八
「あっ、デスメタルさん!」
イオンはただならぬ痛みとともに起き上がってすぐ、デスメタルの姿を見つけて叫んだ。
すると、みんな悲鳴やら雄叫びあげながら、ゾロゾロまるでゾンビのようにデスメタルを取り囲んだ。いや、格好がすだぼろ、血まみれでマジでゾンビである。
「天使さまじゃあ」
「ひょふおふ「おまえさん、喋りなさんな」」
「うぁぁうあぁ」
「おい、それヒヒじいさん言われたと思って、泣いちまったよ」
「わあ、元いた場所! よかった! 無事に戻って来れて」
ひとり、にこにこして声を上げる少女にみんなの視線が集まる。果たして無事とは、全身血まみれで無事と言えるのかは謎だ。
しかし少女はにこにこしているのだから、あ、これはちょっと変わった子かもしれないと失礼ながらイオンは思った。そのイオンと少女を交互に見比べると、デスメタルが楽しそうに口元を歪ませた。
「さて、みなさん戻ってきたことですし、サクサクっと天使な仕事しちゃいましょー」
「いや、サクサクって「「「「「おぉぉぉっー!!!」」」」」……いや、気合いすごいなっ」
「お、おー!」
「おー!」
「母さんは恥ずかしいならって……えーっと、君? は?」
イオンの母に続けて、拳をあげて叫ぶ長い黒髪の少女に、戸惑いの目を向ける。すると、少女はあっと照れたように拳を下げた。
「すみません、つい、つられて。あ、私は天野コハルといいます。わからない場所から助けてくださりありがとうございました!」
「え? いや、助けたって言われるようなこと」
イオンにはそんなことをした覚えがないのである。
しいていえば。
コハルがあのとき、安堵から一雫涙をこぼして、それをイオンが慌てて拭おうとしたら……さっきのスプラッタ巻き戻しが起こったわけで。
あれ、ほんと、なんでだ? である。
しかし、デスメタルはなにか気づいているようでにやにやしながら、頷き
「まあ、元勇者で今や見習いながら恋愛天使さまですからねこちら。ねえ、イオンさん」
「ちょっと、デスメタルさんっ「元勇者……」、や、ただので。イオン・プレリュードです」
「あっ、よ、宜しくお願いします! よ、よければ私、ご恩返ししたいです!」
「え?」
「いえ、させてください!」
「ええ、いや「いいじゃないですか、人数は多い方がいいわけだし。ほら、私と死神含めて17人」…………はい?」
死神。とか、初耳だ。
「どんだけ待たせるんです、帰ろうか悩んだんですからね!」
あ、悩んだんだ。さっきから、デスメタルの後ろからちらちら、こちら見てる子いるなぁと思ったけれど。
いや、この小さな少女が?
イオンの疑問は顔に出ていたのだろう。
にっこりと赤い目を細め、少女は笑った。
「そう、死神ですよ」
死んだ後に死神かぁ、また死亡フラグかな。
「死神のラッキッキーニャンでーす「その名でよぶなぁぁぁ!!」」
名前、と同じであかるいなぁ。
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