六
人生って、こんな目まぐるしいものなのだろうか。
齢十八歳にして、爆速する人生を味わうとは。
ただの村人から勇者候補になり、かと思ったらクビになり。また村人に戻るはずが何故か強制ジョブチェンジの天使見習い。
が、いまは天へ召されかけるって、どんな人生だろう。
「あの天使、実は死神か悪魔なんじゃ」
「こりゃ、イオン! 天使さまを死神だか魔王呼ばわりとはなにごとか!」
「ごふいひあひうぅぅ」
「もう、あんた会話にならんから喋らんでくれんかの」
「ひょふなぁふぅう」
「いや、ヒヒじいさんのことじゃなか……いや、あんたも喋らんでくれ。リンばあさんが殺気立っとる」
「じじぃ……」
いつの間にか、イオンの周りに集まって体育座りしてるじいさんばあさん。
いや、魔王なんて言ってないし、つか、なんで体育座りで囲んでくるわけ? とイオンは首を傾げる。
そしてリンばあさん、何故にそんなに殺気立っとる。
すると、母がこそっと耳打ちした。
「あれはね、リンばあさまの愛情の裏返しなのよ、焼けちゃうわね」
ふふっと笑う母に、イオンは母を信じられない者を見る目でみた。
母よ、あの今にも殺人ビームが出そうな目を見て言うのか。あら、イオンは分かってないわね。あれは乙女の目よ。だ、と?
乙女、乙女とは……あんな血走った眼力強強な目で見てくるものなのか。
そういえばリンばあさん、さっきから視線をヒヒじいさんにロックオンしたまま逸らさないな。
これが乙女、いや、違う。いま、凄い目でこっち睨まれたわ。イオンがひっと悲鳴あげると、ヒヒじいさんからも悲鳴があがる。いや、睨まれたの俺だからね? ヒヒじいさん。
「え、えーっと、デスメタルさんとはぐれてる今、とりあえず人数確認しまーす。いーち」
「にーい」
「さあああふん」
「よーおん、微妙にわかる発音しとるのがなんかイラッとくるのぅ」
「ごひょふうふふ」
「こっちもだよ、ろーく」
さあ、村人はイオン、母親入れて14人……
「じゅ、じゅうごー!」
「はい?」
あれ? ひとり多くない?
「すみません! 初めてきた場所で分からなくて、遭難者の方々ですか? 私も混ぜてください!」
「えっ」
「ほお」
「ひょっ」
「だからわからんから喋る、いや、通じるな」
「ひゃっはいああ」
「ヒイじいさん、それ以上浮かれたらヤベェぞ」
「おいぃ、うかれてんじゃねぇぇ、じじぃ」
目の前に、いつの間にかちょこんと、体育座りする少女が目を輝かせ、イオンを見ていた。
うん、まあ、あれだ。
やっぱり、リンばあさんの目、乙女じゃないよ。殺人やる前の目だよ、母さん。
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