないか?澤北澪さわきたみおだ」

 「えぇ……おいヤス、お前マジかよ……」

 「……えっ?」


 若干引いてるオレに、逆に怪訝な目をヤスは向けてきた。


 「んだよ、その反応」

 「いやいや、フルネームて……ちょっと、引いた」

 「いやお前が聞いてきたんだろうが!」

 「いやまあ、そうだけど、はは……でもよく知ってるな、ヤス」

 「俺は新聞社にもいるからな。そういった情報も、いろいろ入ってくるんだよ」


 ヤスは『大学新聞社』という、学内の新聞をつくるサークル組織に所属していた。


 「そういえば、最近、新聞づくり忙しいんだっけ?」

 「ああ、俺も取材に同行したりするようになったからな……あっ、おい、あれ……!」

 「んっ?」


 売店の外に出た澤北澪に、男が一人近づいて来て声をかけているのが見える。


 「ナンパされてるぜ」

 「ホントだ」

 「……そうだ!俺も新聞社の名目で声かけて……」

 「あはは、職権乱用ってヤツ?」

 「ちょ……おま、そういう言い方ねえだろ!なんか、一気に行きにくくなったじゃねえか……」

 「いや、そんな目的で行くなよ、そもそも」

 「……あれ?てかおい……!」

 「?」

 「澤北澪だよ……!こっち見てるような……!?」

 「うわっ、たしかに……」


 ナンパ男に微笑みながら、澤北澪は相づちを返している。だが、相づちで顔が下から上へと戻る瞬間、


 ――チラッ、チラッ……。


 たしかに、一瞬だけ、その黒い瞳が、俺とヤスに向いている。


 「……ホントだ」

 「えっ、おい、これどうする!?あれはまさか、助けてっていうサインじゃ……!?」

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